Red Hatが「CentOS Linux」を廃止したことで、企業は「RHEL」の代わりとして利用できる安定したディストリビューションを探すことになった。「Rocky Linux」「AlmaLinux」のどちらが選ばれるのか。
「CentOS Linux」は、Red Hat(2019年にIBMが買収)が提供するOS「Linux」のディストリビューション(配布パッケージ)「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)の無償版だ。Red HatがCentOS Linuxを廃止する方針を定めたとき、CentOS Linuxユーザーは衝撃を受けた。
CentOS Linuxの代わりとしてRed Hatが打ち出した「CentOS Stream」は、安定性に欠けるリリース方式を採用しているため、本番環境での利用には不安が残ると考える企業もある。そうした企業にとって有力な移行先になるのが、CentOS Linux廃止宣言後に誕生した2つの新しいディストリビューション「Rocky Linux」と「AlmaLinux」だ。両者の共通点と違いを基に、どちらが選ばれるのかをまとめる。
以下の点において、Rocky LinuxとAlmaLinuxは似ている。
Rocky LinuxとAlmaLinuxが違う1つ目の点はセキュリティだ。どちらもOSを安全に起動するためのセキュアブート機能、アクセス制御を強化するSELinuxなどの機能を有する。一方でAlmaLinuxは、安全なシステムを構築するための指標「CIS Benchmarks」に重点を置いている。
2つ目の違いは資金調達方法が異なることだ。この点は、企業がどちらのディストリビューションを選ぶのかの決め手になり得る。
Rocky Linuxはコミュニティー主導型だ。2022年、Rocky Linuxの開発を手掛けるCtrl IQ(CIQの名称で事業展開)は2600万ドルの資金を調達した。CIQは2020年設立の企業であり、こうした新興企業との取引を望まない企業にとっては、Rocky Linuxの採用を見送る理由になり得る。
ただし新興企業が関わっていることは、Rocky Linuxの価値を下げる理由にはならない。CIQは新興企業ながら急成長を遂げ、IT業界では一定の評判を得ている。CIQの創設者兼CEOであるグレゴリー・クルツァー氏は、CentOS LinuxとRocky Linuxの開発者だ。「CentOS Linuxが取り込んだ相当数のファンがいるので、Rocky Linuxのコミュニティーは成長し続けるはずだ」とクルツァー氏は展望する。CentOS Linuxの改善に専念してきた同氏の実績を見れば、同氏がLinuxコミュニティーにどれほど貢献しているのかを感じることができる。
AlmaLinuxは、非営利団体AlmaLinux OS Foundationが開発と運営を担っている。商用Linuxディストリビューションを扱うCloudLinux、WebツールベンダーWebPros Investments、Webホスティング企業BlackHOSTといったスポンサー企業の出資が、AlmaLinuxを支えている。
Rocky LinuxとAlmaLinuxは、どちらもCentOSやRHELの代替になり得る。迷っているのであれば、両方をダウンロードしてインストールし、どちらが自社のニーズに合うのかを試してみるとよい。
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