「Rocky Linux」と「AlmaLinux」は、Red Hatが「CentOS Linux」の廃止を発表した後に誕生したディストリビューションだ。CentOS Linuxの後継として選ばれるRocky LinuxとAlmaLinuxにはどのような特徴があるのか。
Red Hatは、OS「Linux」のディストリビューション(配布パッケージ)を提供する「CentOS」プロジェクトを通じて、「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)の無償版である「CentOS Linux」を提供してきた。ところがIBMが2019年にRed Hatを買収した後、IBMはCentOS Linuxを廃止する方針を発表し、代わりとなる「CentOS Stream」を打ち出した。この事実は、「Linux」を活用していた企業に衝撃を与えた。
CentOS Streamは、小さな更新を小まめに提供する「ローリングリリース」方式を採用している。この方式はアップデートの公開スケジュールが固定されていないため、信頼性の観点から見ると理想的だとは言えない。IBMがCentOS Linuxの廃止を宣言した直後、「Rocky Linux」と「AlmaLinux」という、2つの新しいディストリビューションが誕生した。両者の共通点や違い、CentOS Linuxにとってどのような存在なのかを見ていこう。
Rocky LinuxとAlmaLinuxは、CentOS Linuxユーザーの間で人気となっている。Rocky LinuxとAlmaLinuxは同じような用途で使用されており、利用可能なハードウェアアーキテクチャも共通している。それと同時に、違う点もある。2023年6月、Red HatはRHELのソースコードを非公開にすることを決定した。この影響を受けて、Rocky LinuxとAlmaLinuxはRHELとの完全な互換性を保つことが難しくなり、互換性を維持するために異なる道を歩み始めた。Rocky Linuxで動作するプログラムは、RHELでも同じように動作する(バイナリ互換)。これに対してAlmaLinuxは、ソフトウェアとOS間のインタフェースである「アプリケーションバイナリインタフェース」(ABI)において、RHELと互換性がある。
グレゴリー・クルツァー氏はCentOS LinuxとRocky Linuxの開発者だ。CentOS Linuxから始まったクルツァー氏の目標は、「RHELとの完全なバイナリ互換性を持つ無償のLinuxディストリビューションを作ること」だった。その目標を達成するため、同氏はCentOS Linuxの後継としてRocky Linuxを開発した。Rocky Linuxは、パブリッククラウドのインスタンスや、Universal Base Images(UBI)形式のコンテナイメージを用いて、RHELとの互換性を維持している。UBIは、Red Hatが提供するコンテナイメージの形式を指す。
AlmaLinuxは、商用Linuxディストリビューションを手掛けるCloudLinuxが開発し、その後AlmaLinux OS Foundationが開発・管理を引き継いだオープンソースのディストリビューションだ。コミュニティー主導で、主に企業で用いるLinuxディストリビューションという位置付けだ。
Rocky Linuxと同様、AlmaLinuxの当初の目標は、RHELとの完全なバイナリ互換性を保つことだった。しかしRed HatがRHELのソースコードを非公開にする方針を定めたことを受けて、AlmaLinuxはRHELとのバイナリ互換性を保つという目標を取り下げた。その代わりに選択したのが、ABIによるRHELとの互換性の維持だ。この目標を達成するためにAlmaLinuxは、Red Hatが公開しているCentOS Streamのソースコードを使用している。
次回は、Rocky LinuxとAlmaLinuxの類似点と相違点を紹介する。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
Yahoo!広告における脱デモグラフィックの配信・分析を実現 電通が「DESIRE Targeting」を提供開始
電通の消費者研究プロジェクトチームは、消費者を理解し、Yahoo!広告の配信や分析を実施...
生成AIを業務で使わないマーケターはもはや3割以下 御社はどうする?
HubSpot Japanが日本で実施した調査によると、日本のマーケターの8割以上が従来のマーケ...
新富裕層の攻略法 「インカムリッチ」の財布のひもを緩めるマーケティングとは?
パワーカップルの出現などでこれまでとは異なる富裕層が生まれつつあります。今回の無料e...