クラウドサービスの利用が広がるほど、クラウドサービスが環境に及ぼす影響は見過ごせない規模になる可能性がある。クラウドコンピューティングが台頭した当時からの歴史を踏まえて考える。
クラウドサービスを提供するベンダーは、クラウドサービスが「環境に優しい」という点を強調するようになった。クラウドベンダーにはどのような責任がのしかかっているのか。
まずクラウドコンピューティングとは、インターネット経由でアクセスできる演算能力や、ストレージなどの保存領域のような、オンデマンドのリソースを指す。この言葉が使われるようになったのは、2006年にAmazon Web Services(AWS)が登場し、「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)という仮想マシン(VM)サービスを提供してからのことだ。
GoogleやMicrosoftをはじめとする他の企業も独自のクラウドコンピューティングを提供し始めた。2024年現在はAWS、Google、Microsoftに加えてIBMとOracleがハイパースケーラー(大規模データセンターを運営する事業者)の上位を占めている。他にもクラウドサービスを提供する小規模ベンダーが存在する。
クラウドサービス事業者が設備とサービスを強化するほどに、ソフトウェアベンダーはクラウドサービスを活用するようになった。ITベンダーは自社のデータセンター内で実行するソフトウェアを販売するスタイルから、SaaS(Software as a Service)の販売へとシフトした。現在ではさまざまなSaaSがハイパースケーラーのクラウドインフラで稼働している。
一方、かつて自社でサーバを所有し管理していたユーザー企業は、計算処理をクラウドインフラに移行し始め、自社のデータセンターを閉鎖していった。
依然としてオンプレミスでシステムを稼働させているユーザー企業も存在するが、クラウドサービスの利用は年々増加している。調査会社Gartnerは2022年10月に、パブリッククラウドサービスに対する世界のユーザー企業の支出が増えると予測。同社の試算によると、2022年の支出額は4903億ドルなのが、2023年には20.7%増えて5918億ドルになる見込みだ。
人工知能(AI)技術、ブロックチェーンを活用したサービス、ストリーミングサービス、没入型のWebサービスのような、新たな技術要件にクラウドサービス事業者が応えるには、コンピューティング能力を劇的に増やす必要がある。その結果、クラウドコンピューティングが環境に与える影響はさらに大きくなる可能性がある。
環境、社会、ガバナンスの問題は、消費者だけでなく投資家、企業の経営層、規制当局も重要視するようになり、クラウドサービスベンダーに対するサステナビリティ向上への圧力は高まっている。調査会社Gartnerのバイスプレジデントで上席アナリストのエド・アンダーソン氏は「クラウドサービスベンダーがサステナビリティに関心を持つのは、主要な利害関係者がそれに関心を寄せるからだ」と説明する。
それでも、クラウドサービスベンダーが本当に環境への影響を低減できるのか、という点については疑問が残る。なぜなら、クラウドサービスの需要が急増し、クラウドコンピューティング関連施設の拡大が見込まれる一方で、サステナビリティへの取り組みを測定、報告し、第三者による検証を受ける仕組みはまだ発展途上だからだ。
後編は、専門家が認めるクラウドサービスの二酸化炭素排出削減効果と、状況を慎重視する“懐疑派”の意見について紹介する。
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