グリーンコンピューティングの基本
電力消費の無駄をなくすデータセンター「エコ化」の8ステップ
データセンターにおける環境配慮の方針を具現化するためのさまざまな方法がある。現状把握から実践まで、環境とビジネスにメリットをもたらす8つのステップを紹介する。
データセンターを所有する企業は今、カーボンフットプリント(活動を通じて排出される二酸化炭素量)の削減に積極的に取り組むことを迫られている。気候変動がグローバルな課題として差し迫ったものになり、企業のESG(環境、社会、ガバナンス)施策は顧客だけでなく従業員と投資家にとっても重要な“物差し”になっているのだ。
データセンターが消費するエネルギー総量は膨大だ。国際エネルギー機関(IEA)は、2022年における世界の消費電力量のうち、最大1.3%がデータセンターによるものだと推計している。
非効率を新しい技術で改善し、システムを環境に優しい形で構築・運用する「グリーンIT」(グリーンコンピューティングとも)を採用してデータセンターの環境負荷を軽減すると、ビジネス面のメリットも期待できる。エネルギーコストやITコストが削減できたり、幅広いビジネスでサステナビリティ(持続可能性)の取り組みにつながったりと、期待できる効果はさまざまだ。
こうしたことから「グリーンデータセンター」の構築は、業界や地域を越えて企業の優先事項になっている。本稿はデータセンターの省エネルギー化とサステナビリティの向上を目指す、グリーンITの8ステップを紹介する。いずれも、環境とビジネスの両面にメリットが期待できるものだ。
ステップ1.基本の電力消費状況をトラッキングする
最初は現時点におけるデータセンターの消費電力量を把握しなければならない。まずは全体の消費状況をトラッキング(追跡)する。そうすることで、将来の消費電力量を予測するために、数値をさらに詳しく調べられるようになる。例えば消費電力の項目を以下のように分類し、基本の消費量を把握することで、電力管理の改善策や、データセンターそのものを変更してエネルギー効率を高める方法などを考えられるようになる。
- HVAC(冷暖房空調設備)システム
- サーバ
- ネットワーク
- ストレージ
- その他のインフラ
ステップ2.サーバの数を適正化する
データセンターのサーバを全て年中無休で稼働させていると、稼働率の低下を招く恐れがある。1日のうち特定の時間帯にのみリクエストを処理しているサーバばかりではなく、アプリケーションをたまに実行するだけのサーバや、機能を果たすことがなくなったサーバが存在する場合もある。そうなると、サーバの電力消費量は想定以上に大きくなる可能性がある。
OSS(オープンソースソフトウェア)の「Zabbix」や、Netreoの同名ツール、Paesslerの「PRTG Network Monitor」といったサーバ監視ツールなら、システム管理者が稼働率をトラッキングして、機器の数を減らすために整理できそうな機能を判断できる。一部のサーバを仮想化すれば、設置面積をさらに削減し、不要なサーバをまとめて引退させることもできる。
ステップ3.温度を調節する
データセンターのHVACシステムは、必要以上にエネルギーを消費する設定になっていることが少なくない。データセンター資産は新しいものほど、温度が上昇しても安全に稼働できるため、温度を少し高めに保ってHVACシステムの負荷を下げることも検討すべきだ。もちろん、IT機器が故障する恐れのある極端な温度と湿度にすべきではない。サーモスタットの設定温度を上げる場合は、その前にデータセンターに必要な冷却水準を正確に計算する必要がある。
ステップ4.データセンター内の配置を変更する
データセンターのエネルギー効率を高めるには、消費エネルギーと温度の要件に基づいてデータセンター内の設備配置を変更する方法もある。冷気用の通路(コールドアイル)と暖気用の通路(ホットアイル)を配置し、発熱しがちなIT資産を1カ所にまとめ、換気口の配置をうまく利用する。
IT資産の配置を最適化するためには、施設の吸気口と排気口の位置を把握する必要がある。その上で、温度が高めの区域に補助冷却装置を追加することで、全体の電力コストとHVACシステムの負担を減らすことができる。
ステップ5.古い資産を高効率なものに置き換える
データセンターの古い機器や設備は、新しいものと比べて消費電力や発熱が多い上に、物理的耐性が低くなっていることがある。サーバ、ネットワークスイッチ、ラック、HVACシステムは一般に、新しいものほどコンポーネントのエネルギー効率が高くなる。こうした新しい資産を適切なタイミングで導入しよう。機器の耐用年数終了や使用停止、部品の交換時や保守時など、機会はいくらでもある。物理的なサーバを仮想サーバに置き換えたり、一部のサーバをクラウドサービスに移行したりすれば、使用する機器の数を減らせる。
ステップ6.スマート施設管理ツールに投資する
ITサービス管理(ITSM)のプロセスで、消費電力量やシステムの負荷をはじめとしたさまざまな情報を収集し、保存する必要がある。そのデータを分析して、環境管理システムに適用できるインサイト(洞察)が得られれば、IT資産活用の最適化、ひいては消費電力量とHVACシステムの負荷削減につなげられる。
その一助として、AI(人工知能)技術を搭載した監視ツールで電力関連のデータを分析し、PUE(Power Usage Effectiveness:電力使用効率)の予測モデルを作ることが可能だ。温度データを絶えずシステムに送るIoT(モノのインターネット)センサーと組み合わせて、データセンターのHVACシステムをAIツールで自動管理する手法もある。ソフトウェアがデータを分析してHVACシステムを自動で変更し、温度が常に最適な水準に保たれるようにするのだ。例えばGoogleはこうした技術を活用することで、データセンターの冷却システムのエネルギー消費を40%削減した。
ステップ7.グリーンエネルギー技術について詳しく調べる
データセンターの炭素排出量を削減するには、地熱を利用した冷却、風力発電、水力発電などグリーンエネルギーへの転換を検討するのも一つの方法だ。例えばデータセンター事業者Verne Globalは、アイスランドとフィンランドにある施設で、電力と冷却の仕組みに地熱や水力、太陽光、風力などの技術を組み合わせている。データセンター事業者TierPointは、米国ワシントン州スポーカンにあるデータセンターの一つに地熱冷却システムを設置した。ここは施設地下の帯水層から水を取り、冷却に利用している。データセンター事業者Iron Mountainも、自然冷却を活用した地下データセンターを、米国ミズーリ州とペンシルベニア州で運用している。
自社で利用できそうなグリーンエネルギーの選択肢を確認しよう。電力生産と冷却の分野は再生可能な新しい手法が進歩しており、データセンターのカーボンフットプリントを削減する方法が見つかる可能性は高い。
ステップ8.ITベンダーをはじめ、さまざまな組織と協力する
グリーンITを提供しているベンダーや、サステナビリティ向上の選択肢を探すのを支援してくれる組織と、パートナーシップを構築しよう。
例えばIT部門は省エネルギー型電気製品の認証「Energy Star」を手掛かりにすれば、省エネルギーなPCやモニターなどを見つけられる。非営利団体Global Electronics Council(GEC)は、環境に配慮した電子機器製品であることを示す認証規格「EPEAT」(Electronic Product Environmental Assessment Tool)の基準に沿った製品をリストアップしており、サーバ、ネットワーク機器、PCなどさまざまなものを見つけられる。ITベンダーのサステナビリティとエネルギー効率水準については、以下のような組織が発信する情報を通じて確認が可能だ。
- 非営利団体CDP(旧称Carbon Disclosure Project)
- 国際的企業連合RE100
- 金融サービス会社MSCIのESG格付け
- 金融サービス会社RefinitivのESG格付け
- 調査会社SustainalyticsのESG格付け
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
3
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
4
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
5
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
6
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
7
世界のデータセンター容量は5カ国に69%集中、電力消費「5%の壁」が招くものとは?
-
8
データセンター事業者が「脱VMware」をした“例のライセンス問題”じゃない理由
-
9
積水化学工業が「SAP S/4HANA Cloud」の“全グループ導入”に踏み切った訳
-
10
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
8
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
9
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー