AIアプリケーション開発において、適切なプログラミング言語を選択することは重要な要素の一つだ。AIプロジェクトではどのようなプログラミング言語が選択肢となるのか。
人工知能(AI)アプリケーションの開発で使われる主要なプログラミング言語として「Python」が挙げられるが、他にもAI開発に適するさまざまなプログラミング言語が存在する。本稿は第3回に引き続き、AIプロジェクトで選択肢となる10個のプログラミング言語のうち5個を紹介する。
Googleが開発した「Go」は、ソースコードが人にとって理解しやすい高水準言語であり、コンパイル言語だ。コンパイル言語とは、人が読んで理解できるプログラミング言語で書かれたソースコードを、コンピュータが理解できる機械語に変換する作業(コンパイル)が必要なプログラミング言語を指す。
シンプルな構文を持つ他、並列処理に優れているため、分散システムの構築に向いている。プログラムによるメモリ内容の破壊を防ぐ「メモリ安全性」や、不要なデータを削除して空き容量を増やす「ガベージコレクション」(GC)の機能が備わっている。Goはマイクロサービス用のモジュール式コンポーネントを効果的に構築でき、これらを組み合わせて高度な機械学習ワークフローを作成できる。
Goのエコシステムは、成熟した他の言語と比べるとまだ広範性に欠いているものの、「TensorFlow」「GoLearn」といった機械学習ライブラリ(プログラムの部品群)と互換性がある。
Haskellは、数学的正確性に優れている関数型プログラミング言語で、信頼性や簡潔性、ソースコードの普遍性が評価されている。関数ベースのプログラミングに重点を置くことで、バグやランタイムエラーの減少が期待でき、安定性の向上に貢献する。
Haskellのエコシステムは成熟しているとは言い難いものの、教育や製造業でAI技術を活用する際に魅力的な選択肢となっている。Haskellでは機械学習向けの「HLearn」、ベイズ統計や確率的プログラミング向けの「BayesHack」の他、Pythonライブラリ「NumPy」に類似したライブラリなどが使用できる。
「JavaScript」(略して「JS」とも)は、実行時にソースコードを一行ずつ機械語に翻訳する「スクリプト言語」および高水準言語であり、比較的学習しやすい言語と言える。低水準言語と比べてデータ処理効率は劣る傾向にあるものの、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)や機械学習の出力をダッシュボードや他形式に変換するなどミドルウェア(中間的な処理)のタスクに秀でている。
JavaScriptはAIタスク向けとして主流の選択肢ではないが、JavaScriptの開発チームを抱えている場合、AIプロジェクトでJavaScriptを利用することがある。JavaScriptで利用できるライブラリには、数学向けの「math.js」、機械学習モデルのトレーニング向けの「TensorFlow.js」、ニューラルネットワーク向けの「Synaptic」などがある。
「Lisp」は最も古い高水準言語の一つであり、AIプログラミングの初期の選択肢の一つだった。シンボリックデータ、論理型プログラミング、関数型プログラミングに重点を置き、その柔軟性とプロトタイピングの迅速性が特徴だ。
古い言語であるものの、LispはAI領域で依然として大きな影響を与えている。Lispの派生言語である「Clojure」は関数型プログラミングや並行処理に優れており、AIタスクに適している。統計的コンピューティング向け「LISP-STAT」などのツールやライブラリも活用できる。
「Scala」は汎用(はんよう)的で簡潔な高水準言語だ。フィールド(データ)とメソッド(処理)をまとめた「オブジェクト」をプログラムの基本要素とするオブジェクト指向言語であり、関数型プログラミングの特徴も併せ持つ。
ScalaはJavaと互換性があり、Java仮想マシン(JVM)を活用することで、優れたパフォーマンスを実現する。特に、「Apache Spark」のようなフレームワーク(プログラム開発に必要な機能をまとめた枠組み)を活用することで、膨大なデータセットの処理や複雑な機械学習アルゴリズムを効率的に処理できる。
Apache Sparkの「MLlib」「SMILE」のようなライブラリを使うことで、データの分類、回帰、クラスタリング、フィルタリングといった機械学習タスクをスムーズに実行できる。数学的処理を得意とするライブラリ「Breeze」は、機械学習やデータ分析のための強力な機能を提供する。
次回は、AIアプリケーション開発の今後を考察する。
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