STEM(科学、技術、工学、数学)系の科目を専攻する女子生徒は着実に増えているが、同分野には依然として重要な課題が残されている。
コンピュータサイエンスを含めてSTEM(科学、技術、工学、数学)系の科目を専攻する女子生徒の数は、着実に増加している。一方でその進展にもかかわらず、IT業界の女性を取り巻く課題は依然として残っている。何が問題なのか。
英国コンピュータ協会(BCS)の調査によると、2024年に大学に入学したコンピュータサイエンス専攻の学生数1万5530人のうち、女性の数は2940人と、2023年から8%増加した。その割合は男子生徒4.1人に対して女子生徒1人と、2019年の男子生徒5.3人に対し女子生徒1人から差が縮まっている。
さらに、英国の大学入学資格「Advanced Level General Certification of Education」(GCE A Level)の試験科目である「コンピューティング」を選択した女子生徒の数は、2023年から2024年にかけて29%増加している。背景には、人工知能(AI)技術やサイバーセキュリティといった技術領域への関心の高まりが反映されていると考えられる。
BCSで教育および公益担当マネージングディレクターを務めるジュリア・アダムソン氏は、コンピュータサイエンスを履修する学生の数が増えている状況を評価しつつ、「デジタル分野におけるスキルを持った人材の不足はいまだ大きな問題だ」と指摘する。技術分野で働く女性の数は、ここ数年でわずかしか増えていない。英国のIT分野で働く技術者のうち女性が占める割合は約20%に過ぎず、改善すべき課題はまだ多く残っている。
技術職を目指す女性の割合が増えない理由として、以下が挙げられる。
これらの要因から、技術職以外の仕事を選ぶ女子生徒は少なくない。
一方で、女子生徒はSTEM分野の重要性を後から実感する傾向にあるようだ。コンサルティング企業のアクセンチュアが2018年3月に発表したブログエントリ(投稿)によると、英国の14歳以上の女子生徒のうち62%が「STEM科目をもっと長く履修すればよかった」と回答し、約3割が「STEM科目は自分が考えていたよりも重要で、勉強していればキャリアの選択肢が広がっていただろう」と述べている。この結果からは、教育段階での意識改革やサポートの必要性が読み取れる。
技術分野への進路を選ぶ女性を増やすためには、大学教育だけでなく、多様なキャリアパスを用意することが重要だ。例えば、インターンシップ制度を活用して、働きつつスキルを習得するのも一つの選択肢だ。「多様性を推進して技術者の数を増やすことで、男女格差の解消だけでなく、経済ニーズを満たすこともできる」とアダムソン氏は強調する。
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