IT部門を「利益を生まないコスト要因」と見なす企業がある中で、サイモン・ラトクリフ氏はゼロから予算を検討する「ゼロベースの予算管理」を提唱している。どのような考え方なのか。
企業はIT部門について、「コストは掛かるが利益を生まないような存在だ」と見なすことがある。クラウドサービスのワークロード(アプリケーション)を運用するチームも同様だ。IT部門に予算の削減を迫る企業も珍しくない。
こうした中、M&A(合併と買収)支援サービスを提供するBeyond M&Aの元最高財務責任者(CFO)で現在は同社の戦略策定と価値創生のパートナーを務めるサイモン・ラトクリフ氏は「ゼロベース(物事をゼロの状態から検討すること)の予算管理」という考え方を提唱している。ゼロベースの予算管理とは何か。従来の予算管理とは何が違うのか。
IT部門にとって、クラウドサービスの課題の一つはコストの管理だ。一般的にクラウドサービスのコストは増加傾向にあり、コストを最適化できなければ予算の増加は避けられない。
ゼロベースの予算管理では、各部門が過去のデータに基づいて予算を策定するのではなく、ゼロから費用を精査し、測定可能な価値を生み出す項目に優先的に予算を決める。つまり、予算管理の担当者はコスト管理における重点を、費用削減から価値創出へと移すことになる。
クラウドサービスの予算管理にゼロベースのアプローチを導入すれば、IT部門への評価も変わるかもしれない。
一般的な企業がクラウドサービスに掛かるコストをどのように考えてきたのかを見ていこう。
クラウドサービスへ移行するメリットは周知の事実になっている。クラウドサービスは、ハードウェアやソフトウェアへの初期投資が不要で、プロビジョニング(利用可能な状態にすること)も容易だ。
クラウドサービスは一般的に従量制課金であり、企業は利用したサービスの料金のみを負担する。インフラの所有や維持管理のための費用は負担したくないが、コンピューティングサービスが必要な企業にとってクラウドサービスは費用効率に優れた選択肢となる。
クラウドサービスには基本的な3つの提供形態がある。
クラウドサービスのカスタマイズ性やユーザーのコントロール可能な範囲は、ベンダーによって異なる。予算管理の観点では、これらの自由度が高いと予期せぬ費用が発生する可能性があるため、IT部門はクラウドサービスを適切に管理する必要がある。購入するサービスやライセンスが増えるほど、追加費用の追跡管理は難しくなる。
クラウドサービスでは月単位で使用量に増減が見られるため、この変動性がコスト管理を一層複雑にする。企業はクラウドサービスのコストを最適化するために、以下の取り組みが必要になることがある。
仮にクラウドチームが全ての余分なコストを削減したとしても、経営陣からさらなる削減を求められる可能性がある。ゼロベースのアプローチは予算管理に新たな視点をもたらすことで、こうした問題に対処する。
次回はゼロベースの予算管理を導入するためのプロセスを紹介する。
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