出社義務化しても“すぐ帰宅する社員”を監視したがる企業の末路「出社×テレワーク」の実情【後編】

オフィス回帰が広がる中、従業員が出社記録を残すためだけに出社する「コーヒーバッジング」という言葉が生まれている。一部の企業はこうした行為を取り締まろうとしているが、“ある結末”を招く恐れがある。

2024年12月12日 05時00分 公開
[Ava DePasqualeTechTarget]

 テレワークとオフィスワークを組み合わせるハイブリッドワークが普及する一方、従業員がコーヒーを飲む程度の短時間だけ出社し、実際の業務は自宅や社外で実施する「コーヒーバッジング」というトレンドが生まれている。一部の企業はその対策を講じているが、“ある結末”を招く恐れがある。どのような結末なのか。

“すぐ帰宅する社員”を監視する企業の末路とは?

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連載:「出社×テレワーク」の実情


 一部の企業はコーヒーバッジングを取り締まるため、入館証の履歴から出勤状況を監視したり、勤務時間中の位置情報を追跡したりしている。

 週5日間の出社を義務化する動きもある。Amazon.comのCEO、アンディ・ジャシー氏は2024年9月、従業員に2025年1月から週5日の出社を求める声明を発表した。企業文化を強化し、コラボレーションを改善するためだという。

 出社を義務化し、コーヒーバッジングを取り締まるとどうなるのか。ハイブリッドワークで働く従業員は、テレワークを前提としたスケジュールに順応している。突然週5日出社を義務付ければ、従業員のモチベーションや仕事の満足度、生産性は低下する恐れがある。出社状況を監視されれば、従業員は「企業から過度に管理され、信頼もされていない」と感じる可能性もある。

 従業員が匿名で利用できるSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)「Blind」を運営するTeamblindのWebメディアBlind Workplace Insightsが実施した調査によると、Amazon.comの従業員の91%が週5日出社の命令に不満を抱いていると回答。73%は転職を考えていると答えた。調査は2024年9月にオンラインで実施し、Amazon.comの従業員2585人が回答した。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)後、従業員に出社を求めた企業を対象にした別の研究も、同様の傾向を示唆している。

 ミシガン大学(University of Michigan)とシカゴ大学(University of Chicago)の研究チームは2024年5月、論文を公開した。出社命令が従業員の在職期間や上級職の地位に与える影響を調査したものだ。Microsoft、Space Exploration Technologies(SpaceX)、Appleの従業員2億6000万人分の履歴書データを用いた研究の結果、出社命令が上級職の離職率を高める可能性が分かった。上級職の離職は、業務フローやイノベーション、生産性に悪影響を及ぼす。上級職の間で混乱が生じれば、企業全体のモチベーションにも影響が広がる。

従業員にオフィス回帰を促す方法とは?

 入館証の履歴や位置情報の追跡は、出社を促そうとする企業にとって必ずしも有効な手段ではない可能性がある。オフィス回帰を促すより良い選択肢を5つ紹介する。

通勤にかかる費用を補償する

 従業員によっては、出社することで多額の通勤費用がかかる場合がある。週に3日以上の出社を求める企業は、通勤や駐車にかかる費用を補助する。

フレックスタイム制を導入する

 従業員が会社からどれほど離れた場所に住んでいるかによって、通勤時間は変わる。午前9時〜午後5時の勤務時間を強制するのではなく、柔軟な勤務時間を設定する。

勤務日を生産的なものにする

 従業員が「自分の時間が無駄にされている」と感じないように、出社の計画を立てる。同じ部門のメンバーが同じ日にオフィスにいるようにスケジュールを立てたり、会議を対面で実施したりする。出社したにもかかわらず、同僚やマネジャー、メンターとWeb会議でやりとりするだけにならないように調整する。

モチベーションを高める活動を実施する

 無料のセミナーやワークショップ、従業員の表彰イベントを開催して従業員同士の協力を促進したり、モチベーションを高めたりする。勤務終了後に従業員が交流する機会を設けることも有用だ。

オンサイトの特典を設ける

 無料のランチやジムの会員権など、出社した従業員に特典を提供する。

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