Arm版Windowsは成功するか? 「Copilot+ PC」を2カ月使ったMacユーザーが語るCopilot+ PCを2カ月使って分かったこと【第4回】

MicrosoftがAI PCブランドとして「Copilot+ PC」を打ち出し、「AI PC」市場は大きく動き始めている。「Mac」を15年使ってきたアナリストがDell製Copilot+ PCを2カ月使い続けて感じた3つの気付きとは。

2025年03月06日 08時00分 公開
[Gabe KnuthTechTarget]

 「AI PC」は、AI(人工知能)モデルの処理に特化したプロセッサであるNPU(ニューラル処理装置)を搭載したPCの総称だ。2024年5月にMicrosoftは、Qualcomm Technologies(以下、Qualcomm)と共同でAI PCブランド「Copilot+ PC」の製品群を発表した。

 Dell TechnologiesからArmアーキテクチャのプロセッサ(Armプロセッサ)を搭載するCopilot+ PC「Dell XPS 13 9345」を提供してもらった筆者は、15年来の「Mac」ユーザーであることもあり、2カ月間このPCだけを使って徹底評価をすることにした。そうした中で見えてきた、Microsoftやプロセッサ市場、AI PCの今後に関する3つの展望を紹介する。

Copilot+ PCを2カ月使い倒して気付いた3つのこと

 原稿執筆時点で筆者が得た気付きは次の3点だ。

1.Arm版Windowsの完成度

 MicrosoftとQualcommが2024年5月に発表したCopilot+ PC製品群は、Armプロセッサを搭載している。2012年にMicrosoftがArmプロセッサ搭載PC向けWindowsの実現を試みたときには課題が生じ、成功には至らなかった。

 一時的な問題は残っている可能性があるものの、アプリケーションの導入や管理方法は、命令セットアーキテクチャが「x86」や「x64」であるプロセッサ搭載のデバイスとおおむね変わらない。デバイス管理ツール「Microsoft Intune」「Microsoft Configuration Manager」も機能する。細かい調整は必要だが、企業が広くArm版Windowsの導入に成功する未来が見える。

2.プロセッサベンダーの市場争い

 組織再編などの動きを見せているIntelに対して、Advanced Micro Devices(AMD)とQualcommが強力な強豪相手として立ちはだかっている。Qualcommについては本連載で説明してきた通りだ。AMDも、データセンターやエンドポイントにおける“Intel依存”からの脱却先として浮上してきた。これまでIntel一筋だった企業でも、AMDに関心を向けるようになったところがある。データセンターやエンドポイントでのAI技術開発に注力しており、市場開拓を進めている点にも注目だ。

3.Microsoftとプロセッサベンダーの関係

 Qualcommは、Microsoftから公式の支援と受けるという、Intelがかつて独占していた立場を獲得した。QualcommのSoC(システムオンチップ)「Snapdragon」シリーズは存在感を強めており、Microsoftが2024年5月にQualcommと共同発表したCopilot+ PC製品群にSnapdragonシリーズを搭載したことは象徴的な事実だ。エミュレータ「Prism」の最適化における両者の協力は、Armプロセッサ搭載PC向けWindowsの利用拡大に大きく貢献するものだ。


 AI PCによって、かつて停滞していたエンドポイントデバイス市場に新たな活気が生まれている。2025年や2026年にどう進化するのか注目したい。

TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス

米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

事例 New Relic株式会社

保育・教育業務支援クラウド「CoDMON」がユーザー体験を向上させた方法

全国2万以上の保育/教育施設で職員の業務を支援するためのクラウドサービスを運営しているコドモン。ユーザー数の増加に伴いシステムの安定運用が課題になっていたという同社は、どのように監視体制の強化を進めたのだろうか。

事例 New Relic株式会社

オブザーバビリティ(可観測性)ツールで何ができるのか? 事例に見る導入効果

AIプラットフォーマーとしてさまざまなサービスを展開しているAI inside。同社は、サービスの安定運用を実現するために監視体制の強化に着手する。同社がどのようなツールを導入して取り組みを進めたのか、本資料で解説する。

プレミアムコンテンツ アイティメディア広告企画

「Windows 11は低スペックPCお断り」の真相

「Windows 11」は従来の「Windows」と比較して、システム要件が厳しいとの声がある。具体的には何が違うのか。そもそもWindows 11への移行に意味はあるのか。

プレミアムコンテンツ アイティメディア広告企画

「Windows 11は10とほぼ同じ」を信じてはいけない理由

「Windows 10」のサポート終了が迫る中、移行に関する幾つかのハードルや誤解からまだ「Windows 11」に移行できていない組織がある。移行を円滑に進めるために押さえておくべき点とは。

製品資料 SB C&S株式会社

マルチテナント型SaaS開発者向け:ID・アカウント管理の重要性と構築のポイント

マルチテナント型SaaSの開発・運用に当たっては、ID・アカウント管理を適切に設計・実装していくことが不可欠だ。その理由を確認しながら、ID・アカウント管理で求められる要件や構築のポイントを解説する。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...