2006年08月22日 08時00分 公開
特集/連載

究極の負荷テストに耐えた米電力会社のSOAシステムCase Study

電力会社のオースティンエナジーが顧客サービスシステムにSOAを実装した翌日、竜巻による大規模な電力網ダウンが発生した。図らずも実施されたこの「負荷テスト」は、SOA導入の成功を証明することになる。

[Rich Seeley,TechTarget]

 テキサス州オースティンに本社を置く地域電力会社、オースティンエナジーがSOA(サービス指向アーキテクチャ)を初めて実装したアプリケーションは、稼働開始から24時間も経たないうちに、実地の負荷テストにかけられることになった。自然災害のために同社の5万2000人の顧客が電力供給を一時的に受けられなくなってしまったからだ。

 何カ月にもわたる計画、設計、トレーニング、開発、通常のテストを経て、オースティンエナジーが初めてSOAを実装した顧客サービス用コンポジットアプリケーションは、今年5月3日に正式運用が開始されたと、同社CIOのアンドレス・カーバロ氏は語る。だが翌5月4日、激しい雷雨と風速約30m/秒の暴風で小さな竜巻が発生し、オースティンの木々を倒すとともに電力網をダウンさせた。

 「竜巻のせいで5万2000人の顧客が停電の被害にあった」と同氏は振り返る。

 新しいSOAベースの顧客サービスシステムは、顧客サービス担当者が顧客から寄せられる停電の連絡の電話に対応する時間の短縮に主眼を置いたものであり、またとないタイミングで運用が開始されたことになる。

 「旧システムは、1日に4000件の作業オーダーしか処理できないという制限があった」とカーバロ氏。「新システムは、1日当たり最大5万件の作業オーダーに対応できることが検証されている」

 新しいSOAベースの顧客サービスアプリケーションは、大自然の負荷テストを見事に乗り切っただけでなく、その過程で、従来のColdFusionベースのアプリケーションよりもはるかに高いパフォーマンスを発揮した。

 ほんの2日前であれば、顧客からの停電の連絡は、従来のシステムで1件当たり平均約5分で処理されていただろうが、新システムでは1件当たりの処理に平均約2分しかかからなかったとカーバロ氏は語る。

 コールセンターの生産性向上とそれによる顧客満足の向上は、カーバロ氏の21人の開発者チームが昨年秋、同社初のSOAの実装となるアプリケーションの計画を開始した際に、同氏が掲げた2つの目標だ。カーバロ氏のチームでは、70以上に上る既存システムをSOAアプリケーション群に置き換えることを最終的に目指していたが、同氏は、小規模なプロジェクトから徐々に始めるという、こうした場合の鉄則に従って事を運んだ。最初に構築されたSOAベースの顧客サービスアプリケーションは、顧客の場所の確認や、停電復旧の作業オーダーの発行といった処理を行う5つのWebサービスで構成されるコンポジットアプリケーションだ。

 SOAを導入するには、新しい考え方でアプリケーション開発を進めるだけでなく、開発チームがまったく新しいプログラミングスキルを習得することも必要だった。カーバロ氏は新しいSOAアプリケーションを、IBMのWebSphereとRationalツールを使ってJavaで作成する方針を決めたが、オースティンエナジーの開発者は、ColdFusionとVisual Basicを得意としていた。カーバロ氏は21人の開発者がJavaコーディングを行えるようにするため、彼らをIBMのオースティンの研修施設に派遣し、Javaのトレーニングを60日間受講させた。

 SOAアプリケーションの設計はオースティンエナジーにとって初めてだったため、カーバロ氏はIBMのサービス部門のアーキテクトを起用し、アーキテクチャの設計と開発の監督を担当させた。だが、実際のコーディングは同氏の21人の新人Javaプログラマーチームが行った。社外のコンサルタントと社内のプログラマーを組み合わせた体制が功を奏し、プロジェクトはわずか6カ月で概念設計から実装へと進み、5月4日の嵐を乗り切ったアプリケーションが作成された。

 これはカーバロ氏にはとりわけうれしい成果だった。このプロジェクトは不可能だと同氏に話していた悲観派たちが間違っていたことを証明するものだからだ。

 「当初は多くの人が、絶対失敗すると思っていた」と同氏は回想する。「彼らは、このプロジェクトはいつまでたっても完了しないだろうと言っていた。だがわれわれは、こうしたプロジェクトが実行可能であることをはっきりと証明した。SOAの世界に移行し、適切に開発を行い、スケーラビリティとモジュール性が高くすべての要件を満たすシステムを、納期と予算の範囲内で展開することは不可能ではない」

 カーバロ氏によると、成功の決め手の1つとなったのは、プロジェクトの30%を計画とアーキテクチャ作りに充てたことだった。また、開発チームがJavaに関する60日間のトレーニングを受講し、認定資格を取得したことも有益だったという。

 現在、開発チームは次のSOAアプリケーションの構築に取り組もうとしている。

 「最終目標は、SOAを中心としてエンタープライズシステム全体を統合することだ」とカーバロ氏は語る。「われわれはこの目標に向けて、昨年夏から70以上の主要なプロセスについて、SOAに対応させる計画を進めている。われわれはこれらのプロセスをSOA環境に移し、それらを支えるシステムインフラを効率化していきたいと考えている。今後5カ月で新たに5つのプロセスに取り組み、一連の新しいWebサービスや、SOA基盤の新要素と拡張機能の運用を開始する。これらは財務システムや資産管理システムなどと連携して動作させる計画だ」

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