ERP導入事例:SMILEαAD
ERPパッケージ導入成功の秘訣は“ワガママ”を主張すること
規模の小さな企業だからといって、ERP導入の際にベンダーへの注文を遠慮すべきではない。この事例では、自社の要求を妥協なく通すことが導入成功への秘訣と考えた、ある企業を取り上げる。
乱立するシステムが業務を煩雑化していた
アヴァンセは、埼玉県を拠点とする広告代理店だ。創業は1978年と古く、折り込みチラシ、TVやラジオ、街中の看板広告を扱うとともに、WebページのSEO対策など新しいビジネスにも取り組んでいる。
少数精鋭の同社の従業員数は13人(2007年10月1日現在)。企業規模こそ大きくはないが、早い段階からシステム化に取り組んできたという。広告の制作をMacintoshで行うのはもちろん、1990年代前半からWindowsベースの業務アプリケーションを導入し業務効率の改善を行ってきた。
専務取締役の伊藤幸司氏は、営業担当者による伝票処理の効率化や多様化する媒体への対応のため、1993年に販売管理システムを導入したという。しかし、販売管理システムと経理システムが連動していなかったため、売上データを販売管理システムから紙で打ち出し、それを経理担当者が経理システムに入力するという煩雑な作業が発生していた。
また、当時依頼していた会計士からは、税務会計に利用する会計ソフトウェアを指定されていた。そのため、各担当者が販売管理用、財務管理用、会計士用と、ばらばらなシステムを利用している状態だったという。
「結果として、営業の数字と会計の数字が正確には合わなかったのです。会計士もこの程度なら、ということで目をつぶっていた状態でした」(伊藤氏)
システムの連携を目指して新たなシステムを導入
以前利用していた販売管理システムは、1つの案件に対し複数の仕入れ先が発生する広告業特有の営業形態には合わない部分があったという。そのためカスタマイズを加えつつ、結果的には13年という長い期間利用してきた。しかし、システム間の連携がなく数字の不整合が発生するという課題解決のためにも、何らかの新しい仕組みが必要と考えていたという。そうした折に、大塚商会の営業担当者が飛び込みで訪問してきたのだ。
「当時、漠然とですが、大塚商会は発注コストが高いというイメージがありました。そこで、営業担当の方には、既存システムのリース契約と同等のコストで課題解決ができるのなら、新しいシステムを導入しても構わないとお話をしたのです」(伊藤氏)
取締役の岩渕隆二氏は、以前勤務していた会社でERPパッケージ「SMILEαAD」の利用経験があった。そのため、使いやすさは理解していたというが、同氏もコスト面で不安を感じていたという。
両氏が抱いていた「高い」というイメージに対し大塚商会が提案したのが、「SMILEαAD 販売管理」および「SMILEαAD 財務管理」という2つのERPパッケージだった。コストについては、従来製品と同等額の提示だったという。伊藤氏は、製品の詳細についての説明を受けた後、コスト問題がクリアになるのなら、何もかもそろっているERPパッケージを導入すべきと考えたという。その時々で必要なものを購入してしまうと、結果的にはそれらを連携させるための手間やコストが大きくなってしまう可能性があるからだ。
SMILEαADを採用すれば、システム間の数字の整合性という課題は解決できる。会計士から指定されていた会計ソフトウェアの利用については、会計士を変更することで対処したという。
「正しい数字で経営を行いたかった。その数字が合っていないと、社内で何ら不正行為がなかったとしても、疑われる原因になりかねません」(伊藤氏)
業務をパッケージに合わせない
岩渕氏は、中小規模の企業がERPの導入を成功させる秘けつは、「業務をパッケージに合わせないこと」だと指摘する。規模の小さな企業だからと遠慮するのではなく、自分たちが実現したいことをどんどんベンダーにぶつけるべき。最初から妥協してしまうと、妥協したが故に発生したごくわずかな機能の使いにくさが災いし、業務全体がスムーズに回らなくなる恐れがあるからだ。岩渕氏は、「実現したいことを言いたいだけ言った後で、コスト面を含めて妥協点を探せばいい」と付け加える。
「システム間の連携と数字のチェック漏れ防止策は、絶対に譲れない要件でした。これが実現できなければ、SMILEαADは採用していません」(岩渕氏)
逆に、パッケージを選ぶポイントとしては、「自分たちの譲れない部分の実現に、大きなコストが伴わないことが重要になる」と岩渕氏は指摘する。
導入に当たっては、ヒアリングが数回行われた。その席で、大塚商会の技術者に実現したい内容を思う存分伝えたという。その後はプロトタイプ的にシステムを構築し、テストを重ねながら随時修正していくという方法が採られた。大塚商会の技術者に苦労はあったかもしれないが、導入時にアヴァンセが苦労したことはなかったという。
2006年6月、まずは「SMILEαAD 販売管理」が導入され、8月には試験運用が開始された。データの整合性は2カ月で確認できたため、10月から本格稼働を始めた。販売管理がうまく動き始めたところで、2007年3月には「SMILEαAD 財務管理」を導入。これで、販売管理と財務管理のシステムが連携し、システム間の数字の整合性も確保できた。この結果、決算処理に必要な期間が15日間から3日間へと大きく短縮され、営業担当者の残業も確実に減少したという。
「少なくとも、1日1時間以上の事務処理時間の短縮にはつながっていると思います。合計すれば、1日で1人分くらいの労働時間を削減できているはずです」(岩渕氏)
岩渕氏自身、以前は毎週のようにデータを自宅へ持ち帰り、週末1日がかりで営業結果の集計を行っていたが、現在はこれも必要なくなったという。また、事務処理が減ったことで営業担当者は本来の業務に集中できるようになり、営業の分析結果を活用した早め早めの顧客アプローチも行えるようになったという。
企業規模に関係なくIT化は当然行うべきもの
伊藤氏は、「IT化は企業規模に関係なく、当然行うべきもの」と話す。IT化にはコストが伴うため、初期投資の大きさを気にするあまり本格的なシステム化に踏み切れない企業は少なくない。しかし、大切なのは導入後のランニングコストを含めたトータルの費用だ。導入の初期段階で多少無理をしたとしても、ERPのような統合的なパッケージを採用する方が、長い目で見るとコストが抑えられる場合もある。実際にアヴァンセは、販売管理、財務管理に続き、2007年8月には「SMILEαAD給与管理」を導入し、ERPの適用範囲を拡大している。
「企業は、いかに売り上げを伸ばすかということにエネルギーを注ぎたいものです。IT化を積極的に行い、統合パッケージを導入するということは、業務プロセスの弱点を明らかにすることでもあります。弱点が明らかになれば、人の補充や投資を効果的に行うことができビジネスは拡大する。それこそが、統合パッケージを導入する効果だと考えています」(伊藤氏)
伊藤氏は、アヴァンセが2年ほどSMILEαADを運用してきた実績をもってしても、パッケージ製品の満足度を測るのは難しいと語る。パッケージの製品に搭載されている機能については、「できて当たり前」というのが前提。既に実装している機能で評価するのではなく、自分たちの業務にどれだけパッケージ側が合わせられたか。そして、手間とコストをいかに掛けずにIT化を実現できたかで、パッケージ導入の満足度が決まってくるのではないかと伊藤氏は指摘する。
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