暗号化と認証の仕組み
WiMAXとは何か――セキュリティの仕組み
WiMAXのユーザーは自分が送信したデータが盗聴されたり操作されたりすることはないと、果たして安心していいのだろうか。
WiMAXの無線技術に関する解説は多数あるが、WiMAXのセキュリティとなるとどうだろう。ユーザーは自分が送信したデータが盗聴されたり操作されたりすることはないと、安心していいのだろうか。WiMAX運営者は、許可されたユーザーのみがネットワークを利用し、ユーザーがしかるべきサービスのみを使ってくれると確信できるのか。
WiMAXについて解説する連載の3回目となる今回は、WiMAXのセキュリティにスポットを当てる。連載第1回ではWiMAXの技術とアプリケーション、用語について説明し、第2回はWiMAXの性能を取り上げた。最終回となる第4回はWiMAXデバイスがテーマとなる。
データのプライバシーと完全性
暗号化は、データの機密性と完全性を守るための仕組みだ。プレーンテキストで記された情報(例えばユーザー情報)を複雑な数学アルゴリズムを使って組み合わせ、暗号文を生成する。この暗号文を無線ネットワーク経由で送信すれば、盗聴者には解読ができない。
WiMAXはAdvanced Encryption Standard(AES)を使って暗号を作成する。AESは暗号鍵とカウンタを入力としてビットストリームを生成する。そのビットストリームをプレーンテキストで排他的論理和(XOR)演算し、暗号文を生成する(図1)。
暗号文の受信側は、単純にこの手順を逆にたどってプレーンテキストを再生する。この仕組みを機能させるためには、送信者と受信者が同じ暗号鍵を共有していなければならない。
公開鍵インフラ
WiMAX 802.16e-2005(モバイルWiMAX)の仕様では、基地局とモバイル端末の間で鍵情報を安全にやりとりするためにPrivacy and Key Management Protocolバージョン2(PKMv2)を使っている。PKMv2はユーザーのIDを確認して認証鍵(AK)を生成する仕組みになっている。AKは前項で解説した暗号鍵を取り出すのに使われるため、非常に重要だ。
PKMv2は、Rivest-Shamir-Adlerman(RSA)公開鍵暗号方式の利用をサポートしている。RSA公開鍵交換のためには、メーカー発行のX.509デジタル証明書か運営者発行のSIM(Subscriber Identity Module)カードなどの信用証明を利用して、モバイル端末のIDを確認しなければならない。
X.509デジタル証明書には、モバイル端末の公開鍵(PK)とそのMACアドレスが含まれる。モバイル端末はX.509デジタル証明書をWiMAXネットワークに送り、WiMAXネットワークからその証明書を認証機関(図2)に転送する。認証機関で証明書をチェックし、ユーザーのIDを確認する。
ユーザーIDが確認されたらWiMAXネットワークは公開鍵を使って認証鍵を作成し、その認証鍵をモバイル端末に送る。モバイル端末と基地局はその認証鍵を使い、AESアルゴリズムで使われたのと同じ暗号鍵を取り出す。
ユーザー認証
認証とはユーザーID確認の手順であり、ユーザーが利用できるサービスの確認に使われることもある。認証プロセスには通常、サプリカント(モバイル端末に置かれる)と認証装置(基地局またはゲートウェイに置かれる認証サーバ)がかかわる(図3)。
WiMAXはEAP(Extensible Authentication Protocol)を使ってユーザー認証とアクセス制御を実行する。EAPは認証フレームワークであり、実際の認証作業には「EAP方式」が必要になる。ネットワーク運営者が選べるEAP方式には、EAP-TLS(Transport Layer Security)やEAP-TTLS MS-CHAP v2(Tunneled TLS with Microsoft Challenge-Handshake Authentication Protocol version 2)などがある。EAP方式で定義されたメッセージはモバイル端末から認証装置に送られ、認証装置はRADIUSまたはDIAMETER(RADIUS後継のAAAプロトコル)を使ってそのメッセージを認証サーバに転送する。
このEAPメッセージ交換でユーザーを認証、適切なアクセス制御を保証し、課金手続きの開始も行える。企業のネットワーク管理者はこれと非常によく似た手順で無線LANのユーザー認証を行っている。
まとめ
WiMAXは、高度な認証・暗号化技術を使って堅固なユーザー認証とアクセス制御、プライバシー、データの完全性を保証している。ユーザーは、自分が送信したデータが盗聴されたり操作されたりすることはなく、認証を受けたユーザーだけがWiMAXサービスにアクセスできると確信していい。
本稿筆者のポール・デビーシ氏は、Burton Groupの上級アナリストで、ネットワーキング業界で25年余りの経験を持つ。Burton Group入りする前は無線コンサルティング会社のClearChoice Advisorsを設立し、無線スイッチの革新企業Legra Systemsの製品マーケティング副社長、新興企業IPHighwayとONEX Communicationsの製品マーケティング担当副社長、Cascade Communicationsのフレームリレー製品ラインマネジャーを歴任した。ネットワーキングシステム開発者としてのキャリアは、Bell Laboratories、Prime Computer、Chipcomでの上級エンジニアとしてスタートした。ボストン大学でシステムエンジニアリングの理学士およびコーネル大学で電気工学の工学修士の学位を取得。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社kickflow] 2社の事例に学ぶワークフロー改革:属人化解消や年数万件の申請書類削減のコツ -
製品資料
[NTTPCコミュニケーションズ株式会社] 「回線速度不足」だけが原因ではない? Web会議の遅延を解決する方法とは -
製品資料
[東京エレクトロン デバイス株式会社] 工場の可用性向上に重要な「7つの領域」と対策 OTセキュリティ強化の基礎知識 -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 問い合わせ対応で本来の業務が進まない、総務や情シスの負担をどう減らす? -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 自社データから高精度な回答を生成、簡単に生成AIチャットボットを構築する方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ITエンジニア1265人調査 生成AIを使い込むほど「人の確認」が重い理由
-
2
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
5
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
6
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
7
IT予算が10%増えたら何に使う? 著名企業のCIOが明かす「最優先の投資先」
-
8
AI活用か新たな脅威か OpenAI自律エージェントがRubyGemsを急襲
-
9
音声もFAXもメールで確認――ユニファイドメッセージの業務効果
-
10
機械学習について、正しく説明している文章はどれ?
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
2
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
-
6
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
7
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
8
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
9
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
10
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー