最近注目を集めている「ITガバナンス」だが、日本ではまだしっかりと認識・実施されるには至っていないようだ。一体ITガバナンスはどうすれば実践できるのか。日本ITガバナンス協会の事務局長、梶本氏に聞いた。
ITは企業にとって事業遂行のための道具であり、企業を成長に導く強力な武器でもある。その一方で、思慮深く利用することを怠ると制御不能のコストイーターに化けやすく、底知れぬリスクを内包している「もろ刃の剣」といえるかもしれない。それを象徴的に示したのが、先日起きた全日本空輸(ANA)の搭乗手続き管理システム障害だろう。急きょ手荷物預かりなどを手作業に切り替えたものの処理が追い付かず、全国規模で国内空港は終日混乱し、発着の大幅な遅延や欠航という事態を招いてしまった。
ITは適切にコントロールする必要がある。社会的に要請が高まっている企業の内部統制においても、その6つの基本的要素の1つに「ITへの対応」がある。その説明には「組織目標を達成するためにあらかじめ適切な方針および手続きを定め、それを踏まえて、業務の実施において組織の内外のITに対し、適切に対応すること(例えば、ITの保守・管理部門によって行われる財務関連の元データ情報の更新に関して、更新履歴を正確に記録すること、情報システムの構築や情報管理規定の策定など)をいう」とある。
そこで今注目を集めているのが「ITガバナンス」だ。ガバナンスとは「統治」を意味する。日本語に訳すと「情報技術統治」になるが、これは一体どういうことを意味しているのだろうか。
米国に、ISACA(情報システムコントロール協会)という団体がある。同団体はITガバナンスの重要性を早くから認識し、そのためのツールや考え方などを普及させるために、1998年にITガバナンス協会(ITGI:IT Governance Institute)を設立した。その日本支部として2006年に誕生したのが、日本ITガバナンス協会(ITGI Japan)だ。ITGI Japanの事務局長である梶本政利氏は、ITガバナンスを以下のように説明する。
「ITガバナンスとは、経営陣および取締役会が担うべき責務で、ITが組織の戦略と目標を支え、あるいは強化することを保証するために、リーダーシップを確立したり、組織構造とプロセスの構築を行ったりするものです」
そして、ITガバナンスの目的は、ITにかかわる「努力」の方向性を決定し、ITの成果が以下の目的を達成することを保証することにあるという。
ITガバナンスを実践できれば、それを通じて企業は情報を最大限に利活用でき、便益の最大化、ビジネス機会に対する投資、競争優位性の確保を実現できる。米国ではITガバナンスの重要性は既に約10年前から叫ばれているが、残念ながら日本ではまだしっかりと根付くまでには至っていないようだ。「企業の間でITガバナンスという言葉の解釈に誤解が生じていることが何よりの証拠です」と梶本氏は語る。
ITガバナンスは内部統制と同義として語られることが多いが、それは決して間違いではない。しかし、「統制」という言葉はあまりふさわしくないと梶本氏は指摘する。「『統制』という言葉には『押しつけ』『制限』といったマイナスのイメージがあります。内部統制を英訳すると『Inner Control』。コントロールできるということは、基準があって、第三者がチェックできることです。さらに言えば、目的達成のための行為であり、記録されるものでなければならない。ITガバナンスとはコントロールであるべきなのです」
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