PLMの理解と導入検討のために
PLM(製品ライフサイクル管理)の導入に当たり考えるべきこと
PLMの導入に当たっては、何から始めればいいのだろうか? PLM製品の理解も重要だが、それ以上に大切なのは自社の製品ライフサイクルの全体像を把握し、問題点がどこにあるかを特定することだ。
製造業界では、企業は高品質の製品を迅速に市場に投入する一方で、グローバルなコンプライアンス規定に対応するという課題で苦労している。しかもメーカー各社は、大幅なコスト削減というプレッシャーの中でこの課題に取り組んでいる。
提唱されて既に10年近くになるPLM(製品ライフサイクル管理)というコンセプトは、現在も進行中のエンタープライズソフトウェアと業務プロセスの変革を通じて、製造企業が冒頭に述べたような課題に対処するために製品開発の業務手法を改革することを目的とする。PLMの定義とその適用範囲は、個々の企業の業務内容やベンダーのソリューションによって異なるが、その目指すところは基本的に同じだ。
PLM戦略の目的は、製品自体のライフサイクルにとどまらず、顧客要件の把握という最初の段階から、開発、調達、製造という“力仕事”の段階を経て、最終的に製造後のメンテナンスおよび製品寿命終了に至るまでの情報リポジトリと共通の業務プロセスを作成することにある。このいわゆる“One Version of The Truth”(唯一の真実)は、自社の製品に関する情報を記述、管理、伝達するのに極めて効果的な手段をメーカーに提供すると同時に、製品開発業務の透明性を実現する。これらの変化は長期的に、製品ライフサイクルのすべての段階にわたるイノベーションの促進、タイム・ツー・マーケットの短縮、コストの削減、全般的な品質改善といったメリットをもたらす。
米調査・分析企業のAMR Researchは、PLMを以下の5つの基本要素に分けている。
- 製品データ管理(PDM:技術データの管理とコントロールのための基本技術)
- コラボレーティブな製品設計(拡張されたバリューチェーンを通じて設計情報の共有を容易にする)
- 原材料のダイレクトソーシング(製品開発におけるサプライヤー管理という側面)
- 顧客ニーズ管理(顧客要件の把握)
- 製品ポートフォリオ管理(複数の開発プロジェクトにわたるリスクの監視・評価)
企業がPLMの一部の要素を導入する場合でも、あるいはトップダウンでPLMの取り組みを進める場合でも、製品開発に関連したリスク管理戦略を確立することが最終的な目標となる。
米コンサルティング企業のCPD AssociatesでPLM調査ディレクターを務めるケン・バースプリル氏は「PLMは、企業が製品の設計・開発・販売のビジネス的側面を把握することを可能にするものであり、この部分には遅延、コスト増、ミスといった落とし穴が数多く存在する。PLMは、適切なビジネス運営という側面と、そのビジネスの一環として技術・製造部門において優れた製品を作るという側面とを密接に連携しようとするものだ」と説明する。
PLMの導入
PLMとは何かを理解するには、それが何ではないかを理解するのが早道だ。PLM製品はここ数年で大きな進化を遂げたが、本格的なパッケージ型エンタープライズソフトウェアスイートの一部として購入・配置されるケースはまれだ。大抵のPLM導入形態は、パッケージ化されたソフトウェアコンポーネントに対するカスタマイズと連係という要素が強く、後から追加されるのが一般的だ。さらに、PLMはソフトウェアの導入というよりも業務プロセスの変更という側面が強く、その影響は技術・製品開発部門にとどまらず、マーケティング、調達、フィールドサービス、メンテナンスなど広範な部門に及ぶ。そしてこれらはPLMが社内的に関連する部分にすぎない。
PLMシステムは社外的には、企業が顧客およびサプライヤーと連携し、製品関連情報を共有する上で重要な役割を果たす。また、主要PLMプロバイダーの多くは3D CADソフトウェアの世界にルーツがあるが、PLM製品はその中核部分に必ずしも技術/設計ツールコンポーネントを必要とするわけではない。とはいえ、PLM導入の多くはこの部分から始まることが多いのも事実である。
PLMの導入に際して推奨される絶対的な出発点のようなものは存在せず、どこから手を付ければよいのか分からないという理由で多くの企業が導入をためらっているのが実情のようだ。AMRのPLM調査担当副社長、マイク・バーケット氏によると、自社の環境に適したPLMの構成要素を明確に定義し、製品開発における主要な問題点を把握することが、PLMの費用対効果を最大限に発揮できる分野に焦点を絞るのに役立つという。
しかし、まだ疑問は残る。例えば、2社のメーカーが同じ問題点を抱えていたとしても、両社がPLMの導入で同じコースをたどるとは限らない。2社のメーカーが製品をタイムリーに市場に投入するのに苦労しているという例を考えてみよう。1社はPCのOEMで、頻繁に基板デザインに多くの変更を加えているとする。しかしそのメーカーは、こういった変更を社外の製造パートナーに効果的に伝えることができないため、変更のたびに生産が中断する。この場合は、PLMの「ダイレクトソーシング」コンポーネントが問題の解決になるかもしれない。これに対し、もう1社は航空宇宙関連メーカーで、大規模な設計チームが製品の各部分で連携し、情報を共有するのが難しいために、製品の市場投入の遅れという問題を解決するのに苦労しているとする。バーケット氏によると、この場合、問題の解決に役立つのは調達モジュールではなく、PLMの「コラボレーティブ製品設計」コンポーネントだという。
「両社ともタイム・ツー・マーケットの問題を抱えているが、問題の原因に応じてPLMによって解決する方法が異なる。自社の製品ライフサイクルの全体像を把握し、そこで欠落しているものを特定すること──それが、何から始めるかという優先順位を決めるのに役立つだろう」(バーケット氏)
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