世界最大級のグローバルネットワーク事業者が提供するクラウド「CaaS」はセキュアで高スペックが特長だ。エンタープライズにおける基幹系での利用で注目されている。
本連載「企業向けシステムを構築するパブリッククラウド」では、パブリッククラウドを使った企業向けシステム構築について解説してきた。これまで4回に分けて、いわゆる「4大パブリッククラウド」であるAmazon Web Services(以下、AWS)、Force.com、Google App Engine、Windows Azureを取り上げた。当初の予定では4回で完了のはずだったのだが、非常にユニークなクラウドサービスがあり、ハイエンドのスペックを求める企業向けに有益と思わるので、急きょ第5回をお届けすることとした。
今回はベライゾン・ビジネス(Verizon Business)が提供している「CaaS」(Computing as a Service)を紹介する。毎度申し上げていることではあるが、変化の激しい分野でもあるので、記載されている情報は原稿執筆時点のものであることをご了解いただきたい。
ベライゾン・コミュニケーションズあるいはベライゾン・ビジネスという社名を聞いて「ああ、あそこね」といえる方は、実はあまり多くないのではないか。筆者も1年くらい前まではまったく存じ上げず、不明を恥じた次第である。同グループは米国No.2の通信事業者であり、その規模は日本でいうNTTグループに匹敵する。連結売上は約10兆円、従業員はワールドワイドで約22.3万人。国際海底ケーブルに膨大な投資(約7000億円といわれている)をしており、世界最大級のIP網を保有するという。当該分野では押しも押されもせぬ「超巨人」である。合従連衡が激しく、社名変更がしばしばあり、現在の「ベライゾン・コミュニケーション」という社名になったのは2000年である。それ以前はワールドコム、MCI、ベル・アトランティックと言えば思い出す方も多いだろう。同グループは「ベライゾン・テレコム」(国際音声通信)、「ベライゾン・ワイヤレス」(携帯電話)、「ベライゾン・ビジネス」(セキュリティ、ネットワーク、ITソリューション提供)から成る。今回紹介するCaaSは、ベライゾン・ビジネスのクラウドサービスである。
CaaSは、あえて分類すれば「HaaS」(Hardware as a Service)といえるだろう。本連載で既に紹介したパブリッククラウドと比較すると、AWSが最も近い。ただしCaaSは下記に述べるように「ハイエンドのエンタープライズ利用」に徹しており、AWSと比較するとサービスメニューが地味に見えてしまうのは致し方ないところだ。
CaaSで「利用」できるのは、乱暴に言うと「Computing」のリソースである。その際にはサーバリソース、OS(Red Hat Linux、SUSE Linux、Windows Server)、DBMS(MySQL、Microsoft SQL Server)の有無、Webサーバ(Apache、IIS)の有無などが選択できる。OSより上のレイヤーで、これ以外のミドルウェアなどが必要な場合には自前で調達し、インターネット経由でインストールする必要がある。
Web上のGUIで申し込めばインスタンスは5~20分で使えるようになる。利用料金は日単位でチャージされる。価格は1サーバ当たり日額約800~2500円となり、競合他社と比べれば割高である。また、CaaS上にユーザーごとに一定のエリア(仮想Farm)を確保するための基本料金が必要であり、月額約8万円となっている。
ここまで読むと「どこが魅力なのか分からない」と感じた方もおられるだろう。前段で「利用」や「Computing」というかっこ付きの言葉を使ったが、実はCaaSの真価は「Computing」の「利用」だけで語ることはできないのである。単純な「利用」の裏に隠れたスペックが、ハイエンドエンタープライズのニーズを支えている。その一端を次にご紹介しよう。
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