BI戦略の構築を始めるためのヒント──米ウェストミンスター大学の事例から戦略構築のための関係者討議による目標設定

ウェストミンスター大学がBI戦略を成功させるために取り組んでいる計画を紹介する。

2010年11月10日 08時00分 公開
[Scott Lowe,TechTarget]

 意思決定や業務運営、戦略計画策定を支援するツール、プロセス、システムを活用するビジネスインテリジェンス(BI)戦略のメリットは極めて大きい。企業のデータが、業務の生産性や効率の向上、競争環境に対する理解の深化、新たな収益向上策の発見に役立つ情報の宝庫になるからだ。

 わたしがCIOを務めるウェストミンスター大学(米国ミズーリ州フルトン)は、BI戦略構築のごく初期の段階にある。驚かれるかもしれないが、大学がBIツールを使う場合、そこには現実的な収益上の理由がある。ほとんどの私立大学は非営利だが、損失を出すことを目指しているわけではない。利用可能なあらゆるリソースを最大限に活用することが重要だ。

 大学では企業と同様に、さまざまな指標で業務が評価される。われわれの教育活動と財務上の成功の最終的な判断基準となるさまざまなKPI(重要業績評価指標)がある。われわれは最近、あらゆるレベルの業務状況を把握することの重要性に気づいた。適切なデータにより、戦術的および戦略的な意思決定を向上させるとともに、測定可能な業績目標に対する責任を個々人に持たせることができる。

 こうした観点からBI戦略への取り組みを進めるに当たり、われわれはBIガバナンスグループを設置した。このグループは、合理的と考えられる当初のスコープを維持し、ソフトウェア評価をサポートし、分野横断的なリポーティング/測定ニーズに関する情報センターの機能を果たす。われわれはBI戦略に取り組み始めてまだ間もないが、以下のような高い最終目標を掲げている。

シームレスなBIリポーティング

 1回のリポートで物事を素早く理解できることもあるが、リポートが複数回必要な場合は、その作成方法を体系的に標準化しなければならない。

共通のリポーティング

 われわれはさまざまなリポーティングツールを使っており、新しいツールを追加してほしいという要望を頻繁に受ける。こうしたツールの一貫性とアクセシビリティを確保するため、広く利用できるBIツールを確立する必要がある。

予測分析

 われわれのデータは、未来への手掛かりをもたらしてくれる情報の宝庫だ。こうしたデータのマイニングを行い、その結果を基に重要指標の傾向を把握し、適切な対応を図らなければならない。

 しかし、われわれはデータの活用に関して深刻な課題を抱えている。例えばわれわれのIT環境には、相互に独立して機能し、手動で統合されているデータサイロがある。このため、データの定義に食い違いが生じており、その結果、在学生の数といった基本的な項目のデータが複数併存してしまっている。

 われわれは先ごろ、BI委員会を立ち上げた。この委員会は、財務、IT、入学、教育・研究支援、学生生活、育成といった各業務部門からの代表者で構成されている。重要なプロセス改善に責任を持つCIOとして、わたしはこの新委員会の委員長を務めており、以下のことを計画している。

データディクショナリの作成

 われわれは、すべての指標やKPIに関する学内共通の定義のセットを必要としている。この定義セットをキャンパスデータディクショナリと呼んでいる。このデータディクショナリでは、現在、複数の指標において同じ言葉が異なる意味で使われているケース(例えば、「学生数」は、教務部門と施設部門とでは異なる意味で使われている)については、その言葉がそれぞれの指標のコンテクストで表している具体的な意味の違いが分かるように、それぞれの指標の名称と定義を定めなければならない。

これまでの取り組みの棚卸し

 既に学内のさまざまなグループが、広く戦略的に利用できる可能性がある各種データ要素を収集している。BI委員会の1つの任務は、既存の指標をすべて洗い出し、そのベースにある方法論を検証し、それらの中で、手を加えて広く利用できるものがあるかどうかを判断することだ。

新しいKPIの定義

 BI戦略への取り組みの当初段階で重点を置くKPIや指標を定義し、優先順位付けする作業に着手する。また、KPIのベースとなる方法論について合意し、検証する。

データ構造の検証

 前述のKPIの収集をサポートするのに必要な、データ構造やプロセスに不備がないかどうか確認する。例えば、キャンパス内の学生数が日ごとにどう推移するかを知りたい場合、データベースに、その推移を追跡する適切なフィールドがあるかどうか調べる。もしなければ、そのKPIを追跡するのにどのようなフィールドが必要かを検討する。こうして新しい要求が固まったら、新しいプロセスとデータ構造の実装を担当する2つの学内委員会に提出する。

データウェアハウスの定義

 傾向/時系列分析、さらには将来予測に必要な情報を格納するデータウェアハウスの定義を作成する。

KPI/ダッシュボードの共有

 われわれのBI戦略への取り組みの一部においては(特に、入学関連業務で)、既にKPIが導入されている。だが、これらのKPIはまだすべての意思決定者が容易に利用できるようにはなっておらず、われわれはこの問題を解決する。また、BI委員会は、情報を一覧できるようにする目的でわれわれが作成しようとしているダッシュボード要素の定義を進める。

 大学で働くことの大きな利点の1つは、学ぶことに力が注がれていることだ。ここでは学生だけでなく、教員や職員も学ぶ。以上に述べた正式なBI戦略への取り組みは、BIチームのメンバー全員にとって非常に新しい試みであり、われわれは皆、動きながら学んでいる。

本稿筆者のスコット・ロウ氏は、ウェストミンスター大学(米国ミズーリ州フルトン)のCIO。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

製品資料 ジオテクノロジーズ株式会社

基礎から解説:「人流データ」の特徴から活用におけるポイントまで

人の動きを可視化した「人流データ」。屋外広告の効果測定や出店計画、まちづくりや観光振興など幅広い領域で活用されている。その特徴を確認しながら、価値のある分析・活用につなげるためのポイントを解説する。

事例 アルテリックス・ジャパン合同会社

データ処理の効率化に成功、ゼンリンマーケティングソリューションズの取り組み

ゼンリンマーケティングソリューションズでは、地図情報によるデータ分析作業を効率化するため、プログラミング不要のデータ分析ツールを導入した。同社はどのような製品を採用し、課題解決につなげていったのだろう。

製品資料 株式会社primeNumber

データ駆動型ビジネスの実践に向けた仕組み作り、何から始めてどう進める?

データ駆動型ビジネスへの転換は、多くの組織にとって喫緊の課題の1つだ。しかし、データが社内に分散している状況で実現するのは難しい。この状況を解消するには、データを統合し、データの分析と活用ができる基盤の構築が必要だ。

市場調査・トレンド 株式会社primeNumber

部門のサイロ化を解消、企業全体の収益を最大化する「RevOps」を構築する方法

企業が収益を最大化させるためには、分業体制の中で各部門が目標を達成するだけではなく、相互に連携することが重要になる。そこで注目されているのがRevOps(レベニューオペレーション)という仕組みだ。その実現方法を紹介する。

製品資料 テンスピン・マネジメント・コンサルタンツ合同会社

グローバル環境でのデータ統合と業務効率化を、スモールスタートで実現するには

グローバル競争力の強化において、データ活用は不可欠である。しかし、多くの企業が「情報の分断」「手作業の処理への依存」により、効率的なデータ統合と可視化を実現できずにいる。本資料では、この課題を解決した2社の事例を紹介する。

郢晏生ホヲ郢敖€郢晢スシ郢ァ�ウ郢晢スウ郢晢ソスホヲ郢晢ソスPR

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

郢ァ�「郢ァ�ッ郢ァ�サ郢ァ�ケ郢晢スゥ郢晢スウ郢ァ�ュ郢晢スウ郢ァ�ー

2025/06/04 UPDATE

  1. 遯カ蟒」I陋サ譎擾スソ�スツ€�スツ€譏エ窶イ霎滂ス。隴∝生縲定沂荵晢ス∫ケァ蟲ィ�檎ケァ荵敖€讙主ウ。陝�スヲ郢ァ�ェ郢晢スウ郢晢スゥ郢ァ�、郢晢スウ髫ー蟶幢スコ�ァ邵イ�ス5鬩包スク
  2. AI郢晢ス「郢晢ソスホ晉クコ�ョ邵イ謔滂スュ�ヲ驗吝�ツ€髦ェ竊堤クイ譴ァ閠ウ髫イ謔カツ€髦ェ�ス驍ィ莉呻スアツ€闖エ霈披€イ鬩戊シ披鴬邵コ�ョ邵コ蜈キ�シ�ス
  3. 騾墓サ難ソスAI邵コ�ョ陜玲ィ抵スュ譁撰ス定ア「遉シ�キ�エ邵コ霈披雷郢ァ荵敖€蠕鯉ソス郢晢スュ郢晢スウ郢晏干繝ィ郢ァ�ィ郢晢スウ郢ァ�ク郢昜ケ昴>邵イ髦ェ�ス遯カ諛キ�ソ�ス�ス蛹サ縺帷ケァ�ュ郢晢スォ遯カ�ス5鬩包スク
  4. 騾カ�ク闔�蜑�スス諛�舞郢ァ蜑�スコ蝓滂スク�ャ邵コ蜷カ�狗クイ蠕後♀郢晢スシ郢ァ�ク郢ァ�ァ郢晢スウ郢晏現�ス郢晢スシ郢ァ�ケ郢晢ス「郢晢ソスホ懃ケ晢スウ郢ァ�ー邵イ髦ェ竊堤クコ�ッ
  5. 邵コ阮呻シ�クコ�セ邵コ�ァ隴夲ス・邵コ貅伉€蠕。�コ�、鬨セ螢ス繝・陜」�ア郢晁侭繝」郢ァ�ー郢晢ソス�ス郢ァ�ソ陋サ�ス譴オ邵イ�ス
  6. 邵イ蜊ヲableau邵イ髦ェ竊堤クイ鄒、lik Sense邵イ髦ェ�ス鬩戊シ費シ樒ケァ蜻茨スッ遒托スシ�スツ€ツ€闕ウ�。髯ャ�ス陷ゥ竏壺€イ邵コ�セ邵コ蜷カ竏ェ邵コ蜷ゥ�シ�シ鬨セ螢ケ笆イ邵コ�ヲ邵コ髦ェ笳�ソス�ス
  7. Tableau邵イ�ソlik Sense邵イ�」ower BI邵コ�ョ驕カ�カ陷キ蛹サ�ス�ス貅伉€ツ€邵イ蠕後Φ郢晢ソス縺堤ケ晢ソス�ス郢ァ�ソ陷ソ�ッ髫暮摩蝟ァ邵イ髦ェ�ス11陞滂スァ郢晢ソス�ス郢晢スォ
  8. 隰ォ蝣コ�ス諛按€�ァ�ス蜀暦スョ�。騾�ソスツ€�ァ鬩・蟠趣スヲ謔カ�ス郢ァ�ッ郢晢スャ郢晢スウ郢ァ�ク郢晢スウ郢ァ�ー郢晢ソス�ス郢晢スォ邵イ驛。AS Data Management邵イ�ス
  9. 遯カ諛�筏Excel遯カ譏エツァ郢ァ�ス竊醍クコ荳環€遯ェxcel�ス豈�I邵イ髦ェ�堤クコ繧�斡邵コ�ヲ鬩包スク郢ァ阮吮味隴鯉ス・驕カ荵晢ソス陝セ�・陜」�エ邵イツ€邵コ譏エ�ス霑「蜷カ�樒クコ�ィ邵コ�ッ�ス�ス
  10. AI郢ァ蜑�スス�ソ邵コ�ス竊醍ケァ闃ス�ヲ迢怜ウゥ邵コ蜉ア笳�クコ�スツ€蠕後′郢晢スウ郢晏干ホ樒ケ晄コ倥○邵コ�ィ郢ァ�ッ郢晢スゥ郢ァ�ヲ郢晏ウィ�ス鬩戊シ費シ樒クイ髦ェ竊堤クコ�ッ

BI戦略の構築を始めるためのヒント──米ウェストミンスター大学の事例から:戦略構築のための関係者討議による目標設定 - TechTargetジャパン データ分析 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

TechTarget郢ァ�ク郢晢ス」郢昜サ」ホヲ 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...