オフィスで日常的に扱う紙文書とITの橋渡しをしてくれる身近な事務機器が複合機だ。データ格納の入り口として見れば、ペーパーレスといったコスト削減手段を超える、クラウド時代も見据えた新たな活用法が見えてくる。
本連載では「中堅・中小企業のためのIT投資羅針盤」と題して、毎回特定のIT活用項目を取り上げて、中堅・中小企業がそれらへ取り組む際のポイントを解説している。連載を初めてご覧になる読者のために、あらためて「羅針盤」の意味を説明しておこう。
IT投資においては「目的」と「時期」をはっきりさせることが非常に大切である。「目的」は「何のために」と言い換えられる。これには「自社の本業に寄与するため(by ITの投資)」と「ITを安全かつ効果的に活用するため(for ITの投資)」の2つがある。一方で、「時期」とは構築期、発展期、安定期といった情報システムのライフサイクル上のどこにあるかを示すものだ。海図に例えると、「目的」は「方向」、「時期」は「位置」に相当する。この「方向」と「位置」を把握するための道具が本連載のタイトルにもなっている羅針盤というわけだ。
最終回となる今回は「複合機(MFP)」について取り上げる。
複合機とは、プリンタ、コピー、FAX、スキャナの機能を併せ持った機器のことを指す。この点についてはあえて繰り返すまでもないだろう。PBX(構内電話交換機)と同様に、企業におけるIT活用が広く普及する以前から存在していた事務機の代表格である。そうした経緯もあって、複合機の調達や管理をIT部門ではなく総務部門が担当しているケースも多々あった。だが、近年ペーパーレス化の取り組みが進むのに合わせて、複合機は紙データとITの世界との橋渡しをするようになってきた。
図1のグラフは、年商500億円未満の中堅・中小企業に対して「導入済み文書管理・ファイル管理製品/サービス」を尋ねた結果(導入社数ベースのシェア)である。リコーの「Ridoc Document Server」やOSK(大塚商会)の「eValue NS」(旧:Visual Finder)が上位に位置している。これらはいずれも、リコーや大塚商会といった複合機販売でも多くの実績を持つ大手企業によるものだ。現在の文書管理・ファイル管理の大半は、複合機でスキャンした文書データの自動登録や、複合機への詳細な印刷指定といった連携機能を備えている。下記グラフの結果が示すように、複合機は紙データをITの世界に持ち込むための玄関口のような役割を果たしているといってもいいだろう。
複合機とITとの関係が深まる中、複合機にはこれまでの印刷、複写、FAX、スキャンだけではない新たな活用方法が生まれてきている。特に注目すべきなのは「データ保存先」および「入力ツール」としての役割だ。複合機活用をIT投資の羅針盤にマッピングするに当たって、まずこの2つの新しい役割について見ていこう。
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