メジャー製品からの乗り換えも ユーザー参加型で機能進化するグループウェア「iQube」中堅・中小企業向けグループウェアSaaS探究:ソーシャルグループウェア

ソーシャル色の強い「iQube」。グループウェアSaaSであるとともに、社内外の多様なシステムとの連携を前提に開発されたプラットフォームとしての性格も持つ、「エンタープライズ2.0スイート」ともいえるサービスだ。

2010年12月03日 08時00分 公開
[富永康信,ロビンソン]

エンタープライズ2.0の要素を取り込んだ「iQube」

 ひところ頻繁に話題となったWeb 2.0。そのネット上の双方向による情報表現の仕組みや技術を、企業の情報システムにも積極的に応用しようと提唱されたエンタープライズ2.0のムーブメントは、言葉のブームが過ぎ去った現在でもその有効性が認められ、着実に浸透し続けている。その最たる例がグループウェアではないだろうか。

 ガイアックス傘下のソーシャルグループウェアが提供するSaaS(Software as a Service)型グループウェア「iQube(アイキューブ)」は、まさにエンタープライズ2.0の要素を無理なく取り込んだサービスの好例といえる。その最大の特徴は、Web 2.0の技術を取り入れた情報アクセシビリティと、直感的な操作性を重視するユーザビリティにある。

 また、業界では後発であるにもかかわらず、短期間で老舗グループウェア製品と遜色(そんしょく)ないレベルに機能向上した背景には、「リクエストフォーラム」と呼ばれる、ユーザーを巻き込んだ機能改善活動の存在がある。操作性や新機能のリクエストを常に募り、そのテーマに対してほかのユーザーが評価する/しないの意志表示を投票することで、2009年実績では毎月1.5回のペースで機能のアップデートが実行されている。そこには、iQubeの製品としての一貫性を保ちながら、ニーズの高い機能を徹底して追い求める開発姿勢がある。

 現在もカタログを印刷する間もないほどの早いペースで機能改善・拡張がなされている同製品だが、現時点での代表的な機能群を目的別に紹介しよう。

目的1:情報の共有

 これらの機能群は、業務上のドキュメントやスケジュール情報、社内外のナレッジを集約し、適切なグループ配置やアクセス権限の下で素早く共有することを目的としている。

・スケジューラ/設備予約

 グループウェアを導入する主要目的の1つとなっているスケジュール機能では、予定の種類(外出、会議、出張など)が直感的に分かるよう、色で区別するカラーチャートを導入し、Ajaxの利用で画面遷移を極力少なくしている。また、ステータスアイコンがスケジュールと連動する機能、予定の確認や登録がバルーンで確認できる機能、入力補助カレンダー、議事録作成機能、会議室の定員などを記載するメモ機能などを備える。

画像 「スケジューラ」画面。Ajaxの利用で画面遷移・クリック数を最小にして、予定の種類が直感的に理解できるようにカラーチャートを導入《クリックで拡大》

・ファイル共有

 フルAjaxによる階層型ファイル共有構造で画面遷移ゼロを実現し、ファイルにコメントやタグも付与できる。所属グループに連動したアクセス制限、ダウンロード回数での並べ替え、アップロードしたユーザーやグループでの絞り込み、ファイルへのコメントやタギング機能もある。

画像 「ファイル」の階層表示画面。フルAjaxによる階層型ファイル共有構造で画面遷移ゼロを可能にした《クリックで拡大》

・報告書

 細かな開示制限機能と編集機能を備えた汎用ドキュメント。リッチテキストエディタを装備し、仕上がり画面を確認しながら編集作業が行える。また、ユーザー単位/グループ単位で開示先を指定でき、内部ユーザーだけでの共有が可能なほか、誰でもタギングやコメントができるようになっている。

・Wiki

 グループウェアには珍しいWiki記法に対応した機能を搭載。編集画面とプレビュー画面を同時に確認しながら、メンバー間で1つのドキュメントを効率よく共同編集でき、編集履歴・投稿履歴も記録する。リンクの設定や画像の挿入も可能。資料の添付、タギングやコメント付けもできる。

・社内報(ブログポータル)

 社内の動きをブログポータルで迅速に共有するためのツール。各部署発のブログとして、社内の風通し改善に利用できる。シリーズ(テーマ)ごとに編集担当者を設置し、複数の編集担当グループを割り当て可能。シリーズ、作成日時などで絞り込みができ、誰でもコメントが付けられる。これも更新情報はホームに通知されるようになっている。

・日記・サークル

 主に、オフでの交流で利用することを目的とした機能。個人の日記を公開したり、ユーザー一覧から読みたい日記を講読したりでき、そこからグループの一形式としてサークルを設置することも可能だ。自由参加、申請承認などから参加方法を選択できる。

 そのほか、アンケート、ブックマーク、タスク管理、メッセージ配信、電話メモ、全社ニュース配信、掲示板などの機能も備える。

目的2:知恵の可視化

 ドキュメントと人との関係性を解析し、専門性や人脈ネットワーク、社内のトレンドなどを可視化する。

・メンバーリスト

 ユーザーの専門性と興味・関心分野を解析し、社内ネットワークを可視化してコンテンツとユーザーの関連性を自動計算することで、「人脈ネットワーク」を表示する。各ユーザーの行動分野の把握、管理しているグループ・所属グループへの注力度を測る。

画像 「メンバーリスト」では各ユーザーの作成したコンテンツや興味・関心の情報を自動表示する《クリックで拡大》

・パーソナライズドポータル

 さまざまなモジュールやガジェットを任意に配置することで画面を自由にカスタマイズし、必要な情報を素早く集めるための機能。管理者は特定のモジュールをユーザーに標準使用させることや、新着情報、更新情報、未読情報を管理することなどができる。

画像 「パーソナライズドポータル」画面。さまざまなモジュールやガジェットを自由に配置して画面をカスタマイズ可能《クリックで拡大》

・クロスタギング

 報告書、ファイル、Wikiなど異なるコンテンツに共通のタグ(ラベル)を付与し、タグクラウドとして表示することで自由な分類と検索が可能にする機能。よく使うタグを表示するタグレコメンド機能やフォークソノミー(利用者による分類管理)機能、タグを利用したコンテンツの横断検索も可能。

・クロストラックバック

 報告書、ファイル、ブックマーク、Wikiなど異なる種類のコンテンツを関連付け、検索・追加機能、双方向のリンク、コンテンツネットワークの形成を実現する。

・Good Job!

 良いコンテンツを発信したユーザーをほかのユーザーが称賛する機能。報告書やファイルのページにボタンを設置し、1人1回だけの公平なフィードバックでGood Job!数の多い順にコンテンツを並べ替えるなど、情報発信のモチベーションアップに利用できる。

 この“知恵の可視化”で利用できるそのほかの機能としては、クロスサーチ(横断検索)、トレンドランキング、イメージライブラリなどがある。

目的3:組織の管理

 公式の組織から横断的なプロジェクトやサークルまで、規律・統制の面にも配慮しながら多様なワークスペースの共存を実現し、グループを自由自在に設計するための機能群。従来の社内SNSやグループウェアが超えられなかった壁を克服する。

・グループシステム

 ユーザー参加方法を、「公式組織」「プロジェクト」「連携グループ」「サークル」の4種類から選択し、グループ管理者専用のダッシュボード画面からユーザー、スケジュール、コンテンツの一括管理や、グループの公開/非公開を設定できる。情報が集まるグループページでは、プロフィール画像付きユーザーリストの掲示やスケジュールのカラーチャート表示、各種コンテンツの新着情報の表示などが可能。

・ワークフロー

 グループウェアで最近人気のワークフロー。交通費清算や稟議(りんぎ)書を電子化することで、PCのWebブラウザや携帯電話からでも承認・決裁が可能になり、確認漏れや稟議書の紛失リスクが軽減し、業務の効率化を図れる。企業独自の詳細な項目設定も可能だ。

・三段階の管理画面

 「個人」「グループ」「全体」の目的に応じた3つの段階で管理する機能。すべて管理画面にダッシュボードを用意し、コンテンツの確認や編集、ユーザーやグループの編集、各種設定変更が可能となっている。

・情報アクセス制限

 閲覧権限、作成権限をユーザー、グループ、コンテンツごとに設定できる機能。

・コンテンツの監視

 パブリックな情報を管理画面から確認し、権利の乱用や目的外の利用をチェックできる機能。メッセージや日記、タスクなどは対象外とし、報告書やWikiなどの業務情報を一括管理できる。不適切なタグやコメントを監視して、ユーザーやグループでの絞り込みも可能。

・セキュリティ

 アプリケーションレベルでのセキュリティ対策を行う。セッションタイムアウト時間の設定、ブラウザ終了によるセッション切断の設定のほか、iQubeへのアクセス可能IPアドレス制限オプション、全画面SSL通信オプション、会社コードを利用した外部ユーザーの三段階認証などがある。

 そのほか、データポータビリティ機能、タイムカード機能なども用意している。

目的4:モバイル活用

 また、iQubeはNTTドコモ、ソフトバンクモバイル、auの3G携帯電話端末からも利用でき、PCとモバイルとでデータを完全に同期する。ただし、モバイル端末から利用可能な機能はPC版に比べて一部の機能に制限がある。

iQubeの月額利用価格(1ユーザーID当たり・税込み)
  1カ月契約 12カ月契約
ユーザー機能 ベーシックプラン 735円 525円
セキュリティプラン 945円 735円
ストレージ 追加10Gバイトごと 5250円(ID数にかかわらず一律)
※ベーシックプランは、ログインだけSSL通信を行い、そのほかの通信は通常のHTTPアクセスとなる。セキュリティプランは、全画面SSL通信、アクセスIP制限を含むすべての機能が利用可能。データストレージは、ベーシックプラン、セキュリティプランとも標準でユーザー数×100Mバイトが利用でき、追加10Gバイトごとに追加料金が発生する

推奨環境
項目 内容
OS Windows XP/Vista
Mac OS X
PCメモリ 1Gバイト以上
CPU インテル Core 2 Duo プロセッサー 2.4GHz以上
Webブラウザ Mozilla Firefox 2.x(for Windows、Mac OS X)
Internet Explorer 7/8
回線速度 ブロードバンド回線(xDSL、FTTH、専用回線など)
その他 一部の機能では利用に際してブラウザにAdobe Flash Playerのインストールが必要

外部連携のためのSaaSプラットフォームとしての側面

 なおiQubeでは、ほかのグループウェアが搭載しているようなWebメール機能は備えていない。その理由について、ソーシャルグループウェア 営業部の中島京亮氏は次のように説明する。

 「メール環境は企業によってさまざまにこだわりがあり、それをすべて満足するレベルで開発することは現実的ではないという判断もあった。iQubeはプラットフォームとしてほかのさまざまなシステムと連携することを前提として開発されたため、当初からWebメールの標準搭載は除外した」

 その「外部連携のためのプラットフォーム」という考え方は、既にサービスの中に実現されている。「その1つは外部の会社との連携。一般の情報共有システムと異なり、iQubeはほかの会社のユーザーを登録し、コンテンツの作成権限や閲覧権限を施した上で、会社間での情報共有や共同作業が行える」(中島氏)

画像 「iQubeはほかのさまざまなシステムとの連携を前提とするプラットフォームとして開発された」と語る中島氏

 例えば、販売パートナーとの情報共有や、共同セミナーの事務局運営、見積書や注文書の共有、共同プロジェクトでのスケジュール共有などが実現できる。「そしてもう1つは、外部サービスとの連携。エンタープライズ2.0型のSaaSプラットフォームという特性を生かして、円滑な相互認証やマッシュアップ、データ共有など外部のWebサービスとの連携を強化しているところだ」(同氏)

乗り換えの動機はこだわりの操作性とシンプルな料金体系

 iQubeの利用実績は、2010年11月現在で180社程度の企業が利用し、その規模も3〜700人とさまざまだ。新規ユーザーのほか、大手グループウェア製品からの乗り換え組も多いという。

 乗り換えてまで選ばれる理由について、中島氏は「クラウド型グループウェアにしては多機能であることや、業務を少しでも効率化させるためにこだわって設計した操作性、そしてオプションを廃止したシンプルな料金体系などが評価されているようだ」と説明する。

 今後はiQubeのAPIを公開してCRM(顧客関係管理)SFA(営業支援)などとのシステム連携を強化し、プラットフォームとしての性能を高めていくという。

 無料のフリートライアルは、申し込み日から翌月の末までの利用が可能で、最大2カ月間評価できる。全機能が使えるので、現状のグループウェアと比較して操作性をじっくり試してみるのもいいだろう。

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