教えて経理部長【第8回】
部門の反発は必至、本社費の配賦基準をどう決める
各部門から不満が出やすい本社コストの配賦基準。ERPの導入担当者はどのような心構えで配賦基準を考えていけばいいのだろうか。
質問
ERP導入プロジェクトで会計モジュールを担当しています。先日、プロジェクトで部門別損益計算書の要件について打ち合わせをしました。しかし本社費の営業部門への配賦基準に関して各部門の意見が対立し、要件を固めることができませんでした。本社費は何を基準に配賦するのが合理的なのでしょうか?
回答 ERPなどの会計系のシステムの導入にかかわるとき、配賦の問題は避けて通れない。特に、部門別損益計算書の本社費の配賦に関しては各部門の利害が対立するテーマであり、議論があるところである。
本社費を配賦しないという考え方もある
そもそも部門別損益計算書とは、各部門の業績を管理するために作成するものである。経営者が会社の最終利益に責任を負うように、各営業部門の部門長は自部門の利益に責任を負う。各部門長は目標とする売上予算を達成し、経費の発生をしっかり管理して利益を上げることで評価される。
| 部門売上高 | 800 |
|---|---|
| 部門売上原価 | 500 |
| 部門直接経費 | 100 |
| 本社費配賦前部門利益 | 200 |
| 本社費配賦額 | 150 |
| 本社費配賦後部門利益 | 50 |
一方で、本社費とは本社部門で発生する経費であり、各部門の部門長にとっては管理できない経費である。そのような管理できない経費が自部門に配賦されて部門損益計算書に計上されても、その結果として算出された利益に責任は持てないし、そのような利益で評価されるのは不本意と考える部門長もいるであろう。左に記した単純化した部門損益計算書の例でいうと、あくまで部門長が責任を負うのは本社費配賦前部門利益であり、それこそが、部門の業績であるという考え方である。この考え方を背景に本社費を各部門には配賦しないという会社もある。
本社費を配賦する意味は?
しかし、会社には本社機能が必要であり、本社費は必ず発生する。上記の部門損益計算書の例でいうと、営業部門が本社費150を負担した上で本社費配賦後部門利益を上げることによって、会社として初めて利益を上げることができるのである。
経営者としては、各部門長には経営者と同じ目線で会社全体を考えて業務に当たってほしいという思いがある。そういった経営者の観点からいうと、本社費を負担した上で利益を出してこそ、部門長の責任を果たしたことになる。
本社費の配賦は、このような業績管理における政策的な意味がある。単に各部門が本社部門のサービス提供を受けているから配賦するというばかりではないのである。
シンプルな配賦基準が一番
全員の納得を得るために本社部門から受けるサービスの程度を正確に反映しようとして複雑で分かりづらい配賦基準を使用するのは得策ではない。どのような配賦基準を採用しても結局不満は出るのである。
上記のように本社費は本来的には政策的な意図をもって配賦されるのであるから、トップマネジメントの意思が反映されていて、その意思が伝わりやすいシンプルな配賦基準を継続的に適用する方が合理的ではないだろうか。
例えば経営者が各部門の在庫金額や債権金額などの営業資産を圧縮したいと考えているなら、各部門の営業資産残高を本社費の配賦基準とする。または、経営者が人員を増やさずスリムな経営を目指しているなら、人員数や人件費を本社費の配賦基準にするといった方法だ。これにより各部門で営業資産や人件数を適正に管理するインセンティブが働くことになる。
ERP担当者としては、会計モジュールの配賦機能の仕様や設定方法を熟知していることはもちろんだが、配賦の考え方をよく理解して、自社の経営方針やERP導入目的に合致した配賦基準を提案し、プロジェクトを前に進める役割を積極的に担ってほしい。
五島伸二(ごしましんじ)
アドバ・コンサルティング株式会社 代表取締役 公認会計士・ITストラテジスト
監査法人トーマツにて会計監査、IPO支援、マネジメントコンサルティングに従事。トーマツ退所後は多数のシステム開発プロジェクトやERP導入プロジェクトに参画し基幹システム構築を行う。その後、上場会社の経理部長を経て、2010年3月にアドバ・コンサルティング株式会社を設立。それまでの経験を生かし、会計とITの専門家としてシステム開発や業務改善コンサルティングに取り組んでいる。
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