【コスト分析】ERP初期導入時の標準的なコスト割合とは?52製品のライセンス、ハード、サービスを調査

ERPの導入コストを構成するライセンス、ハードウェア、サービス。市場に出回っているERPではこの割合はどうなっているのか。標準的な割合を知ることでERPを導入する際の参考にできる。

2012年09月20日 08時00分 公開
[浅利浩一,アイ・ティ・アール]

 何となく「高い」というイメージがあるERP。しかし、そのコストを詳細に把握している人は少ない。本企画では国内ERP市場における主要製品について、初期導入時の標準的なコストモデルの分析を行い、その特徴を述べる。コストモデルは、大企業向け、中堅・中小企業向けなど、企業規模などに応じて、幾つかのシナリオで設定する。標準的なコストモデルを活用すれば、ERPの企画、導入、構築の各工程でプロジェクトを計画的に進めることができる。

ERPパッケージのコストモデルの考え方

 ERPパッケージについての問い合わせで最も多いのは、市場性(シェアや導入実績)、機能(特徴や適合性)、導入事例、導入コスト(初期導入費用、保守費用)である。特に、導入費用についての関心は高く、自社で初期導入する場合にどれくらいの費用を見込む必要があるかを確認したいとの要望が非常に多い。パッケージの導入費用は、アプリケーション、ミドルウェア、データ分析などの用途によっても異なり、それぞれの製品のライセンス体系、機能要件/非機能要件などで異なってくる。特にアプリケーションパッケージは機能要件の適合度によりコスト変動が大きい製品である。そのため、正確な導入費用については、ベンダーに対してRFP(提案依頼書)を発行して提案・見積もりを取得する必要があることは言うまでもないが、その妥当性を評価するのも簡単ではない。

 また、詳細要件をミクロに分析して積み上げたコストモデルを検討することは、実際のパッケージ導入の前に、さらに事前導入を実施するのに近い時間と労力が必要となり、現実的には不可能といってよい。また、仮にそのようなミクロのアプローチが実施できたとしても、さまざまな機能要件/非機能要件が多数の変動要因となり、調整が困難であることは容易に想像できる。このようなミクロ方向での検討が難しい場合は、逆にマクロなコストモデルで概要レベルの検討をする方が、個々の詳細な要件を積み上げる際のブレを大枠で吸収でき、実際の導入費用に近いコストを把握できることもある。今回はこのアプローチでERPパッケージのコストモデルについて考察してみることにする。

初期導入時の標準的モデルについて

 アイ・ティ・アール(ITR)では、国内で市場性のあるさまざまな分野のパッケージやサービスについて「ITR Market View」で継続的に調査しており、どの分野の製品でも標準的なコストモデルを、「初期導入時の平均モデル」としてベンダープロファイルの資料に含めている。ERPパッケージを対象にしている最新の「ITR Market View:ERP市場2012」から、その調査内容例を確認してみる(表1)。

導入コスト 約2000万円が比較的多い
導入規模 50ユーザーが比較的多い
導入期間 1〜6カ月程度

コスト内訳 金額(単位:百万円) 構成比
ライセンス 7.0 35.0%
ハードウェア 2.0 10.0%
サービス 11.0 55.0%
合計 20.0 100.0%
表1.初期導入時の平均モデル(特定製品の記載例、出典:ITR「ITR Market View:ERP市場2012」)

 表1の上の表が文章での定性記述で、下の表が、ライセンス、ハードウェア、サービス(導入費用、コンサルティング費用、カスタマイズ費用、追加開発費用など)の割合だ。この割合はあくまで当該製品を導入する場合の最も標準的なモデル。同調査リポートでは全調査対象製品のうち、52のパッケージについてベンダーから回答を得ており、今回はこれらの52製品についてコストモデルを分析する。なお、SaaSについては、ライセンス、ハードウェア、サービスの合算がサービス費用となっているので、これら52製品には含めていない。同様に、SAP ERP、Oracleなどの大企業向け海外製品などは、コストモデルを公表しない方針のため対象外としている。このような製品については、ITRがこれまで実施してきたパッケージ選定などの実例をベースに、次回でモデルを提示する。

平均的導入費用の分析結果

 始めに全52製品のコスト内訳を集計した結果を確認してみる(表2)。

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