クラウドベースのアーカイビングで気を付けるべき8つの要素クラウドベースのアーカイビング導入検討のポイント【前編】

クラウドベースのアーカイビングを導入・運用する上で、サービスレベル管理は極めて重要な要素だ。クラウドアーカイビングベンダーの選定に当たって検討すべきサービスレベルについて解説する。

2012年09月26日 08時00分 公開
[Phil Goodwin,TechTarget]

 アーカイビングはコンピュータの歴史の初期には、データをテープに移し遠隔施設で長期間保存することを意味した。だが、今ではその手法は大きく変わってきている。電子メールメッセージの自動アーカイビングのような簡単なものから、オフサイト保管施設での物理的なテープの搬入、搬出を伴う従来型の厄介なものまで、多種多様なアーカイビングオプションが利用できるようになっている。

 中でもクラウドアーカイビングは、特に魅力的なオプションだ。オンサイトのアーカイビングインフラを構築する場合と比べてわずかなコストで、アクセス性とデータ保存機能を享受できるからだ。本稿では、コストパフォーマンス、クラウドアーカイビングのメリット/デメリット、サービスレベル、アクセス性、ディザスタリカバリのオプション、コンプライアンスなど、クラウドベースのアーカイビングを評価する際に検討すべき重要な要素について解説する。

 「アーカイブ」という言葉は、データを非常に長期にわたって保存することを示すが、保存期間は業種によって異なる。例えば、ほとんどの財務データは7年間保存する必要があるが、新薬研究データは20年間の保存が必要なことがあり、一部の医療記録や原子力関連の記録は50年間保存しなければならない。一般的に、HDDや(アイドル時に回転が停止する)スピンダウンディスクにデータを10年間以上保持すると、非常に高額なコストが掛かる。また、今から10年後にどのようなアーカイビング技術が利用できるかを予測するのは困難だ。そこで本稿では、クラウドアーカイビングにおける「長期」は、1~7年を指すものとする。

コストパフォーマンス

 クラウドベースのアーカイビングは、コストとアクセス性の最適なバランスを実現できる可能性がある。テープは、データを長年保存するための断然安上がりな方法だったし、今もそうだ。1Tバイト程度の容量を持つ一般的なLTOテープは約35ドルで、オフサイト施設でのテープ保管コストは1本当たり月額25セント程度だ。一番安いクラウドディスクでも、このコストの安さには太刀打ちできない。その半面、テープの場合、アーカイブからデータを取り出そうとすると、通常、依頼した翌営業日にテープが手元に届き、それをマウントしてデータをリストアする時間もかかる。つまり、ユーザーは、必要な情報にアクセスするまでに、約1営業日待たなければならない。

 これに対し、クラウドストレージの料金は、10Gバイト当たり月額10セント程度からの従量課金制だ。使用容量が数百Tバイトになると料金もかさむが、それでも大抵の場合、ストレージアレイを自前で調達し、中央データセンターに配備し、管理するよりも安上がりだ。また、テープからデータを取り出すのは1~数日がかりだが、クラウドベースのストレージ上のデータには数秒でアクセスできる。一部のアプリケーションでは、こうしたコストとパフォーマンスのバランスは理想的なものかもしれない。

クラウドのメリットとデメリット

会員登録(無料)が必要です

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

事例 ファインディ株式会社

アジャイル開発成功事例集:セゾンテクノロジー/ダイキン工業/朝日新聞

アジャイル開発を推進する上で欠かせないのが、開発プロセスやレビュープロセス、パフォーマンスなどを可視化することだ。セゾンテクノロジーやダイキン工業、朝日新聞といった3社の事例を基に、それらを実現する方法を探る。

市場調査・トレンド フリー株式会社

「情シスのSaaS利用実態」調査レポート

SaaSを導入する企業が急速に増えている。経営者と情報システム担当者1019人を対象にした調査によると、約9割の企業が2年前よりもSaaSの利用を増やしたという。このような中で、新たな課題も顕在化している。その内容を見ていこう。

製品資料 Notion Labs Japan合同会社

情報の安全な活用と共有に、AI+統合ワークスペースが果たす役割とは

「ビジネス+学び」をテーマにした映像コンテンツ制作、配信を事業の中核とするPIVOT。同社では情報基盤として活用してきたツールのセキュリティ強化とともに、AI機能の導入によって、業務の質と速度の向上を実現した。

製品資料 発注ナビ株式会社

SaaS導入の失敗を回避、適切な選定を支援するマッチングサービスとは?

ある調査によると、67.4%の企業が「SaaS製品の導入に失敗した経験がある」と回答しているという。そんな中、適切な選定・導入を支援するマッチングサービスが注目を集めている。本資料では、サービスの特徴や運用の流れを紹介する。

技術文書・技術解説 Datadog Japan合同会社

AWS、GCP、Azureなどクラウドネイティブ環境における5つのセキュリティ強化策

Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud Platform(GCP)、Microsoft Azureなどクラウドネイティブ環境のセキュリティを強化するには何をすればよいのか。ログの収集や分析を高度化するためのベストプラクティスを解説する。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...