クラウド導入でもコストが下がらないユーザーに共通する“管理職の誤解”運用担当者のスキル不足が招くコスト高

自社のシステムをクラウドに移行しても、コストが安くならないばかりか高くなるケースがある。その原因として挙げられるのがIT管理者のスキル不足だ。クラウドで高額請求されないために心得ておくべきこととは?

2013年09月24日 08時00分 公開
[Beth Pariseau,TechTarget]

 事業者間で料金値下げ競争の始まっているクラウドコンピューティングだが、クラウドの費用は思わぬところにも発生する。クラウドの利用料金が高額になる要因として最も多くみられるのは、システム運用担当者の経験不足かもしれない。

 問題の一部は、CIOを含めた管理職が、ITスタッフはクラウドにも容易に対応できるスキルを持っていると思いがちな点にある。クラウドのコンサルタントは、この思い込みが高額請求という結果を招くことがあると警告している。

 「仮想化のスキルがパブリッククラウドプライベートクラウドにも当てはまるかどうかの保証はないのに、楽観的に考える管理職が多いのではないか」と、米ITコンサルティング会社Cascadeoの共同創設者の1人、ジャレッド・レイマー氏は語る。

 「サーバ仮想化とクラウドとの間には確かに関連はあるが、必要なスキルセット、費用の発生する構造、運用のパターンは互いに異なる」とレイマー氏は解説する。それでも、この2つを明確に区別している企業は多くない。

 「両者の違いを説明しても、違いを認めようとしない人がいる。そんな人は大体『違うと言ってもかなり似ている。担当者は頭がよくて飲み込みの早い人だから、すぐに覚える』と言うが、その見方は間違いだ」とレイマー氏は指摘した。その一方で、モニタリングに使うソフトウェアや研修を実施するスタッフなど、必要なツールをそろえる費用については、手遅れになるまで関係者が気付かない例は多い。

 サーバ仮想化の経験をクラウドでも活用できると考える人がいるが、サイジングを見誤ったり(通常はオーバープロビジョニングになる)、システム構成が最適なものではなくなったり、果てはシステムの再構築プロセスの間にインスタンスを失うことすらある。これらは全て、巨額の請求につながる事態である。

 「実験やプロトタイプ作成のためにインスタンスを構成したのに、後でそれを忘れて作りっぱなしで放置するというのはよくあるミスだ」とレイマー氏は語る。「そして半年後、請求書を見て『一体どうことだ』と誰かが叫び、全く使われていないものに、月額料金500ドルを半年分も支払う羽目になる」

 「初めてクラウドを利用する顧客の場合、既存の仮想環境を『そのまま移行』するところから始めようとする例が多いが、これが間違いの元だ」と話すのは、クラウドのコンサルテ―ションとシステムインテグレーションを手掛ける米2nd WatchのCEO、クリス・ブリズナー氏だ。

 「そんな企業は、アーキテクチャの一部を再構築すれば、クラウドの利用効率がぐっと上がることに気付かない」と同氏は指摘する。「ある程度の恩恵を受けるためには、アーキテクチャの再構築とアプリケーションのリファクタリングは本当に必要だ」

 例えば、クラウドを初めて利用する顧客はほとんど、自動スケーリンググループやCDN(コンテンツ配信ネットワーク)サービスについて、存在すら認識していない。実際には、これらの機能を提供しているクラウドプロバイダーは、米Amazon Web Services(AWS)や米Rackspaceなど数社ある。

 「このような機能を利用する場合は、料金のモニタリングにもそれなりの方法がある」と、米ITサービス企業Reed Elsevier Technology Servicesのアーキテクト、マット・リピンスキー氏が教えてくれた。

 クラウド環境上で、プロビジョニングしたサーバインスタンスからCDNへトラフィックをオフロードすると、クラウドの利用料金をかなり抑えることもできる。

 「CDNへのオフロードは最大限に活用している」と、Fortune 100に入る大規模企業のエンジニアリング部門の責任者が、匿名を条件に明かしてくれた。「ソリューションの構成によっては、意外なところで費用が発生するものだが、オフロードはコスト削減効果が高い」

 結局のところ、企業はクラウドへの投資効果を最大限に得るために必要な、IT部門のスタッフの人件費とクラウドの専門知識を高める費用との間のバランスを取らなければならない。このエンジニアリング部門の責任者によると、クラウドに求められる専門性やスキルに投資することなど価値がないと考える人もいるという。

 「作業を全て引き受けていて、何人も雇わないと業務が回らない。これも業務運営に伴って発生する費用で、クラウドの利用料金とはまた別だ」と同氏は話す。「こうした業務経費は安くない。だから抑えたいと考える会社もあるだろう」

ITmedia マーケティング新着記事

news112.jpg

「インクルーシブマーケティング」実践のポイントは? ネオマーケティングが支援サービスを提供
ネオマーケティングは、インクルーシブマーケティングの実践に向けたサービスを開始した...

news135.jpg

Xが新規アカウントに課金するとユーザーはどれほど影響を受ける? そしてそれは本当にbot対策になるのか?
Xが新規利用者を対象に、課金制を導入する方針を表明した。botの排除が目的だというが、...

news095.jpg

Googleの次世代AIモデル「Gemini 1.5」を統合 コカ・コーラやロレアルにも信頼される「WPP Open」とは?
世界最大級の広告会社であるWPPはGoogle Cloudと協業を開始した。キャンペーンの最適化、...