2015年3月に米Googleが発表した新しいクラウドストレージサービスは、AWSの同種サービスを完全に意識している。これにより、両者は新しい領域での戦いを始めることになった。
米Googleの新しいクラウドストレージサービス「Google Cloud Storage Nearline」が米Amazon Web Services(AWS)の「Amazon Glacier」を追っている。Glacierでは数時間かかる復旧時間を数秒に短縮すると宣言した。
Amazon Glacierと同様に、Google Cloud Storage Nearlineは、1Gバイト当たり月間1セントという料金でデータを保存できる。Nearlineは「near online(オンラインに近い)」に由来し、オフラインのコールドストレージサービスとほぼ同等の価格で比較的高速にアクセスできるストレージサービスだ。違いはAmazon Glacierからのデータ復旧には数時間かかるのに対し、Googleが数秒での復旧をうたっている点だ。
Google Cloud Storage Nearlineは2015年3月にβ版の提供が開始された。Googleによれば、この低コストアーカイブクラウドでは顧客が3秒でデータを引き出せるという。対するAmazon Glacierでは、復旧に3〜5時間かかるのが最大の欠点だった。
Google Cloud Storage NearlineもAmazon Glacierも、数Tバイトのデータを生成し、それを低コストで保存したい企業のために設計されている。この種のコールドデータはまれにしか引き出されることがなく、多くの企業は一般的にテープに保存している。GoogleのNearlineサービスはそのデータ取得時間の短さから、ディザスタリカバリのための有効な選択肢となる。
Googleのブログによると「ニアラインストレージは、ストレージコストの引き下げと引き換えに可用性がやや低くなり、通常はわずか数秒だがレイテンシがやや高くなることを容認できる状況に適している」という。
AWSは2012年8月、アクセス頻度は低いものの長期間保存する必要があるデータのアーカイブのための低コストサービスとしてGlacierを提供開始した。この点が、リアルタイムのアクセスを要するデータ向けの「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)と異なる。
Google Nearline、Amazon Glacierとも同様に料金は抑えている。Glacierの登場から2年半遅れてニアラインストレージに参入したGoogleは、出遅れた時間を優れたレスポンス時間で挽回しようとしている。Amazonが対抗してGlacierからの取得時間を短縮するかどうかが注目される。
米調査会社Taneja Groupの上級アナリスト、マイク・マチェット氏は「競争上、取得時間の差は大きい。(Google Cloud Storage Nearlineは)Glacierを真っ向から狙い撃った。Amazonはすぐにも手を打つ必要がある」と指摘する。
GoogleとAmazonのデータ取得時間の違いは、それぞれがこうしたコールドストレージサービスのためにどのような種類のストレージを使っているのかという疑問を生じさせる。
Googleのブログによれば、顧客は「ニアラインストレージとして保存するTバイトのデータ当たり毎秒4Mバイトのスループットが期待できる。このスループットは、ストレージ消費の増大に伴い直線的に上昇する。例えば3Tバイトでは12Mバイトのスループットが保証され、100Tバイトのデータを保存すればユーザーには400Mバイトのスループットが提供される」
だが「問題はどうやってそれを実現しているかだ」とマチェット氏。「AmazonとGoogleの中身がどうなっているのかについて、誰にも確かなことは分からない。恐らく独自のアーキテクチャを構築しているのだろう。ある程度の想像はできる。Glacierは見掛けも動作もテープのように、安く保存できるが復旧は高くつく。Googleの動作は分散型オブジェクトストアのようだ」と同氏は見る。
Googleはまた、ニアラインサービスについても同社の他のクラスのストレージと同じストレージAPIを維持しているとマチェット氏は解説する。一方、Amazon Glacierでは違うAPIが必要になり、従って、どのストレージを使うかによってアプリケーションを調整しなければならない。
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