【連載コラム】医療ITの現場から
中小規模病院や診療所で電子カルテがそれほど普及しない理由
中小規模病院と既存の診療所における電子カルテ普及率は3割程度にとどまっている。なぜ普及が遅れているのか。その理由を考察する。
医療のIT化は新たなステージを迎えようとしています。大規模な病院では電子カルテやオーダーリングシステムの導入が一般的となり、新規開業する多くのクリニックが電子カルテを導入する時代となっています。また、政府は2025年までに地域包括ケアシステムを構築するという目標に向けて、補助金や診療報酬改定を活用して医療と介護の情報共有を後押ししようとしています。そのような中で、電子カルテは「情報を入出力するシステム」として重要な役割を担います。
一方、中小規模病院と既存の診療所における電子カルテの普及率は2割から3割程度にとどまっています。なぜ中小規模病院と既存の診療所の電子カルテの普及が遅れているのでしょうか。今回はその理由を考察します。
併せて読みたいお薦め記事
電子カルテに関する記事
電子カルテの普及率に関する記事
中小規模病院、診療所で電子カルテが普及していない理由
電子カルテシステムは、診療行為(カルテ)と診療報酬(レセプト)をひも付けるシステムです。紙カルテとレセプトコンピュータ(レセコン)を併用している場合、事務員が紙カルテの内容を確認し点数を計算し、診療報酬に置き換えるのが一般的です。電子カルテを導入すると、こうした作業を自動化できます。電子カルテの導入効果の1つだといえます。
しかし、レセコンから電子カルテに入れ替えるだけでは、事務員の作業を医師に振り替えたに過ぎません。その結果、医師の負担が増えることもあります。医師が電子カルテの導入に積極的でない理由の1つだと考えられます。自分の負担を増やすシステムに投資しようとは考えにくいからです。
電子カルテの導入をためらっている中小規模病院や既存の診療所の共通点は「電子カルテは費用対効果が見いだせない」という点にあると考えられます。大規模病院では電子カルテの導入に対する補助金が出るなど、電子カルテの導入に当たり大きな支援がありました。また、DPC(Diagnosis Procedure Combination:診断群分類別包括評価)へのシフトに伴うデータ管理の必要性も影響しているでしょう。
大規模病院で電子カルテを操作することが当たり前の環境で育った勤務医の場合、開業時に電子カルテを導入することは当然だと考えているでしょう。対して、中小規模病院と既存の診療所ではそういう発想に至ることが少ないようです。
医師の負担を緩和することが電子カルテの導入を促進する
中小規模病院と既存の診療所が電子カルテを導入するためには、医師の負担を緩和する仕組みが必要です。この仕組みを構築することで電子カルテの導入がスムーズになるでしょう。ここからは中小規模病院と既存の診療所における医師の負担軽減のポイントを紹介します。
1. 問診票を選択式に変更し活用する
問診票を記述式から選択式に変更することで、受け付けでの質問内容の質が高まります。その回答結果は、初診時の主訴の情報源にもなります。特に生活習慣などを毎回確認している内科などでは大変有効です。
2. 看護師や助手に協力してもらう
電子カルテの導入により、カルテの整理業務がなくなる看護師や助手には、新たに再診時の予診やカルテ記載の充実に取り組んでもらえます。この取り組みは再診時の主訴を充実させることにつながることもあります。
3. 受付スタッフを診療室に配置転換する
電子カルテの導入によりレセコン入力がなくなる受け付けスタッフは、受け付けや会計を担う最小限の人員を残して、診療室に配置転換することができます。診療室では、医師の指示の下、電子カルテの操作を担当してもらうことも可能です。日ごろから手書きのカルテの内容を読み取っている受け付けスタッフならば、医師の指示を電子カルテに入力するのはそれほど問題にはならないでしょう。カルテの記載のみならず、コストの取り漏れ防止にも有効だといえます。
電子カルテは「医師だけのものではなく、全スタッフで手分けして取り組むもの」という意識改革が、その導入をスムーズに進めることになります。全スタッフが一致団結して取り組むことをお勧めします。
著者紹介
大西大輔(おおにし だいすけ) メディキャスト株式会社 メディプラザ統括マネージャー
2001年一橋大学大学院MBAコース卒業後、同年日本経営入社。2002年に医療機関の“選ぶ”を支援する展示場「メディプラザ」の1号店を東京(神田)に立ち上げ、その後2003年にメディプラザ大阪、2005年にメディプラザ福岡を順次開設。2007年より東京・大阪・福岡の3拠点を統括する統括マネージャーに就任。専門の医療IT分野については、医師会、保険医協会などの公的団体を中心にセミナー講師を多数実施。
【関連サイト】
電子カルテ活用のためのショールーム「メディプラザ」
医師の右腕を育成する「電子カルテ+クラーク養成講座」
医院・クリニックのオフィシャルホームページ制作システム「Wevery!」
メディプラザ特設ブース「地域包括ケアで活用できるシステム」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
【連載コラム】医療ITの現場から
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[LRM株式会社] 「標的型攻撃メール」事例・サンプル集 -
製品資料
[LRM株式会社] セキュリティ教育はなぜ「年間計画」を立てる必要があるのか? -
製品資料
[LRM株式会社] セキュリティの重要性が伝わらない…… 効果がない社員教育から脱却する方法 -
製品資料
[LRM株式会社] 「標的型攻撃メール訓練」導入ガイド 社員の意識を確実に高める仕組みの作り方 -
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
3
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
4
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
5
エンジニアが選考を辞退する本当の理由 7割が隠す“面接の違和感”とは
-
6
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
7
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
8
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
9
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
-
10
GitHubが指摘 AIが書いた「おそらく動くコード」が招くシステム崩壊
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー