規制すべきは道具か、人か、使い方か
ランサムウェアをきっかけにビットコイン規制を検討する米議会の“誤解”(1/2 ページ)
閲覧者の多いポータルサイトを利用したランサムウェア(身代金要求型不正プログラム)攻撃の横行を重く見た米議会は、仮想通貨と「ブロックチェーン」技術のセキュリティ対策について検討を行った。
ポータルサイト「AOL」や「MSN」、英国放送協会(BBC)や「New York Times」といった、世界的に人気が高く利用者も多いWebサイトが、オンライン広告を通じてユーザーをランサムウェア(身代金要求型不正プログラム)の危険にさらしていたことを、2016年3月、セキュリティ研究者が公表した。残念ながら、こうした事態が起きたのは初めてではない。実際のところ、ランサムウェアの問題は増加している。そこで米政府はサイバー犯罪に絡むデジタル通貨に目を向けた。
被害者をだましてランサムウェアなどのマルウェアをインストールさせる悪質広告は、最近では「Forbes」や「Yahoo」にも掲載された。サイバーセキュリティ企のRiskIQの報告によれば、2015年6月の悪質広告の件数は、前年同月から60%増加している。特にランサムウェアは急増傾向にあり、McAfee Labsの2015年8月のセキュリティ動向報告書によると、2015年4~6月期のこの種のサイバー脅迫は、前年同期比で58%増加した。
併せて読みたいお勧め記事
ビットコイン技術の関連記事
ランサムウェア(身代金要求型不正プログラム)について
ランサムウェアを使うサイバー犯罪集団は、被害者のデータを暗号化して、解読のための鍵と引き換えにビットコインで身代金を要求する。横行するランサムウェアの問題は、サイバー通貨のビットコインやその基盤となる技術に対する規制の欠如と相まって、米議員の関心を集めるようになった。
ビットコインなどのデジタル通貨を支える分散型台帳技術の「ブロックチェーン」は8年前から使われている。だが同技術の有望性と潜在的破壊性は、特に金融および法務分野においては、最近になって米議会で認識されたばかりで、デービッド・シュワイカート下院議員(共和党、アリゾナ州出身)などが同僚議員らに対する啓発を呼び掛けている。
だが米議会でのブロックチェーンに対する認識の欠如や、サイバー犯罪やテロにおけるビットコインの役割のため、現時点で他の議員はブロックチェーンの有効活用よりも、セキュリティ問題や同技術に関連したリスクの方に注目している。2016年3月15日に開かれた米下院商務製造貿易小委員会で委員らは、ブロックチェーンがサイバー犯罪者による資金移転の手段として利用され、司法当局による追跡が難しくなるとの懸念を示した。
小委員会議長のマイケル・バーグレス氏は、「ビットコインの入ったかばんを埠頭(ふとう)に持って行って船の底に隠すのとはわけが違う」と話す。小委員会ではさまざまな方面のブロックチェーン専門家が証言に立ち、バーグレス氏は「なぜデジタルの痕跡をたどることができないのか。法執行の立場から小委員会に向けて説明してもらいたい」と問い掛けた。
証言を行ったデジタル通貨研究専門の公共政策団体Coin Centerのエグゼクティブディレクター、ジェリー・ブリトー氏は、ランサムウェアの問題が深刻化したのは、ビットコインの他、暗号技術とデータ流出に原因があると認めた。
しかし同氏も他の専門家も、暗号技術や暗号通貨やブロックチェーンは悪用されている半面、重要な利点もあると強調した。例えば暗号技術はセンシティブな金融データの安全を守る役に立つ。ブロックチェーンのアーキテクチャは仮想通貨にとどまらず、土地の権利書や出生証明、販売契約といった幅広い資産に応用できる。
「ブロックチェーンを単なる匿名性だけでなく、許可に関連付けて考えると魅力がある」と話すのは、IBMのブロックチェーン技術担当副社長、ジェナロ・クオモ氏だ。同氏の国際資金調達部門ではブロックチェーンで取引を行っているといい、「例えば自動車の車両識別番号(VIN)を交換する2者に一定レベルの許可を与えるとする。一方は自動車メーカーで、もう一方は自動車ディーラーかもしれない。自分の目には、自分の取引にかかわる車しか見えない。しかし車両管理局が自動車クラブの立ち入りを行う場合、そのブロックチェーンネットワークの監査人として、幅広い許可が与えられる」と説明する。
問題はビットコインやブロックチェーンにあるのではなく、これはどちらかというとサイバーセキュリティの問題だと専門家は述べ、ブリトー氏は「ランサムウェアの第3の要素、すなわち不正侵入、ハッキング、サイバーセキュリティ対策の欠如こそが、真に懸念される」と指摘した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソミック石川に学ぶ、ICT浸透後に直面した「工数管理」の課題と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
2
IBM iは生かすもの 捨てすぎない「脱レガシーシステム」が注目される理由
-
3
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
4
膨らむAIコストに歯止め GitHubのマルチモデルルーターは何が違うのか
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
7
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
8
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
9
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
10
エンジニアが選考を辞退する本当の理由 7割が隠す“面接の違和感”とは
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
10
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー