「モバイルシンクライアント」の可能性
iPhoneやAndroidスマホの“重過ぎて動かないアプリ”を動かす方法とは?
スマートフォンとクラウドの組み合わせで、相互のメリットを引き出す。その具体的な手段として重要性が高まりつつあるのが「モバイルシンクライアント」だ。
Appleの「iOS」やGoogleの「Android」といったモバイルOSを搭載する今日のスマートフォンは、プロセッサやメモリ、ローカルストレージ、外部接続インタフェース、OS、アプリケーションを搭載した“小さなコンピュータ”だ。
マイクロプロセッサは数十年という歳月を経て価格が安くなり、処理速度やバッテリー効率が向上し、包括的な機能を備えるように進化してきた。RAMやフラッシュメモリベースのストレージ、ディスプレイなど、その他の要素も同様に進化している。小さなコンピュータというスマートフォンのモデルは、コンピュータ全体の歴史から見て自然な歩みだろう。
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コンピュータとデータの“主従”が逆転
モバイルOSとアプリケーションの進化で、コンピュータの見た目は大きく変わり、本体価格は劇的に安くなり、処理性能も向上した。こうしたコンピュータの進化に合わせて進んできたのが、コンピュータとデータの価値の逆転だ。
長い間、コンピュータは驚くほど高価だった。私が学部生だった1973年に初めて使用したコンピュータは、700万ドルのIBMのメインフレーム「IBM System/360 Model 67」だった。これは1室を占めるほどの大きさにもかかわらず、恐らく現在のスマートフォンの0.001%ほどの計算能力しかなかった。その上、操作可能なデータの対象や規模はかなり限られていた。洗濯機くらいのサイズの巨大なディスクドライブが保持できるデータは、たったの30MBだった。コンピュータは高価だが、そこで扱えるデータはわずかだったのだ。
今日ではコンピュータの本体価格が安くなり、一方でデータの重要性は増した。IT部門の使命は「コンピュータ部門」から「ネットワーク部門」、そして「情報の管理者」へと変化してきた。
コンピュータとデータの価値の逆転は、従来のクライアント/サーバモデルからクラウドコンピューティングへの進化を後押ししてきた。私たちはローカルディスクの共有と同期の負担からようやく解放されるようになったのだ。
現在では認証されたデバイスであれば、無線接続経由でいつでもどこでも、あらゆるデータやオンラインサービスへアクセスできるようになった。サービス事業者によってデータやサービスが管理され、セキュリティ対策が施され、バックアップされる時代にたどり着いた。便利でコスト効率が良く、スケーラブルで、単純なモデルだ。
こうした中、ここにきて注目を集めるようになってきたのが、スマートフォンをはじめとするモバイルデバイスをシンクライアントデバイスとして活用する「モバイルシンクライアント」という考え方だ。
“小さなコンピュータ”であるスマートフォンの処理能力は、昔のメインフレームと比べればはるかに進化しているものの、クライアントPCやサーバと比べると限られている。実際、今日の多くのアプリは、1台のスマートフォンでは処理できないレベルの処理能力とストレージを必要とする。個別のデバイスではなくデータセンターでアプリやデータを処理するクラウドは、スマートフォンにとって便利な手段だといえる。モバイルシンクライアントは、スマートフォンのデメリットを補いつつ、クラウドのメリットを生かす仕組みだといえる。
「モバイルシンクライアントにはネットワーク接続が必要だ」という反論もある。ただし一部のローカル処理には、この反論は当てはまらない。例えば一部の個人向けの生産性向上アプリやゲームアプリは、ネットワーク接続がなくても問題なく使用できる。
組織に所属している場合、オフラインであることは“かやの外”にいるも同然だ。ネットワークと最新のデータにアクセスできなければ、生産性も上がらない。ただし幸いにも、LTE(Long Term Evolution)回線や無線LANは、会社や家、飛行機の中、スタジアムといったあらゆる場所で利用できる。
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