人類と地球環境の調和を目指す
“スマートなビル”と1つの「アイ」(IoT)が地球を救う
建物はそこで過ごす人間の作業効率に影響するだけでなく、地球環境に対しても大きな負荷を掛けている。建物の進化は人間にも地球環境にも好ましい結果をもたらす。そのために必要な技術がIoTだという。
人間は生きている時間の大部分を建物の中で過ごす。建物は人間が生活し、仕事をし、社交活動をし、買い物をし、安らぐ場所だ。そのため、建物の設計や使いやすさが利用者の行動とその効率に大きな影響を与える。例えば、空調がよく聞いていない、コーヒーがまずいといったことが、そのオフィスで働くスタッフの生産性と士気を下げるのは経験から分かっている。一方、使いやすくてサービスが行き届いた建物は、利用者の満足感を高め、営業、採用、スタッフ定着に至るまで、あらゆる物事がうまくいくように後押ししてくれる。
建物は地球にも影響を与える。建物が使うエネルギーと水は、それぞれ世界中の約40%と25%を占めている。また、排出する温室効果ガスはおよそ全体の3分の1にも上る。
人間のためにも地球のためにも建物をより良くする技術を実装することが重要だ。そして幸運にも、新しい技術とその進化が貢献するという。
1つは、「IoT」(モノのインターネット)だ。IoTは、ほぼ全てのモノをデジタル化し、今まで定量化できなかった出来事や現象に関するデータを提供する。IDCは、インターネット接続デバイスは地球上で最大のデータソースになるという。2015年で90億台だったインターネット接続可能デバイスは、2020年までに300億台、2025年までに800億台に上ると予想する。インターネット接続デバイスに搭載するデジタルデータ収集センサーは、建物の壁、廊下、ドア、窓、エレベーター、配管、照明など人間の暮らしの中に溶け込んでいる。オフィス、ホテル、空港、ショッピングモールでは普及しているが、一般家庭でも徐々に利用できるようになっている。
IoTをさらに強力にしている技術がある。それは「コグニティブコンピューティング」だ。コグニティブシステムでは膨大な量のデータを取り込む。動体センサーや熱センサーの信号、画像、動画、天気予報といったさまざまな形式やコンテンツを含む。建物に組み込んだセンサーから得たデータは建物の使い方を変えることができる。コグニティブシステムは機械学習と自然言語処理を用いて仮説と提案を生成することで、人間がより適切な判断を下すための手助けをする。このシステムは、医者、金融アドバイザー、コールセンターのオペレーター、建物の所有者などが利用できる。
「コグニティブな建物」は、その建物を利用する人とその建物を提供する人の両方に対して、より適切な方法を提案する。コグニティブな建物は、利用者が居るだけでなく、居たいと思える建物にする。それにより利用者が継続的に行動し、生産性が向上し、疲弊する原因を削減する方法を特定するのに役に立つ情報を提供する。また、コグニティブな建物で使うエネルギーや利用者が消費する食料と水は、今よりも少なくなる。さらに、他の建物、交通システム、自動運転車両と通信して、通勤や通学に置ける疲労を軽減し、大きなイベントの後に発生する交通渋滞に備えることができる。
施設管理業界の大手グローバル企業ISSを例に考えてみよう。ISSでは50万人強の職員が、何千もの著名な顧客のために、コンシェルジュ、清掃、ケータリング、技術的なメンテナンスに至るまであらゆる業務を管理している。顧客には、Rolls-Royceや英国空軍などが名を連ねる。ISSはそれぞれの建物を個別に考え、使いやすく、ユーザーフレンドリーにするという目標を掲げて、コグニティブコンピューティングを採用し、世界中のビルのオーナーやユーザーに提供するサービスに変革をもたらしている。ISSは手始めに、自分たちの本社ビルで何百基ものセンサーを取り付けて、建物をどのように利用しているかを詳しく理解して、部屋の予約や食事手配などの主要な仕組みを変革した。
エレベーター、エスカレーター、回転ドア、自動ドアの主要メーカーであるKONEは、コグニティブIoT技術を使って、毎日世界中の建物や都市で10億人を超える人々を運ぶ設備の保守管理を最適化している。IoTによって、KONEは設備の状態に基づいた保守アプローチを導入できるようになり、このアプローチはコストを抑えてダウンタイムを避けるのに役立っている。
あらゆる前途有望な新技術と同様に、IoTにも賢い開発者や企業が新しい用途を生み出すだろう。そして、このようなシステムとシステムが生み出すアイデアをクラウドに持ち込めば、可能性は無限に広がるはずだ。
急速な進歩の過程では、スタートの段階で数多くの失敗を目にすることになるだろう。しかし、コグニティブコンピューティングとIoTが、知覚、反応、自己改善、対話できる建物を実現する一助となり、今よりもはるかに優れた人間と地球の調和をもたらすのは間違いないだろう。
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