事例で分かる、中堅・中小企業のセキュリティ対策【第5回】
「退職者に機密情報を持ち出された」ともめる前に打つべき内部不正対策(1/2 ページ)
組織内部者の不正行為による情報流出の防止には、組織へのロイヤリティー(忠誠度)が重要な鍵を握っています。その上で、不正行為を検知し、分析するシステムを組み合わせると有効です。その具体的な方法とは?
連載について
情報セキュリティ対策をしたくても、ITに詳しい人が社内外にいなくて困っている中堅・中小企業は多いのではないでしょうか。「知識不足」と「ヒト、モノ、カネ不足」の問題が目の前にあっても、対策は待ったなしの状況。予算を握る上司を説得するために、サイバー攻撃の事例を紹介しながら、その効果的な対策につながる情報セキュリティ製品を分かりやすく解説します。
あなたは、今の会社や仕事に満足していますか。働きがいを持って仕事に従事できていますか。「内部からの情報流出」は、働いている会社へのロイヤリティー(忠誠度)が高いほど、そして「仕事好き」「会社好き」「仲間好き」であるほど起こりにくいという特性があります。
はじめに、以下の10個の質問に答えてみてください。自社に当てはまる項目がどれだけありますか(あなたが社長である場合は、社員が感じていそうな項目があるか、想像してみてください)。
- 不当だと思う解雇通告を受け、辞めた社員がいる
- 現在の給与や賞与に不満がある
- 昇進や昇格など、社内の人事評価に不満がある
- 職場で頻繁にルール違反が繰り返されている
- 社内のシステム管理がずさんで、顧客情報を簡単に持ち出せる状態になっている
- 社内ルールや規則に違反したとしても、特に罰則のようなものはない
- 上司の仕事への取り組み方や、上司の人間性に不満がある
- 職場で人間関係のトラブルが頻繁に起こっている(現在もトラブルを抱えている)
- 社内の誰にも知られずに、顧客情報などの重要な情報を持ち出せる方法を知っている
- かつて同僚がルール違反をしたことが発覚したが、社内で処罰されなかった
自社内に当てはめてみて、該当項目が多ければ多いほど「内部からの情報流出の可能性がある、注意が必要な会社」だといえるでしょう。
実はこの質問は、情報処理推進機構(IPA)が2012年7月に公開した「組織内部者の不正行為によるインシデント調査」の中にある、「内部不正への気持ちを高める条件」のランキング1~10位の内容を基にしています。
「内部不正への気持ちを高める条件」上位10位
- 不当だと思う解雇通告を受けた(34.2%)
- 給与や賞与に不満がある(23.2%)
- 社内の人事評価に不満がある(22.7%)
- 職場で頻繁にルール違反が繰り返されている(20.8%)
- システム管理がずさんで、顧客情報を簡単に持ち出せることを知っている(20.1%)
- 社内ルールや規則を違反した際、罰則がない(18.7%)
- 上司の仕事への取り組み方や上司の人間性に不満がある(18.3%)
- 職場で人間関係のトラブルがある(17.8%)
- 社内の誰にも知られずに、顧客情報などの重要な情報を持ち出せる方法を知っている(16.4%)
- かつて同僚がルール違反を行ったことが発覚したが、社内で処罰されなかった(16.1%)
2位と11ポイントもの差をつけて、「不当だと思う解雇通告を受けた」が1位になっています。会社への恨みが内部不正を誘発することが裏付けられているといえるでしょう。内部からの情報流出を防ぐためには、社員満足度を高めるなど、会社内部の質的向上を図る取り組みを進めるのが根本的な対策になる、ということを忘れてはいけません。
以下のような事例は、会社内部の質的向上に取り組んでいれば防げたかもしれません。
事例:退職者が顧客情報や機密情報を持ち出して他社へ移籍。ノウハウが流出してダメージを受けた
オフィス用品や複合機などの商品販売やメンテナンスに従事する、従業員100人ほどのある企業。
最近、自社の得意先である既存顧客に対して、競合他社から激しい営業行為があり、大切な顧客が競合他社に乗り換えてしまう、というケースが増えて困っている。
実は半年前に退職した営業社員がいた。どうやらその営業社員が退職する直前に、自社の顧客名簿や営業ノウハウなどの機密情報をUSBメモリか何かでごっそりと持ち去り、競合他社に移ってしまったようだ。
競合他社が顧客に提示する商品チラシも、自社のものと極めて似ており、若干形を変えて使われている。商品価格や利益率なども把握しているようで、常に自社が顧客に提示する価格を下回っているので、対応に苦慮している。訴訟を起こすことも考えたが、元営業社員が持ち去ったという証拠が残っていないために諦めざるを得なかった。
複数の既存顧客からも「よそに移ったあの(元営業)社員、うちにも来て営業してるけれど……彼が退職前に情報を持ち去ったんじゃないの? おたくの会社の情報管理って、きちんとしているかどうか心配。本当に大丈夫なの?」という言葉を受け取ってしまった。今まで良好だった顧客との信頼関係を失うかもしれない、というリスクが表面化してきた。
半年前に退職した営業社員とは、方針が合わずに衝突していた。彼は一匹狼のように組織からどんどん孤立していき、最終的には社員間でのコミュニケーションすら取ることがなくなり、退職していった。
退職の数カ月前、1人でPCに向かって残業することが増えていることに気づいてはいたが、「仕事をやる気になったのかな」程度にしか考えておらず、別段気にすることもなかった。
ひょっとするとあの時、機密情報を持ち出していたのかもしれないが、確証がない。いずれにせよ、今まで蓄積していたノウハウが社外に流出してしまい、大きなダメージを受けてしまった。このようなことが二度と起こらないように、システム会社などに対策方法を相談している。
このケースの場合、以下の要素に問題がありそうです。
- 退職者との関係がこじれ、円満退職にならなかった
- 情報の管理体制がずさんで、誰でも機密情報を持ち出せるようになっていた
- 「いつ、誰が、どのような情報を扱ったのか」などのアクセスログ情報を残していなかった
- 営業ノウハウを持ち出すことが、不正競争防止法違反(営業秘密の不正取得)になることを知らなかった
情報価値が高まっている現在では、顧客情報や営業ノウハウ、機密情報などの漏えいは組織規模の大小にかかわらず、経営に大きなダメージを与えるリスクファクターとなりました。
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