スマートグラス「Recon Jet Pro」を導入した運送会社、業務改善への効果は?従業員は当初、消極的だったというが……

両手の自由を確保できるウェアラブルのスマートグラス。ある企業がIntelのスマートグラス「Recon Jet Pro」を導入して生産性向上を果たした。どのように実践したのか。

2017年08月27日 05時00分 公開
[Kelly M. StewartTechTarget]

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Recon Jet Pro Recon Jet Pro《クリックで拡大》

 時は金なりだ。時間を浪費すれば資金の損失になる。ある日、効率改善に行き詰まった運送会社の倉庫は、ウェアラブルのスマートグラスに頼ることになった。

 DB Schenkerの米国拠点の従業員は、時間を要するプロセスの効率を上げる必要があった。問題のプロセスとは、大型倉庫の作業場で在庫を追跡し、従業員同士でコミュニケーションを取ることだった。2017年4月、DB SchenkerはIntel子会社Recon Instrumentsのスマートグラス「Recon Jet Pro」を導入した。これにより、従業員は作業中に両手の自由を確保しながら、在庫状況を最新の情報に保つことができるようになった。

 「Recon Jet Proは操作しやすく、すぐに使えるようになる。作業を中断して監視役に合図を送ることなく、メッセージだけを送信できる」とジョン・パパス氏はいう。同氏はDB SchenkerでITプロジェクトマネジャーを務める。

スマートグラスで曲がり角の危険性を回避

 Recon Jet Proは、従業員の視界を遮らないように右眼の下にカメラを搭載している。従業員はこのカメラを使ってライブ動画をストリーミングできる。その用途としては、手順を追って修理方法を説明するといったサポート目的や、従業員の視線の先にある製品の情報を提供することなどが挙げられる。バーコードをスキャンしたり、一連の手順を記録したりすることも可能だ。

 DB Schenkerの顧客から注文を受けると、従業員はRecon Jet Proで在庫を調査し、その品物の現物を用意できるかどうか確認できる。在庫がない場合は、Recon Jet Proはその品物の在庫を補充するように別の従業員にアラートを送る。そのため、作業場で時間が浪費されない。

 「Recon Jet Proの最も素晴らしいところは、両手が自由になる点だ。書類や梱包(こんぽう)を持ち歩くことがない」とパパス氏は述べる。

 この特徴は倉庫では特に役立つ。倉庫では角を曲がるたびにフォークリフトと衝突する危険性があるためだ。

 Intelとの物流パートナーパイロットプログラムの一環として、DB Schenkerはこれまでに9個のRecon Jet Proを導入している。この数はさらに増やす予定だ。

 「Recon Jet Proを一部の個人トレーニングに使用することさえ考えていた。現場の従業員に行うべきことを正確に示せるためだ」(パパス氏)

 Recon Jet Proは無線LAN、GPS、Bluetooth接続機能を組み込んでおり、オフライン機能などを提供するUpskillの「Skylight」という企業向けソフトウェアスイートも採用している。Atheerの「AiR Suite」やAugmateの同名製品など、他のソフトウェアも活用できる。これらのソフトウェアはRecon Jet Proの動作をさらにカスタマイズするものだ。AiR Suiteを使用すると、スマートグラスを着用する従業員向けのタスクリストを組織で作成できるようになる。Augmateはウェアラブルデバイスの管理を提供する。Recon Jet Proでは組織独自のソフトウェアを開発し、導入することもできる。これは自前で行うことも、Intelの開発サポートチームを頼ることも可能だ。

 だがパパス氏によると、本稿執筆時点のDB Schenkerでは全てのソフトウェア機能を活用することに苦戦しているという。

 「DB Schenkerには常駐の開発者がいないためだ」と同氏は述べる。

 もう1つの課題は、ITプロジェクトマネジャーがRecon Jet Proの使用方法を従業員にトレーニングしなければならないことだ。当初、従業員はRecon Jet Proを試すことに消極的だったとパパス氏は補足する。

今後スマートグラスは急速に浸透するか

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