UberのCEO辞任から学ぶ健全な社内文化の作り方健全な環境は健全な社内文化から生まれる(1/2 ページ)

女性にとって安全で快適な環境は、そのまま企業の働きやすさにつながる。問題はどのようにすれば安全で快適な環境を構築できるか、ということだ。セクハラ問題を起こした企業を反面教師としてその解決方法を探る。

2017年11月01日 05時00分 公開
[Jason SparapaniTechTarget]

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 2017年5月に米マサチューセッツ州ケンブリッジで開催した「MIT Sloan CIO Symposium」で、聴衆の1人が有名なパネリストに投げ掛けた質問がある。「あなたは会社以外で女性の技術習得について何か行動を起こしていますか。小学校で女性(女子児童)が科学分野で後れを取っていることを仕方がないと諦めていませんか」というものだ。私はこの質問に感銘を受け、女性のIT担当者を増やそうとする企業の取り組みについて記事を書いた。その後しばらくして、記事へのコメントで「テクノロジー業界に飛び込むことを女性に勧めるだけではなく、その環境が女性にとって有害なものではないと保証するにはどうすれば良いか」という質問をITトレーニング企業の従業員の男性から受けた。

 これは核心を突いた優れた質問だった。特に後半部分だ。シリコンバレーの傑出した企業の1つに、ライドシェアリング(移動手段の共有ビジネス)の先行企業Uberがある。同社でセクハラが行われており、企業文化が崩壊していることが少しずつ暴露されるという出来事があった。これは最終的には、同社の最高経営責任者(CEO)トラビス・カラニック氏の辞任へとつながった。

 だが、IT職に就く女性を増やし、女性にとってその職場が安全かつ快適なものにするための解決策の責任は常にCEOにあるのだろうか。

 筆者は、クリスティー・ライアダン氏にこの問題についての意見を求めた。同氏は技術者教育を行う米機関Flatiron Schoolで最高執行責任者(COO)を務める。Flatiron Schoolでは、高給を得られるテクノロジー業界に加わりたいと考える女性に奨学金を提供している。テクノロジー業界で女性に優しい環境を整備するには、そのためのポリシーを確立することが最優先事項になるとライアダン氏は述べる。管理職には、配慮が行き届き、透明性を備え、包容力のある文化を確立することが求められる。その文化を形成する必要がある。

画像 クリスティー・ライアダン氏

 また、ライアダン氏は、トップダウン型の企業体制がもう1つの解決策になると話す。「優秀な上司」は直属の部下に指示を出し、社内での取り組みを指導する。

 「上司は部下が行う日々の業務に責任を持つ。部下と、チーム、会社、役割とのつながりが確保されること、つまり部下に成長のチャンスを与えることにも責任を負う」(ライアダン氏)

倫理の問題

 最終責任はやはりCEOにある。いや、そうあるべきだ。テクノロジーへの投資家であるエレン・パオ氏は、雇用主を相手取り、性差別についての訴訟を起こした。同氏は2017年9月にNew York Timesに寄稿し、ハラスメントや差別を受けたことを報告する女性が増加してからの変化を考察した。謝罪が表明され、リーダーが辞任し、トップに任命される者が多様化していると同氏は記事の中で述べている。だが、なかなか消えない偏屈な考えに風穴を空けるには、「本当の多様性と包容力について、自身とそのチームに責任を課すCEOが必要だ」と主張する。

 パオ氏が明確に名指ししていたのは特定のテクノロジー企業だったが、一般的に男性優位といわれるテクノロジー業界全般を意図していたのは明らかだ。どのような企業、業界、IT部門でも、包容力を少しずつ浸透させるには、あらゆる層の従業員が同じ考えを持たなければうまくくいかない。つまり、公正かつ尊敬の念を持って同僚に接することだ。それにより、その相手に適正な成功のチャンスがもたらされるようにする。

 Uberでソフトウェアエンジニアを1年勤めたスーザン・ファウラー氏は、2017年2月、自身の体験にまつわる記事を投稿し、物議をかもした。それがきっかけとなってUberに調査が入り、カラニック氏の失脚へとつながった。ファウラー氏は、チャットアプリを通じて、強いて隠そうともしない性的交渉を求める誘いを上司から受けていたと書いている。

 上司がそのような行為に出られたのは、間違いなく不健全な企業文化によるものだ。ファウラー氏がUberの人事部に上司のことを報告したときでさえ、こうした文化が上司を守った。カラニック氏が発した恥知らずな発言が従業員の手本になった可能性がある。同氏は男性向けファッションカルチャー雑誌GQ Magazineの取材に対し、女性の注目を集めていることからUberには「Boober」(モテる男)というあだ名があるとジョークを飛ばしたのだ。この発言が同社の社風を決定付け、不適切な振る舞いが一般従業員に浸透した。

 Flatiron Schoolのライアダン氏によると、管理職は、より上の立場のCEOと同様、その身分にふさわしい一定の倫理基準を満たさなければならないという。

 「快適な環境をサポートする上で、管理職が果たすべき役割は何か、管理職に期待されること、また、その評価方法について、意見交換がもっと活発に行われるようになれば良いと考えている。こうした環境作りでは、その全体像の中で管理職が本当に重要な要素になるだろう」(ライアダン氏)

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