2018年04月03日 08時00分 公開
特集/連載

ニアショアITサービス事業者選定時の注意点CW:デジタル化とIoT製品導入戦略ガイド

デジタルトランスフォーメーションを支える中堅ニアショアITサービス事業者の利用について、メリットとデメリットを検証する。

[Somak Roy,Computer Weekly]

 デジタル化の台頭に伴い、ニアショアITサービス事業者(以下、ニアショアプロバイダー)の強みが特別な重要性を帯びてきた。GlobantやSofttekのような中南米の中堅プロバイダーや、Ciklum、Luxoft、EPAM Systemsといった欧州のプロバイダーは、この分野のサプライヤー独特の成長軌道を描いてきた。

 中堅ニアショアプロバイダーがフォーカスする価値の高いサービスラインは、価格に対する感度の低さ、経験豊富な製品エンジニアリングリソース、顧客の収益源やブランド認知を中心に据えたプログラムを特徴とする。コストや規模では競争しない。

 半面、アプリケーションメンテナンスやサポートの実績という強みは持たない。そのため大半の中堅ニアショアプロバイダーは、レガシー環境に対する十分な理解や、それをエンドツーエンドのデジタルトランスフォーメーション戦略の一環としてどう転換させるかについての理解は乏しい。

 これまで設計の専門業者と契約し、ニアショアプロバイダーとは開発オンリーの関係しか持たなかった多くの顧客が今、その戦略の再検討を行っている。そうした顧客は時として「コーディネート問題」を引き合いに出し、設計と開発の両方にニアショアプロバイダーを利用する理由として「技術的に何が実現可能かを設計会社は分かっていない」ことを挙げる。

 そうした強みを発揮する中堅ニアショアプロバイダーは、彼らが従来得意としてきたデジタルカスタマーエクスペリエンス(CX)に、ビジネスプロセス管理(BPM)やロボットプロセス自動化(RPA)といったデジタル運用エクセレンス技術のノウハウを組み合わせている。

 スケールに欠けることや、インド中心のサービス大手に比べるとコスト面で明らかに不利になることから、そうしたITサービスプロバイダーは、価値の高いサービスを前提とした価値提案を生み出し、技術の深さとビジネス指向のリーダーシップ、物理的・文化的な近さをアピールする。

 調査会社Forresterによると、開発作業にアジャイルを実践しているオフショアサプライヤーはまだ少数にとどまる。だが、ニアショアプロバイダーには横断的な研修を積んだ開発者がいる公算が高く、特定ツールごとに孤立したサイロが存在する公算は低い。既にフルスタック開発について語るプロバイダーもある。

デジタルエクセレンスの探求

 デジタルトランスフォーメーション戦略では必然的に、デジタルCXとデジタル運用エクセレンスプログラムをつなぎ合わせることになる。ITサービスプロバイダーが支援できるのは、当該の業界セクターに特有のビジネスモデルおよび慣行に関するコンサルティングや知識を通じ、関連する機能をひとまとまりのテーマとして組み立てることだ。加えて、ほとんどのデジタルトランスフォーメーションプロジェクトは、レガシーシステムの集中的な現代化を必要とする。

 ニアショアプロバイダーは、強力なデジタルCX機能と、ある程度のデジタル運用エクセレンス機能を組み合わせる。だが大半は、レガシーシステムの現代化についてはそれほど強い実績を持たない。ニアショアプロバイダーの評価を行う際は、そのプロバイダーのデジタル運用エクセレンス機能が信頼できることを、最高情報責任者(CIO)が確認する必要がある。BPMのようなデジタル運用エクセレンス技術にまつわる実績は、オフショアプロバイダーよりもニアショアプロバイダーの方が規模が小さい。例えば、最大規模のニアショアプロバイダーがAppianやPegasystems、IBMとOracleの資格を持つ開発者を数百人抱えているのに対し、オフショアプロバイダーは1000人近い。ニアショアプロバイダーの方がBPM参考事例は顧客のライフサイクルに近い傾向があるが、社内プロセス効率化の事例は少ない。RPAの実績は、オフショアプロバイダーに比べると未開拓で、比較にならない。

 ニアショアプロバイダーの成功事例としては、EPAM Systemsがカナダの銀行にPegasystemsを導入して銀行製品を顧客にマッチさせた事例や、ホテルチェーンの顧客忠誠度管理システム構築用のルール管理システムなどが挙げられる。

レガシー現代化能力の検討

 ForresterはCIOに対し、プロバイダーのレガシーモダナイゼーション能力について検討するよう促している。ニアショアプロバイダーは従来、アプリケーションメンテナンスとサポートに関してあまり大きな実績はなく、アプリケーションポートフォリオ分析や合理化といったレガシーモダナイゼーションに必須の能力は、あまり進化していない。

 加えて、多くのニアショアプロバイダーは、ERPに関する実績を持たない。だがERPのモダナイゼーションは多くの場合、デジタルトランスフォーメーションプログラムを下支えする。

 最後に、レガシーアプリの移行に使われることが増えたSaaSについて、ニアショアプロバイダーは後れを取っている。これはクラウドパラダイムへの反感に起因するものではなく、ビジネスアプリケーションの領域における限定的なプレゼンスに起因する。

中堅では小さ過ぎる場面

 ForresterはCIOに対し、中堅プロバイダーを検討する際は注意するよう助言している。スケールを要するプロジェクトには、まだ課題が残るためだ。

 大規模なエンドツーエンドのデジタルトランスフォーメーションに取り掛かるサプライヤーは、数の強さを必要とする。

 Forresterが幅広いニアショアプロバイダーの紹介顧客から話を聞いたところでは、100人以上のリソースが絡む案件はほとんど見つからなかった。100人を超す従業員に対応できるスケールが必要とされる場合、中堅を超すニアショアプロバイダーを探す必要があるという意見も複数から聞かれた。

 ある中堅ニアショアプロバイダーは、自分たちが主に手掛けている国をインドと比較して、「設計であれ、コンサルティングであれ、ソフトウェアであれ、1対10という人口比率を念頭に置かなければならない」と認めている。

 ほとんどの中堅ニアショアプロバイダーが、個別のコンサルティング部門と、数百人のフルタイムコンサルタント部隊を擁していることは考慮に値する。だが、業界セクターの知識や新しいアイデアを発案する能力について、一般的なニアショアプロバイダーはビジネスコンサルタントではなく、主に特定の顧客対応や特定の業界で長年かけて業界に関する経験を積んだ技術者を頼る。

 紹介案件では、ビジネスコンサルタントが登場することはめったにない。顧客は業界や産業プロセスに関するサプライヤーの知識を高く評価する。だがその念頭にあるのはアカウントマネジャーやビジネスアナリスト、開発者であって、コンサルタントではない。

 Forresterが話を聞いた顧客のほとんどは、ニアショアプロバイダーとオフショアプロバイダーの両方と取引があり、その両方について、それぞれが持つ特異な能力や欠点について認識し、それぞれのタイプを特定の要件と照らし合わせる公然あるいは暗黙のポリシーを持っている。ある著名メディア企業のCTO(最高技術責任者)はこう語った。「管理型サービスやネットワーク運営、レガシーなど、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)の枠組みに当てはまる案件のために私が目を向ける企業は、アジャイルや製品管理、分析のために目を向ける企業ではない。私は違う種類のプロバイダーに目を向ける」

 全般的には、中堅ニアショアプロバイダーに特有の価値提案は、自分たちのデジタルCXニーズに合っているというのがForresterの顧客の意見だった。中堅ニアショアプロバイダーは、手堅い設計スキルやデジタルカスタマーエクスペリエンス能力、ソフトウェア製品工学、イノベーションと思慮深いリーダーシップ、アジャイル開発、フロントエンドアプリケーションのメンテナンスを提供する。

本稿はForresterの報告書「Evaluate mid-sized nearshore service providers for your business technology」より抜粋。ソマク・ロイ氏はForresterの上級アナリスト。

ITmedia マーケティング新着記事

news093.jpg

AI活用で日本が米国に追い付く――PwC調査
PwC Japanグループが日本で実施した調査の結果から、日本企業によるAI活用が大きく進み、...

news036.jpg

SaaS企業の成功メソッド「PLG」を実践するための組織作りとは?
成長を続けるSaaS企業には組織としての共通点がある。それは具体的にどのようなものだろ...

news093.jpg

メディア総接触時間、「携帯電話/スマートフォン」が「テレビ」を上回り首位に
博報堂DYメディアパートナーズによる、生活者のメディア接触の現状を捉える年次調査の結...