SaaS型ERPの真の価値は、初期コスト削減ではないと専門家は言う。むしろ長い目で見れば、より新しい適応性のある安全なプラットフォームを使用できることに価値がある。
ビジネスアプリケーションの利用で実際にかかる完全なコストを計算し、比較する作業には常に慎重さが求められる。ERP製品は特にそうだ。とても多くの企業がオンプレミスシステムからクラウドに移行しており、ERPをSaaS(Software as a Service)として運用する企業も多い。このような状況の中、クラウドの導入ではコストを導き出す方法が課題になる。
ROIの迅速な達成を目指すにせよ、運用中の総所有コスト(TCO)を計算するにせよ、企業はソフトウェアに投資する価値をこれまでとは全く異なる方法で理解しなければならない。
SaaS型ERPベンダーのFinancialForceは、これまでのROI(投資利益率)という用語は使わずに、「タイムツーバリュー」(Time to Value)という概念を重視することでその進化を具現化している。つまり、潜在顧客は製品の使用に踏み切る前に、ソフトウェアのインスタンスを立ち上げ運用状態にするまでの時間と、ソフトウェアから受ける影響を知りたいと考えている。そこで、FinancialForceは潜在顧客がサンドボックス内でのテストに6カ月もの期間を費やすのではなく、購入前に現実に即したソフトウェアの導入を評価できるようにした。
同社はこのアプローチを「スマートストップ」と呼び、事前構成済みの環境、既知の成果物、達成可能な期間を組み合わせて簡単に理解できるテスト運用を作り上げている。この戦略には、SaaSアプリケーションを広く採用することで、使用するソフトウェアと企業との関係性が変化する点が反映されている。FinancialForceでプラットフォームテクノロジー部門のディレクターを務めるケビン・ロバート氏はそう話している。
「これにより、ソフトウェアを購入する方法が変わる。ソフトウェアの調達方法や支払い方法だけではない。その評価方法に対するアプローチが別のものになる」(ロバート氏)
Oracle ERPのマーケティング部門でバイスプレジデントを務めるスティーブ・コックス氏も同じ意見だ。「ソフトウェアのROIとTCOが主目標ではなく、ビジネスを変える能力の方が重要視されるようになっている」と話す。
企業は自社の方向性を再検討している。その中心にあるのは顧客からの期待や急速に変化する規制の枠組みだ。新規や再始動した競合企業と常に争う必要性については言うまでもない。こうした状況の中、予算(あらかじめ予測されていたコスト)に合うソフトウェアよりも、こうした条件の変化に適合するソフトウェアが求められている。
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