SaaS型ERPを導入する理由は初期費用の節約だけではない。従来は不可能だったテクノロジーの迅速かつ安価なアップグレードや新しい基幹業務の対応まで多岐にわたる。
ステファン・ホロックス氏は、SaaS(Software as a Service)型ERPを導入するかどうかの検討に着手する際、費用の比較にはほとんど関心がなかった。重点を置いたのは、従業員が手軽に利用でき、ビジネスに敏しょう性をもたらす製品を見つけることだった。
2015年にホロックス氏が最高財務責任者(CFO)として英国のITコンサルティング会社Methodsに加わった当時、同社はクラウドへの移行に着手していた。だが、その移行結果は芳しくなかった。その2年前にSalesforce.comの「Salesforce」に導入したカスタムビルドアプリケーションの構想が甘く、その高くつくカスタムコードに大きく依存していた。そのため、他のシステムと効果的に統合できず、維持費がかさみ、情報管理が困難になり、期待していたビジネス効果は実現できなかった。
ホロックス氏は非常に実際的なアプローチを採用し、Salesforceとの密な統合ができるERPを必要として選択肢を調査した。同氏は、Salesforceからの出資を受けていたFinancialForce製のソフトウェアを選択することになるのだが、その決定時、同氏はMethodsがそれまで運用していたオンプレミスERPシステムよりも費用効率が高いかどうかはほとんど考慮しなかった。
「オンプレミスとクラウドのどちらがよいかという観点では比較しなかった。注目したのは、ビジネス上の深刻な問題を解決する費用がどの程度で、どれくらいの期間がかかるかだった」(ホロックス氏)
解決すべき問題はこうだ。Methodsはここ数年、データ分析やクラウド移行などの新しい分野で幾つか新しい基幹業務システムを導入した。だが、同社独自のテクノロジーは市場に後れを取っていたため、自動化の範囲を拡大し、データに基づくインサイト(洞察)を利用しやすくし、ビジネスの敏しょう性を高める必要があった。
「当社はクライアントのクラウド移行について支援している企業だ。医者の不養生とはこのことだ」(ホロックス氏)
最初は、あまりうまく進まなかった。同社は必要な処理をSalesforceで行うために多くのカスタムコードを追加していた。だが、ホロックス氏は着任するとすぐに、自社で利用するのはプラットフォーム自体だけにとどめるべきだと考えた。同氏は再出発の手はずを整えることに決め、自社の総勘定元帳からSalesforceとその関連物を取り除いた。その上で、カスタムコードなしでそれらを再度導入した。
「『コード』という言葉が出るたびに、断固として『ノー』と言った。プラットフォーム以外は利用しないことを求めた」(ホロックス氏)
ホロックス氏の決断は、プレーンなSalesforceの導入に寄与した。だがそれだけではない。この決断は、その後SaaS型ERPを導入する上で確かな土台となっている。2016年11月、MethodsはSalesforceプラットフォームでFinancialForceの運用を開始した。この段階で、同社の入札プロセスは2週間短縮された。それから1年。それまで3~4カ月かかっていた会計処理が4日に短縮された。
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