SaaS型ERPを導入するか、しないか オンプレミス比較では分からないビジネス創出コストメリットだけでは比較できない将来性

SaaS型ERPを導入する理由は初期費用の節約だけではない。従来は不可能だったテクノロジーの迅速かつ安価なアップグレードや新しい基幹業務の対応まで多岐にわたる。

2018年02月27日 05時00分 公開
[Tony KontzerTechTarget]

 ステファン・ホロックス氏は、SaaS(Software as a Service)型ERPを導入するかどうかの検討に着手する際、費用の比較にはほとんど関心がなかった。重点を置いたのは、従業員が手軽に利用でき、ビジネスに敏しょう性をもたらす製品を見つけることだった。

 2015年にホロックス氏が最高財務責任者(CFO)として英国のITコンサルティング会社Methodsに加わった当時、同社はクラウドへの移行に着手していた。だが、その移行結果は芳しくなかった。その2年前にSalesforce.comの「Salesforce」に導入したカスタムビルドアプリケーションの構想が甘く、その高くつくカスタムコードに大きく依存していた。そのため、他のシステムと効果的に統合できず、維持費がかさみ、情報管理が困難になり、期待していたビジネス効果は実現できなかった。

 ホロックス氏は非常に実際的なアプローチを採用し、Salesforceとの密な統合ができるERPを必要として選択肢を調査した。同氏は、Salesforceからの出資を受けていたFinancialForce製のソフトウェアを選択することになるのだが、その決定時、同氏はMethodsがそれまで運用していたオンプレミスERPシステムよりも費用効率が高いかどうかはほとんど考慮しなかった。

 「オンプレミスとクラウドのどちらがよいかという観点では比較しなかった。注目したのは、ビジネス上の深刻な問題を解決する費用がどの程度で、どれくらいの期間がかかるかだった」(ホロックス氏)

 解決すべき問題はこうだ。Methodsはここ数年、データ分析やクラウド移行などの新しい分野で幾つか新しい基幹業務システムを導入した。だが、同社独自のテクノロジーは市場に後れを取っていたため、自動化の範囲を拡大し、データに基づくインサイト(洞察)を利用しやすくし、ビジネスの敏しょう性を高める必要があった。

 「当社はクライアントのクラウド移行について支援している企業だ。医者の不養生とはこのことだ」(ホロックス氏)

 最初は、あまりうまく進まなかった。同社は必要な処理をSalesforceで行うために多くのカスタムコードを追加していた。だが、ホロックス氏は着任するとすぐに、自社で利用するのはプラットフォーム自体だけにとどめるべきだと考えた。同氏は再出発の手はずを整えることに決め、自社の総勘定元帳からSalesforceとその関連物を取り除いた。その上で、カスタムコードなしでそれらを再度導入した。

 「『コード』という言葉が出るたびに、断固として『ノー』と言った。プラットフォーム以外は利用しないことを求めた」(ホロックス氏)

 ホロックス氏の決断は、プレーンなSalesforceの導入に寄与した。だがそれだけではない。この決断は、その後SaaS型ERPを導入する上で確かな土台となっている。2016年11月、MethodsはSalesforceプラットフォームでFinancialForceの運用を開始した。この段階で、同社の入札プロセスは2週間短縮された。それから1年。それまで3~4カ月かかっていた会計処理が4日に短縮された。

SaaS型ERPを運用しない場合のビジネスチャンスの費用

会員登録(無料)が必要です

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€驛「譎擾スク蜴・�。驛「�ァ�ス�、驛「譎冗樟�ス�ス驛「譎「�ス�シ驛「譏懶スサ�」�ス�ス

事例 AJS株式会社

紙やExcelの運用から脱却し人事評価業務を効率化、事例に学ぶ人事制度の改善術

紙やExcelを用いた人事評価業務では、進捗管理やデータ集計に多大な労力がかかってしまう。そこで本資料では、評価ツールを導入することで、評価に関わるさまざまな作業を効率化することに成功した事例を紹介する。

市場調査・トレンド 株式会社マネーフォワード

「36協定」の締結/更新ガイド:基礎知識から手順、注意点まで社労士が解説

2019年4月から時間外労働の上限規制が労働基準法に規定され、特別条項付きの36協定を締結した場合でも厳守しなければならない、時間外労働の限度が定められた。本資料では、36協定における基礎知識から締結時の注意点まで詳しく解説する。

製品資料 株式会社マネーフォワード

社労士が解説、従業員の離職につながる「6つの原因」と防止メソッド

人手不足が深刻化する近年、新規採用や従業員教育にコストをかける企業が増えているが、その分離職時のダメージも大きく、事業継続に影響が出るリスクもある。そこで、主な離職要因となる6つの問題について、その原因や解決策を解説する。

製品資料 株式会社マネーフォワード

社労士が解説する休日と休暇の基本ルール、よくあるトラブルを未然に防ぐヒント

休日と休暇の管理は労務管理の中でも重要な業務だ。しかし、振替休日と代休の違いを理解していない、有給休暇取得を適切に管理できていないといったケースから、従業員とのトラブルに発展することもある。このような事態を防ぐには?

製品資料 株式会社マネーフォワード

雇用保険法の改正で何がどう変わる? 社労士に聞く実務対応のポイント

2025年4月以降に施行される雇用保険法の改正により、高年齢雇用継続給付や、自己都合離職者への給付制限などが見直され、企業の人事/労務対応が大きく変わろうとしている。改正内容の詳細や実務対応のポイントを、社労士が解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...