「5G」が飛躍させるAR/VR【前編】
「5G」が救世主に AR/VRの“PC市場超え”を阻む致命的な課題とは?
さまざまなシーンでの利用が期待されるAR/VRだが、本格的に普及するには困難な課題が幾つか残っている。その課題を解消し、市場を急拡大させる可能性を秘めているのが「5G」だ。
次世代のモバイルネットワーク規格「第5世代移動体通信システム」(5G)は、目標とするデータ伝送速度が下り、上りともGbps級になる見込みだ。「第4世代移動体通信システム」(4G)以前よりも、同じ圏内で同時かつ安定的に接続できるデバイスの数が増える。こうした特徴を持つ5Gが持つ本当の価値とは何か、CIO(最高技術責任者)が注目すべき点は何だろうか。
5Gが企業ITに影響を与えると予想されている分野の一つが、急成長を続ける拡張現実(AR)と仮想現実(VR)の市場だ。ARとVRは長い間、ゲームの他、宇宙飛行士や外科医といった専門的な職業の訓練に使われてきた。しかしIT市場関係者によると、今後は不動産や小売、製造といった幅広い業界でAR/VRの重要性が増す見通しだ。
証券会社のGoldman Sachsは、AR/VRを合わせた市場が2025年までに800億ドル規模に達すると予想する。プロセッサの高速化などAR/VRを支える技術の向上が、こうしたトレンドを後押しする。これは現在のPC市場規模にほぼ匹敵する。実際のところ、AR/VRはスマートフォンと同じ程度に企業と顧客との関係に大きく影響を与える可能性があると、Goldman Sachsは予想する。調査会社のGartnerはこのほどまとめた報告書で、2020年までに1億人のコンシューマーが、インターネットや実店舗でAR関連製品を購入すると予想した。
だがAR/VRがその潜在能力をフルに発揮し、期待通りに市場が拡大するには課題がある。その解決に5Gが役立つ可能性がある。どのような課題があるのかを整理しよう。
併せて読みたいお薦め記事
5Gで何が変わる?
AR、VRの利用は広がっているのか
AR/VRに残る課題
現在のAR/VRの利用方法には限界がある。AR/VRを活用したヘッドマウントディスプレイ(HMD)としてHTCの「VIVE」やFacebook Technologiesの「Oculus Rift S」、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの「PlayStation VR」などがある。スマートフォンのAR機能も広がりをみせているが、そうした製品ではARやVRを限定的にしか利用できない。スマートフォンを常に目の高さに持って使う必要がある。
一方HMDは別の問題に突き当たっている。HMDで質の高い映像を作り出すためにはGPU(グラフィックスプロセッシングユニット)を必要とする。だがHMDにGPUを搭載すると発熱し、消費電力は大きくなる。AR/VRをテーマにしたブログ「The Ghost Howls」を運営するアントニー・ビティロ氏は、「代替策としてOculus Rift SのようにPCのGPUを利用する方法もある」と説明する。だがその場合、常にケーブルでHMDHMDを接続しなければならない。Facebook Technologiesの「Oculus Quest」やHTCの「VIVE Focus Plus」といった他のHMDは、通常は携帯電話に使われるQualcommのプロセッサを採用しており、その処理能力は現時点でGPUには及ばない。
もう一つの問題は、HMDの処理能力を高めようとすれば価格が高額になることだ。一般的に、HMDは高性能のグラフィック機能を必要とするためコストがかかる。
コラボレーションの問題もある。現時点でほとんどのAR/VR製品は、主にユーザーが一人で利用することを想定して設計されている。複数のユーザーがコラボレーションするためにはリアルタイム性を実現することが重要だ。あるユーザーから共有されたVR体験をシステムが処理し、それを全参加者にリアルタイムにストリーミング配信するとしよう。この場合は残念ながら、現在のデバイスでは乗り物酔いの症状を引き起こす程度のタイムラグが発生してしまう。
HMDのデザインにも問題が残っている。ビティロ氏は「将来的にはHMDのデザインを現代のサングラスのようなものにする構想を描いている」と語る。だがデザインをサングラス程度にまで薄くすると、HMDにあまり多くの電子部品を搭載できなくなる。そこで5Gが使われる。
後編では、5GがAR/VRの課題をどう解決するのかについて説明する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「5G」が飛躍させるAR/VR
超高速、低遅延、多数接続の特徴を持つ「5G」。4Gまでのネットワークでは解決できなかったリアルタイム性などの課題を解決し、未来を変える可能性がある。期待される分野の代表例が拡張現実(AR)、VR(仮想現実)だという。それはなぜなのか。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
製品資料
[株式会社ウェーブスプリッタ・ジャパン] 100Gbps対応の光トランシーバーはどう選ぶ? 10分で分かる選定のポイント -
製品資料
[株式会社フィックスターズ] 組み込み開発の生産性と機密性を両立、自社環境で構築する「セキュアAI」活用術 -
製品レビュー
[ServiceNow Japan合同会社] 問い合わせの約9割を自動で解決、AI主導の自律型CRMがもたらす業務変革の全貌 -
市場調査・トレンド
[ServiceNow Japan合同会社] AI活用が業務自動化で止まる理由は何か? 調査で判明した課題と変革への道筋
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
2
なぜOpenAIやAnthropicのAIは「脱走」したのか 情シスが迫られるエージェント統制
-
3
【基本情報技術者試験】「デュプレックスシステム」と「デュアルシステム」の違いは?
-
4
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
5
Anthropicが明かす AIは入力データを「どこまで覚えているのか」
-
6
GitHubが指摘 AIが書いた「おそらく動くコード」が招くシステム崩壊
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
9
ただなのに「12時間以内の復旧」も要求 無償OSSに商用レベルを求める企業の末路
-
10
「にゃんこ大戦争」がAWSを脱出した理由 無停止移行に潜む“わな”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
4
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
-
9
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
10
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー