UCaaSの新規導入あるいは旧来のUCからの移行に際してまずやるべきことは、UCaaSの3つの導入形態を選択することだ。「こんなはずではなかった」を防ぐには、それぞれの長所と短所を理解する必要がある。
前編(Computer Weekly日本語版 8月21日号掲載)では、UCaaSのメリットとサービス選定時の注意点を紹介した。
後編では、UCaaSにおける3つの導入形態の長所と短所、導入準備から導入までの流れについて解説する。
当然ながら、UCaaSのサービスはプロバイダーごと、サービスごとに異なる。
UCaaSに関しては、シングルテナント、マルチテナント、ハイブリッドアプローチという3つの選択肢があるというのがバナジー氏の見解だ。
シングルテナントUCaaSは、カスタマイズされたソフトウェアプラットフォームを提供し、オンプレミスのシステムやアプリケーションに接続されると同氏は話す。
「比較的高価なソリューションで、アップグレードコストを顧客が負担するのが一般的だ。だが、顧客のデータを別々に管理するため高度なセキュリティを実現する。ある顧客にダウンタイムが発生しても、その影響が別の顧客に及ぶことはない」(バナジー氏)
マルチテナントUCaaSは、ローカルではなくサービスプロバイダーが所有するデータセンターのクラウドでソフトウェアがホストされる。マルチテナント構成では、全てのUCaaS顧客が1つのソフトウェアプラットフォームを共有する。
「主なメリットは、コストが下がり、信頼性が向上し、優れたサポートサービスを受けられる点にある。さらにはソフトウェアアップグレードがプロビジョニングされるのもメリットだ。ただしカスタマイズオプションは少なくなる。これがマルチテナントの大きなデメリットだ」とバナジー氏は語る。
ハイブリッドアプローチは2つの妥協点を提供する。従来型UCを既に利用中でUCaaSへの移行を考えている企業にとっては、ハイブリッドUCaaSが最善の選択肢になることが多いと同氏は言う。
「このアプローチは、マルチテナントシステムを活用しつつシングルテナントでデータを安全に保管したいと考えている企業に利用されている」(バナジー氏)
どのような技術の導入でも同じだが、UCaaSを導入する前に自社のニーズを理解することが重要だ。
だが、as a ServiceモデルのおかげでUCaaSの導入は非常に容易になったと話すのは、RingCentralの製品マーケティングおよび市場開拓部門のシニアディレクターを務めるサニー・ダーミ氏だ。
「大掛かりな整備が不要なので、UCaaSは非常に短時間で立ち上げて稼働させることが可能だ。特にオンプレミスシステムと比べれば非常に迅速だ。導入後、そのサービスをGoogleやSalesforce.com製品、Microsoft Officeなど、幅広いアプリケーションと統合できる」(ダーミ氏)
バナジー氏によると、UCaaSへの移行には時間も費用もかかるため、現実的な計画を用意することも不可欠だという。
「投資利益率(ROI)の現実的な期待値を定めるとともに、従業員や組織が新しいシステムに慣れるまでには時間がかかることを受け入れることも必要だ」と同氏は言う。
「この点に関しては信頼できるパートナーを選ぶと役立つことがある。多くのマネージドサービスプロバイダーは、UCaaSやクラウドなどの新しい技術を専門に扱っており、ベストプラクティスやテスト済みのフレームワークを通じて幅広い経験をUCaaSの導入に取り入れることができる」
8x8の会長兼CTO(最高技術責任者)のブライアン・マーティン氏によると、UCaaSの導入には不可欠な手順が幾つかあるという。
まず場所とユーザーを調査し、ネットワークと帯域幅の要件を定めて組織内のさまざまな役割を把握する。そうすれば各役割と適切なユーザーライセンスとを一致させることができる。
また、今後の電話の流れを全て図にすることも必要だ。電話番号は新しいUCaaSプロバイダーに移管しなければならない。そして卓上電話を用意し、システムやネットワークのテストを行う。
管理者やユーザーのトレーニングも必要だ。特に、モバイル端末からビジネスコミュニケーションへのアクセスなど、最新機能に関するトレーニングが欠かせない。
「UCaaSパートナーを探すに当たっては、設定と実装のプロセスについて尋ねる必要がある。詳細をどの程度開示してもらえるかによって、そのプロバイダーがこうした作業を円滑に進めるかどうかを判断できる」とマーティン氏は指摘する。
「この段階では、プロバイダーと自社のチーム全体の作業を調整する専任のプロジェクトマネジャーが必要だ。それによりチームはプロジェクトの進行状況を継続的かつタイムリーに把握しやすくなる」
同氏はまた、ユーザートレーニングの機会を生かして組織全体に新しい機能の導入を促すべきとも付け加えた。
マーティン氏によると、今後12〜18カ月で従業員のモビリティー、動画およびチャットは音声と同じくらい実際的な価値を持つものになるという。
「従業員はいつでもどこでも作業できることを求めている。これはIT部門が越えるには高いハードルだ。これからの従業員に力を与え、場所や端末を問わない動画、チャット、音声サービスを統合するスイートを提供できるプロバイダーはもっと増えると予想される」とマーティン氏は述べる。
仮想現実、拡張現実、5Gなどの技術が消費者の人気を集めている。その中で、これらの技術が企業向けUCに取り入れられることが、多様な職場の実現に向けた最初の一歩になる。
「音声アシスタントの調査は、テレプレゼンスシステムの制御、会議への参加、ドキュメントの取得のような単純なタスクに対応するために既に行われている」とマーティン氏は補足した。
AIがコンタクトセンターに導入されているのと同様、UCaaSでもAIが組み込まれることは今後18カ月の間に右肩上がりに増えていくとダーミ氏は話す。
「自動化されるUCaaSの要素が増えるのに伴い、サービスは新たな興味深い形に進化し、企業にとっての魅力はさらに増すだろう」(ダーミ氏)
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