女子テニスの選手やコーチはデータを活用して、対戦相手の戦術の傾向を明らかにできるようになった。一方で実力に伴う資金力の差が、さらなる格差を生む懸念がある。その打開策を模索するWTAがSAPと組んだ狙いとは。
2019年10月27日、中国深センで世界トップの女子選手を集めたテニス大会「WTAファイナルズ」が開催された。この大会では、選手が試合最初のサーブ(始球)を打ち、相手選手がリターン(返球)やパッシングショット(ネット際に近づいてきた相手の脇を抜く打球)を試みた瞬間から充実したデータが集められ、コーチや選手がそのデータを扱えるようになった。これまで利用できなかったデータをリアルタイムに活用できるようにしたのだ。その手段として大手ソフトウェアベンダーSAPのソフトウェア「SAP Tennis Analytics」の新しい機能を生かしている。
SAP Tennis Analyticsの新機能「Patterns of Play」が、WTAファイナルで公式戦デビューを果たした。Patterns of Playは、女子テニス協会(WTA)とSAPが2019年10月16日に発表した。WTAファイナルズは女子プロテニスツアーの2019年最後のビッグトーナメントだ。SAP Tennis AnalyticsはSAPとWTAが協力して、WTAツアーに出場する選手やコーチ向けの分析ソフトウェアを作ることを目的に開発された。Patterns of Playはその最新アップデートだ。
コーチや選手はPatterns of Playを使うことで初めて、さまざまな状況下で選手がどのようにポイントを取るのかだけでなく、ポイントを争う中で選手がどのようなプレーを選択するかも分かるようになる。つまりポイントを取るための連続する動きの中で、どのように一連のショット(打球)を選んでいるかが分かる。
データは試合の進行に伴いリアルタイムで15秒ごとに更新される。コーチは選手が繰り広げるプレーを見守りながらタブレットでこうした情報を確認できる。
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