「Zoom」のサービス障害が2020年8月に発生し、新学期を間近に控えた米国の教育機関はトラブルに見舞われた。オンライン授業を支えるWeb会議ツールのサービス障害が浮き彫りにしたものとは。
2020年8月24日(米国時間)、Zoom Video CommunicationsのWeb会議ツール「Zoom」で部分的なサービス障害が発生した。この障害により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のために対面授業の代替としてZoomによるオンライン授業を実施していた教育機関で、授業に支障が出た。一般的に米国の教育機関は9月入学制だ。新年度に向けた準備が進む中で発生した今回の障害は、大きな影響をもたらしたとみられる。同社はこれを受けて、Zoomを使っている教育機関で授業の開始が遅れたことを謝罪した。
教員や学習者が短文投稿サービス「Twitter」に投稿したツイートによると、米シャドーヒルズハイスクール(Shadow Hills High School)、インディアナ大学(Indiana University)、パデュー大学(Purdue University)は、Zoomが復旧するまで授業を中止または延期した。リーハイ大学(Lehigh University)をはじめ、別のWeb会議ツールを使って授業を進めた教育機関もある。
障害追跡サイト「Downdetector」によると、今回のZoomの部分障害に関する報告は、ピーク時で約1万7000件に達した。この事件から、COVID-19対策として教育機関や企業が、どれほどWeb会議ツールに依存しているのかが浮き彫りになった。
クレムソン大学(Clemson University)講師のアナ・マリー・バグノッツィ氏は、この障害の影響で1つの講義を開講できなかった。「学生から寄せられた障害に関する質問メールに返信することと、学生それぞれの環境に応じた方法で宿題をこなしてもらうための手配に追われた」とバグノッツィ氏は言う。
Zoom Video Communicationsの製品・エンジニアリング担当プレジデントであるベルチャミー・サンカーリンガム氏は、2020年8月24日深夜に発表した声明で障害の原因を説明した。それによれば、「アプリケーションレベルのバグ」により、エンドユーザーのログインに問題が発生したという。「皆さまを失望させたことを申し訳なく思う。現在もこれからもZoomが世界中の人々を安定してつなげられるよう、コラボレーションとクラウドに関する技術の拡張に重点的に力を入れる」(サンカーリンガム氏)
今回の障害に至るまで、Zoomではしばらくの間、大きなサービス障害は発生していなかった。これは「ここ数カ月で採用が急拡大したことを考えると素晴らしい」と、調査会社Nemertes Researchのアナリストであるアーウィン・レイザー氏は評価する。Zoom Video Communicationsが2020年7月に公開した決算発表によれば、従業員10人以上のZoomユーザー企業は26万5400社に上り、前年比354%増となった。
一部の教育機関や教員は、Zoomに障害が起きた場合でも授業を継続できるよう、バックアップ施策を用意していた。米ミシガン州トロイで小学5年生を教えるグレイソン・マッキニー氏もその一人だ。マッキニー氏は今回の障害発生の翌週に授業が始まることを踏まえ、もしその時点でZoomに障害が発生していれば、「春と同様に、前もって収録しておいた授業に切り替える」と決めていた。
収録された映像での授業には、Web会議ツールを利用した授業のような双方向性はない。「Web会議ツールによる授業には一体感があり、児童は教員からリアルタイムにフィードバックをもらって質問できる」とマッキニー氏は言う。「今回の障害を機に、教育機関をはじめとする組織は、業務に対する支障を最小限に抑えるためのバックアップ施策を考えるようになるだろう」と、調査会社Futurum Researchでアナリストを務めるダニエル・ニューマン氏は見解を示す。
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