企業が「5G」のプライベートネットワークを構築・運用する場合、「ローカル5G」と「ネットワークスライシング」が選択肢になる。セキュリティ重視であればローカル5Gが選ばれそうだが、話はそう単純ではない。
「5G」(第5世代移動通信システム)をプライベートネットワークとして構築すればコストはかかる。だが自社の用途に合わせたカスタマイズ、きめ細かなインフラの管理、データの安全性の確保の実現といったさまざまなメリットが得られる。
例えば下記のような用途を考えた場合、独自のネットワークインフラを構築・運用する「ローカル5G」や、通信事業者の物理的なネットワークを論理的に区切る「ネットワークスライシング」といった、5Gのプライベートネットワーク(以下、プライベート5G)を構築・運用する重要度は高い。
こうした用途において、セキュリティや信頼性は重要な要件になる。5Gは従来の移動通信システムと比べて高度な暗号化技術を採用するなど、セキュリティが強化されている。ただし、それでもセキュリティが侵害されるリスクはある。結果的に大企業は、通信事業者の物理的なネットワークを他の企業と共有するネットワークスライシングに不安を感じ、独自のインフラを持つローカル5Gを選ぶと考えるのが自然だ。
だが話はそれほど単純ではない。
大企業はシステムがパブリックなインフラから切り離され、自社で完全に制御可能であることを望む。「これは信頼性の要件に関わる」と、調査会社Technology Business Research(TBR)でアナリストを務めるクリス・アントリッツ氏は語る。結局、大企業はセキュリティ侵害が発生する可能性があるネットワークスライシングを信頼しないと考えられる。データが流出する可能性があるインフラに、自社の重要なデータを置きたくないと考えるのは当然だ。
ただしローカル5Gの構築は綿密な計画を要する。第一に企業は無線局の開設や運用の免許を取得する必要がある。さらにネットワーク構成や地理的なカバー範囲、ローミング設定、ソフトウェア・機器のアップグレードなども自社で担わなければならない。
セキュリティへの不安は残りつつも、ネットワークスライシングが中堅・中小企業(SMB)にとっても大企業にとっても魅力的な選択肢であることに変わりはない。2025年までに幾つかの通信事業者がネットワークスライシングによって、SMB向けの低コストの従量課金型5Gサービスを提供するようになると、TBRは予測する。こうしたサービスの場合、ユーザー企業はコンシューマー向けの5Gサービスのように使った分だけ料金を支払えば済む。
ネットワークインフラ専門のリソースやノウハウを持つ企業は多くない。プライベート5G用のインフラを構築するには、5Gを定義する無線技術の「5G NR」(NR:New Radio)、5Gの基幹インフラである「5Gコアネットワーク」、有線および無線による通信など、さまざまな知識と技術が必要になる。通信事業者が提供するパブリックのネットワークインフラを使えば、免許取得やネットワークのメンテナンスといった煩わしい仕事をせずに、SLA(サービス品質保証契約)に支えられた5Gサービスを利用できる。
TBRによると、ネットワークスライシングはLANよりもWANに適している。規模の小さい企業にとって、向こう数年の間はネットワークスライシングがプライベート5Gへの「入り口」になるとアントリッツ氏は予測する。
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