産科瘻孔を減らすデータ分析【後編】
Tableauが“世の不条理”を映し出す――非営利団体がデータ視覚化で得た効果
産科瘻孔の問題を減らすことを目的とする非営利団体Operation Fistulaは、さまざまなデータを「Tableau」で視覚化し、プロジェクトで活用している。同団体がデータの視覚化を活用して成し遂げたこととは。
非営利団体Operation Fistulaは、世界各国の特定地域で発生する分娩(ぶんべん)外傷「産科瘻孔(ろうこう)」の問題に立ち向かう非営利団体だ。産科瘻孔は女性が社会的に見捨てられている地域でよく見られ、適切な医療を受けられないという社会的事情がリスクとなる。同団体は、分析データを活用して産科瘻孔を減らすためのさまざまなプロジェクトに取り組んでいる。前編「お産時の損傷『産科瘻孔』をデータ分析で防ぐ 非営利団体が選んだ製品は」、中編「医療問題に取り組む非営利団体は『データウェアハウス』(DWH)をどう選んだのか」に続く後編となる本稿は、同団体がデータ活用で得た成果を紹介する。
データ視覚化がもたらした成果
Operation Fistulaは分析技術を導入する以前から、特定地域で発生した産科瘻孔の患者数や10代の少女の婚姻率といった男女不平等指数を追跡していた。同団体は、このようなデータを洞察に変える力が足りないことを課題に感じていた。これは一般企業が抱えているのと同じ問題で、大量のデータはあるものの、どう対処すればいいのか分からない状況だ。批判的な見方をすると、仮にデータを活用できたとしても、その成果物に他の人が簡単にアクセスすることができていない状態だった。
現在、Operation Fistulaはデータ分析のためにさまざまなツールを活用している。データ収集にはDimagiの「CommCare」、CommCareのデータ抽出にはAlteryxの「Alteryx Analytic Process Automation Platform」、データウェアハウスは(DWH)はExasolの同名ツール、データの視覚化はTableau Softwareの「Tableau」といった具合だ。
Exasolでビジネスインテリジェンスの責任者を務めるエバ・マリー氏によると、Operation Fistulaは長い間、データから洞察を得るためにコストをかけて奮闘してきた。同団体は団体内の誰もがデータを利用でき、Tableauを使って必要なときにレポートを手に入れられるようにした。個人レベルでは、質問を投げ掛けて、それに対する答えを得られるようになった。「新しい技術を取り入れるにつれて、データ活用能力は向上した」(マリー氏)
Operation Fistulaはデータによって自ら結論を導き出せるようになっただけではなく、データを適切に使用して、考え方を変えられるようにもなった。同団体がTableauでグラフ化したデータは、治療を受けていない産科瘻孔の患者数を地図上に示す。このグラフは、未処置のままだとどうなるかを示すドキュメントよりもずっとインパクトがある。
中でも、視覚化したデータは政府機関や資金提供者に対して高い説得力を発揮するという。Operation Fistulaの創設者兼CEOを務めるセス・コクラン氏は「データを視覚化して提示すると、最終的にはその部屋にいる半数の人が私たちのところに足を運んでくれる」と語る。視覚化は非常に効果的で、特に「政府機関の反応は圧倒的に好意的になる」とコクラン氏は指摘。「視覚化は、物事を観念的かつ具体的に示すのに有効だ」と説明する。
Operation Fistulaの今後
Operation Fistulaは、産科瘻孔の処置を必要とする場所と、状況の改善を目標とする地域で今後も活動を続ける。近年はマダガスカル共和国の50個のコミュニティーで、産科瘻孔に終止符を打つ新たな取り組みを始めた。マダガスカルのプロジェクトは、データによって進化を続けるにつれて、他の活動のモデルケースにもなるとOperation Fistulaは考えている。
全世界で、全ての産科瘻孔患者に治療の機会を提供するという最終目標を達成するために、Operation Fistulaは産科瘻孔に取り組む他団体とデータを共有する計画を立てている。
分析技術を導入した2017年ごろから現在に至るまで、世界各地で活動するOperation Fistulaのメンバーがデータを活用する能力は、向上し続けているという。同団体は現地スタッフのスキルアップを図って、医師との継続的な信頼関係を構築し、外科手術を発展させてより多くの患者を助けられるようにしている。その結果、同団体はさらに多くのデータを入手できるようになる。「このサイクルは長続きするだろう」とマリー氏は語る。
教育的な観点では、Operation Fistulaは「Visualize Gender Equality」というプロジェクトを進めている。TableauとExasolを使用し、女性が直面している不公平な状況を視覚的に示すデータを公表することで、世界中で問題の認識が進み、コラボレーションが推進することを期待している。
「産科瘻孔の発生率は、女性に不利な社会的事情が存在することを示す指標の一つだ」とマリー氏は話す。Operation Fistulaが目指しているのは、この事実を明るみに出すことだ。TableauやExasolによるデータの視覚化は「それを実現するうってつけの方法になる」(同氏)。
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