「DRaaS」「クラウドDR」の基本的な違いとは? 2大DR手段を比較クラウドサービスを使った災害対策

「DRaaS」と「クラウドDR」はDR(ディザスタリカバリー)を実現するという最終的な目標は同じだが、それぞれ異なる長所と短所がある。両者は何が違うのか。

2020年10月19日 05時00分 公開
[Brien PoseyTechTarget]

 主要なバックアップベンダーは、クラウドサービスを使ったDR(ディザスタリカバリー)サービスを何らかの形で提供している。DRを実現する手段である「クラウドDR」と「DRaaS」(Disaster Recovery as a Service)は、クラウドサービスを使う点で同じだが、両者には大きな違いがある。

 クラウドサービスの普及によって災害時の事業継続の方法が変わった。以前はミッションクリティカルなシステムを立地の異なるデータセンターで冗長化し、フェイルオーバー(予備のシステムに自動的に切り替えること)させるインフラを構築していた。この方法でも事業継続の観点では問題はないが、コストが高くつく。そのためクラウドサービスが普及する前は、DRを実現できる企業は大企業が中心だった。

 クラウドサービスが登場したことでDRははるかに実現しやすくなった。クラウドサービスを使ったDRを検討する際は、クラウドDRとDRaaSの違いを明確に把握しておくべきだ。

クラウドDRとは

 クラウドDRという用語はやや曖昧な定義のまま使用されている。単にクラウドサービスで運用するデータをバックアップ対象としたり、データをクラウドストレージに複製したりする方法もクラウドDRとして扱われることがある。だがこれらは「クラウドバックアップ」と定義する方が適切であり、クラウドDRではない。

 真のクラウドDRは、障害発生時にシステム稼働をクラウドサービスの仮想マシンにフェイルオーバーさせることが基礎にある。DRaaSも本質的にはこれと同じだが、クラウドDRとDRaaSには重要な違いがある。

 クラウドDRは、DRに対するDIY(日曜大工)型の手法だ。システムの稼働環境をクラウドサービスに複製したり、フェイルオーバーの方法を構築したりするのはユーザー企業側の役割になる。基本的には非常事態時のシステム稼働インフラとして「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」などのクラウドサービス群のIaaS(Infrastructure as a Service)を利用する。

DRaaSとは

 DRaaSはクラウドサービスをベースにした既成のDRサービスだ。主要なDRaaSはレプリケーション(複製)やフェイルオーバーなどを自動化する機能を含む。システムが復旧したら直ちにフェイルバック(代替システムから元のシステム稼働に戻すこと)を実行するツールも提供する。

 結局のところ、DRaaSとクラウドDRは異なるアプローチではあるが同じ結果をもたらす。どちらか一方が優れているわけではなく、どちらの手法にもそれぞれ長所と短所がある。

クラウドDRの長所と短所

 クラウドDRを使用する主なメリットは、設計の自由度が高い点にある。ユーザー企業は自社の要件を十分に満たす仕組みを構築できる。複数のクラウドサービスにまたがるDR機能を実現することも可能だ。

 一方でかなりの専門知識が求められる点がクラウドDRのデメリットになる。IT部門のスタッフは、クラウドサービス、DR手法、仮想ネットワークなどの分野について深く実用的な知識を必要とする。

DRaaSの長所と短所

 DRaaSを扱うことは比較的容易だが、設計の柔軟性に劣る傾向がある。DRaaSベンダーは災害発生時にユーザー企業が機能停止を回避できるように支援することをサービス提供の基礎に置く。従ってDRaaSベンダーは、ユーザー企業が重要なシステム運用を継続できるようにさまざまな手段を使う。そうした既成の仕組みをすぐに利用できることがDRaaSのメリットになる。

 反対にDRaaSのデメリットとして2点挙げることができる。1つ目は、DRaaSは事前構築済みのサービスであるため、クラウドDRほど自由にDR機能を設計することはできない点だ。DRaaSベンダーの中にはDRの仕組みとして画一的な手法しか提供しないベンダーもある。

 DRaaSのデメリットになる可能性がある2つ目の点は、大規模災害に対する備えが不十分な恐れがあることだ。想像を絶する災害によって地域全体が壊滅状態になれば、その地域に属する多数の企業が同時にDRaaSによるフェイルオーバーを開始することになる。DRaaSベンダーがそのような同時多発的なフェイルオーバーに対処できるネットワークの帯域幅(回線容量)やハードウェアのスペックを用意していなければ、十分にDRが機能しない懸念がある。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€驛「譎擾スク蜴・�。驛「�ァ�ス�、驛「譎冗樟�ス�ス驛「譎「�ス�シ驛「譏懶スサ�」�ス�ス

市場調査・トレンド 横河レンタ・リース株式会社

PC運用管理者1030人に聞いた「PC運用の実態調査」、担当者を悩ます課題と解決策

近年の情報システム部門は多数の業務を抱えており、中でもPCの運用・管理担当者の業務負荷をいかに軽減するかが大きな課題となっている。1030人を対象に行った調査をもとに、PC運用・管理業務のあるべき姿を探った。

事例 Asana Japan株式会社

“208カ国の壁”を突破しスズキが残業35%減を実現、その全貌とは

“100年企業”スズキでは、DX推進のアクションプランに、「仕事のシンプル化」「ムダの削減」「全社的な可視化」を挙げている。同社はあるツールを導入したことで、業務の見える化や標準化、残業時間の35%削減を実現したという。

製品資料 SUSE ソフトウエア ソリューションズ ジャパン株式会社

システム乱立やコスト増の課題も、マルチLinux環境の運用をどう効率化する?

企業では「マルチLinux」環境が有効な取り組みとして浸透しているが、一方で管理の複雑化という課題も浮上している。本資料ではマルチLinux環境が浸透してきた背景やその利点を整理し、新たな課題の解決策について解説する。

製品資料 株式会社エクサ

AI時代のデータ管理術、低コストかつセキュアな環境を構築するための方法とは?

 デジタル化やクラウド利用の進展に伴い、企業のデータ量は増加し続け、これを狙うサイバー攻撃も激化している。データを守るためには保管場所が必要だが、低コストかつセキュアな環境を構築するためにはどうすればよいだろうか。

製品レビュー 株式会社ソフトクリエイト

Windows 11アップデートで発生しやすい問題とは? 円滑なOS移行方法を解説

Windows 10のサポート終了が迫り、Windows 11へのアップデートを考えている組織も多いことだろう。当然、アップデートには失敗したくないはずだ。ポイントを本動画で把握して、スムーズなOS移行を実現したい。

驛「譎冗函�趣スヲ驛「謨鳴€驛「譎「�ス�シ驛「�ァ�ス�ウ驛「譎「�ス�ウ驛「譎「�ソ�ス�趣スヲ驛「譎「�ソ�スPR

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

「DRaaS」「クラウドDR」の基本的な違いとは? 2大DR手段を比較:クラウドサービスを使った災害対策 - TechTargetジャパン システム運用管理 髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€鬮ォ�ェ陋滂ソス�ス�コ�ス�ス

TechTarget驛「�ァ�ス�ク驛「譎「�ス�」驛「譏懶スサ�」�趣スヲ 髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€鬮ォ�ェ陋滂ソス�ス�コ�ス�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...