画像処理の研究者にして開発者でもあり、JPEG XLの仕様策定にも関わっているスナイアーズ博士が、JPEG XLの特徴を解説する。JPEGからの移行は進むだろうか。
本稿は、Cloudinaryでシニアイメージリサーチャーを務めるジョン・スナイアーズ博士が自身の経験と知識を踏まえて執筆したゲスト投稿だ。スナイアーズ博士は「JPEG XL」専門部会の共同議長を務めている。
スナイアーズ博士が考案したFLIF(Free Lossless Image Format)は、一部がJPEG XLのベースになっている。同博士の画像処理技術「Muscles from Brussels」は最適化された画像を超高速で配信するのに役立つ。
JPEG XLはWebで高品質の画像を配信するために考案された新しい画像コーデックで、忠実度の高い圧縮とプログレッシブレンダリングが注目されている。このコーデックの次期バージョン「JPEG XL 0.2」のフリーズは目前に迫っている。フリーズの時点で、過去と将来の全てのJPEG XL画像は今後のバージョンのコーデックと互換性があることになる。
現在一般的な画像フォーマット(JPEG、GIF、PNG)が考案されたのは1980年代から90年代にかけてのことだ。当時はモバイルトラフィックもアプリトラフィックもなく、当然、レスポンシブWebデザインも4K HDR画面もなかった。しかも、長い間更新もされてこなかった。
新しい画像フォーマットの戦いが始まっている。ここ10年の間に「WebP」「HEIF」「AVIF」、JPEG XLなど、現在のデジタルエクスペリエンスにより最適化されたパフォーマンスの高い新しい画像フォーマットが作成されている。本稿では、中でもJPEG XLが際立っている理由を説明する。
JPEG XLは、画像専用だ。WebP(VP8ベース)、HEIF(HEVCベース)、AVIF(AV1ベース)のように動画コーデックから派生したものではない。動画コーデックはシーケンシャルなデコードしか提供しないため、画像は完全に読み込まれるまで表示されない。これに対してJPEG XLは画像を段階的にデコードする。最初に低品質の画像プレビューを表示し、データが読み込まれるにつれて細部を追加する。異なる機器、ブラウザ、ネットワークに対応するために画像のバリエーションを格納する必要もない。
JPEG XLは、広い色域、高いダイナミックレンジ、深いビット深度の画像をサポートする。動画コーデックベースの画像フォーマットは低いビットレートを極めて巧みに処理し、一見見栄えのする画像を生み出す。だが詳しく調べると、「可塑性」が見えることがある。この可塑性は40ミリ秒未満でフレームを表示する動画なら問題にはならない。だが、画像は高画質が求められることが多い。JPEG XLの効率の高い圧縮はこの可塑性の影響を防ぐ。
JPEG XLのレファレンスエンコーダーが生み出す十分圧縮された画像は、元の画像と見分けがつかない。他の画像フォーマットは「品質」設定を1~100で設定できるエンコーダーを使用する。この品質設定は知覚的ではない。そのため、ある画像では品質設定60のJPEGで適切に見えるのに、別の画像では品質設定90のJPEGという面倒な加工を含む場合がある。
JPEG XLには、アニメーション、アルファチャンネル、レイヤー、サムネイル、ロスレス、プログレッシブコーディングなどの機能が含まれ、幅広いユースケースをサポートする。新しいアプリケーション向けには360度画像、画像バースト、大きなパノラマやモザイク、印刷をサポートする。
JPEGとは異なり、写真だけではなくそれ以外(イラスト、スクリーンショット、ゲームグラフィックス、地図など)も設計の対象になっている。開発者はこのフォーマットをローカルストレージとして使うことも、高速かつ効率的なロスレス圧縮と深いビット深度が重要な場合に画像作成ワークフローの交換フォーマットとして使うことも可能だ。
では、レガシーフォーマットとの親和性はどうだろう。JPEG XLには、依然72%のWebサイトで使われているJPEG画像からの変換機能も幾つか含まれている。これによりストレージ(単一のJPEG XLでJPEGクライアントとJPEG XLクライアントの両方にサービスを提供できる)とファイルサイズ(既存のJPEGファイルをロスレスでJPEG XLに変換できる)を削減できる。
JPEG XLは、計算効率の高いエンコードとデコード用に設計されている。JPEG XLはモバイル端末でもハードウェアアクセラレーションを必要としないソフトウェア実装を使用する。
JPEG XLを試すとしても、大規模な採用は2021年に最終草案国際標準が提出されるまで待つことをお勧めする。
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