Amazonの車載カメラの是非を問う【後編】
「監視映像」をビジネスに生かすのはあり? Amazon車載カメラが投げ掛ける課題
企業がカメラで撮影した映像は、さまざまなビジネスに応用できる可能性がある。一方で映像を活用する際はプライバシーの問題を無視することはできない。ビジネスとプライバシーのバランスをどう考えればよいのか。
「ドライバーと地域の安全を守る」という目的の下、Amazon.comは配送車両に車両管理ソフトウェアベンダーNetraDyneのAI(人工知能)技術を組み込んだカメラを搭載して、車内外を撮影している。これに対してプライバシー保護の観点から専門家が複数の問題を指摘していることは、中編「Amazon配送車の車載カメラが引き起こす4つのプライバシー議論」で説明した通りだ。
「Amazon.comは車載カメラ以外にも同社が収集するさまざまな顧客データを組み合わせることで、ほぼリアルタイムで顧客とその行動を監視できる」。そう指摘するのは、セキュリティ分野の調査会社Analyst Syndicateでアナリストを務めるフレンチ・カルドウェル氏だ。
「個人の居場所特定サービス」も実現? 監視映像のビジネス利用の是非
Amazon.comもしくは他の企業は自社で収集した膨大な量のデータを収益化して、位置情報サービスやトラッキングサービスといった新しいサービスを打ち出すことができるのか。インディアナ大学(Indiana University)の研究担当バイスプレジデントで、プライバシーとセキュリティ関連の法問題を専門とするフレッド・ケート氏は、「例えば『指定した時間に私の居場所を特定する』といったサービスを企業が立ち上げる可能性がある」と考える。
そうしたサービスへの反対意見は根強い。権利保護を訴える非営利団体Fight for the Futureは、Amazon.comの監視に対する反対運動を立ち上げ、「企業による史上最大の監視」だと批判する。同団体のエバン・グリア副代表は次のように語る。
Amazon.comは巨大な配送車両部隊を「移動式の『Ring』(Amazon.comの監視カメラ付きインターフォン)」にしたい意向です。同社は私たちの居住地や自宅、私たちの子どもの映像を継続的に収集して分析することで、あらゆる人の基本的な権利を侵害します。同社が膨大な量の映像をどのような商業目的で利用しようと、それを規制する法律は存在しません
ビジネスとプライバシー間の線引き
店内カメラ、自治体が設置したカメラ、位置情報など、監視関連の技術で収集したデータを使って企業は何ができるのか、あるいは何をするのかは、依然として分からない。だが可能性を想像するのは難しくない。企業は技術を利用して、動画をはじめ大量のデータを既に収集している。顔認識ソフトウェアやスマートフォンを利用すれば、監視場所にいる個人の特定に加え、データ分析によってそれぞれの人物の詳しい個人情報を入手することも可能だ。
そうしたビジネスの可能性に関して、ケート氏は「今のところ意味のある論議はない」と考える。「私が不安なのは、日常行動の監視について意味のある論議がなされないまま、監視される状況が出来上がりつつあることだ」と同氏は語る。
「現在の法律は、企業による人々の行動の監視を規制できない」と専門家は指摘する。国際法律事務所Dorsey & Whitneyのパートナーで、セキュリティやコンプライアンス、規制法のアドバイザーであるロバート・カタナッチ氏はこう話す。「『取りあえずできるだけ多くのデータを入手してから、それで何ができるかを考える』というスタンスの企業は少なくない」
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