仮想マシン(VM)のコストが「1回見積もれば終わり」ではない理由「VM」のコストを算出する方法【第4回】

VMの稼働に必要なコストを算出する方法を理解したら、実際のコストを見積もってみるとよい。ただし見積もりをする場合には注意すべき点がある。それは何なのか。

2021年11月19日 05時00分 公開
[Stephen J. BigelowTechTarget]

 第1回「仮想マシン(VM)の『固定費』『変動費』とは? 総コスト見積もりの第一歩」と第2回「仮想マシン(VM)コストを左右する『メモリ』『プロセッサ』使用量の計算方法」、第3回「仮想マシン(VM)を1時間動かすために必要なメモリ、プロセッサのコストは?」で、仮想マシン(VM)の稼働に必要な物理サーバリソースの1時間当たりのコストの計算を試みた。第3回はハードウェアの基本コストと利用可能なリソースを基に、1時間当たりのコストを計算したにすぎない。ソフトウェアのライセンス料金やネットワーク接続料金など、コンピューティング以外の項目の月額コストも計算する必要がある。こうした要素についても同様に、年間コストや月次コスト、VM1台当たりの月次コストなどを計算する必要がある。

 以下の表2は、本連載が想定するインフラ(第1回参照)におけるコンピューティング以外の固定費を表す。本稿はVMの数を200個と仮定した。

表 物理サーバ1台当たりのその他の固定費
コスト項目 ライフサイクル(3年)コスト 年間コスト 月次コスト VM1個当たりの月次コスト
ハイパーバイザー(ライセンスと保守サポートの合計) 7万ドル 約2万3333.3ドル 約1944.44ドル 約9.72222ドル
OS 6万ドル 2万ドル 約1666.67ドル 約8.33333ドル
物理サーバの保守サポート 3万ドル 1万ドル 約833.333ドル 約4.16667ドル
ネットワーク接続 1万5000ドル 5000ドル 約416.667ドル 約2.08333ドル
管理ソフトウェア(注) 1万ドル 約3333.33ドル 約277.778ドル 約1.38889ドル
管理ソフトウェアの保守サポート 6000ドル 2000ドル 約166.667ドル 約0.833333ドル
合計 19万1000ドル 約6万3666.7ドル 約5305.56ドル 約26.5278ドル
※注:ライセンス当たりのコスト。管理ソフトウェアの機能によっては複数のライセンスが必要になる可能性がある。

 本連載で取り上げた手法はVMにかかるコストを算出するためのシンプルな方法の一つにすぎない。自社で考慮すべき事項に合わせて、ネットワーク帯域幅(回線容量)やデータセンターの光熱費など、他のコスト要素を追加して計算してもよい。

コスト計算で注意すべきポイント

 こうした手法は利益を生み出すことが目的ではなく、社内のインフラの適切な予算と、その請求方法を策定することが目的だ。IT部門が社外の利用者にインフラを提供し、利益を生み出すのであれば、これに利幅を加えて計算する必要がある。

 コスト分析は1回限りの作業ではない。ボリュームディスカウントによるサーバコストの低減や稼働させるVMの数の増加など、本稿が取り上げた主要なコスト要素が大きく変動すると、VMの稼働に必要な金額が大きく変わる可能性がある。またこの分析はソフトウェアやネットワーク利用料金など変動費の値上がりを含めていないことにも注意が必要だ。IT部門の責任者は、インフラの調達にかかるコストとそれ以外のコスト要素を定期的に見直し、再計算する必要がある。

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