「テープ」が大容量化でHDDを置き去りに? 10年で数十倍増も実現か見直される「テープ」の存在【後編】

日々さまざまなデータを扱う中で、企業が保管するデータは増える一方だ。こうした中でデータ保管用のストレージとして進化を続ける「テープ」の注目点を紹介する。

2022年01月13日 05時00分 公開
[遠藤文康TechTargetジャパン]

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LTO | ストレージ


 「テープ」は過去の技術として捉えられがちだが、実は最新のテープは注目に値する進化を遂げている。法人向けストレージの現代のデファクトスタンダードになっているのは、第1世代が2000年に登場した「LTO」(リニアテープオープン)。Hewlett Packard Enterprise(HPE)、IBM、Quantumが構成する業界団体「LTO Program Technology Provider Companies」(以下、TPCs)が規格を策定しており、2020年に登場した「LTO-9」が最新版だ。

 2010年に登場した「LTO-5」以降の規格はファイルシステム技術「LTFS」(リニアテープファイルシステム)を採用。LTFSは「Windows」「Linux」などの主要OSからデータをファイル形式で操作したり、ファイル単位でデータを移動させたりできるので、コールドデータ(利用頻度が極めて低いデータ)のアーカイブ用途としてより活用しやすくなっている。コールドデータ向きであるテープの特性については前編「『テープ』復活は確実か? 認めざるを得ない“実は古くない”ストレージの利点」で紹介している。

 これから注目すべき動向の一つは大容量化だ。テープカートリッジを製造する富士フイルムの記録メディア事業部長、武富博信氏は「平均して年率30%ほどの大容量化が見込める」と話す。LTO-9の容量(非圧縮時)が1巻当たり18TB(圧縮時は45TB)であることを前提にすると、2030年ごろには1巻で数百TBが実現することになる。それほどの大容量化がなぜ可能なのだろうか。

テープの大容量化のペースはHDD以上 なぜそれが可能なのか

 テープと同様にアーカイブ用に使われることもあるHDDの大容量化も年々進んでいる。2021年にSeagate Technology、Western DigitalなどHDDベンダーが容量20TBの製品を発表した。ベンダー各社のロードマップによれば、2020年代後半には50TBのHDDが登場する見込みだ。

 LTOは、第1世代「LTO-1」の容量(非圧縮時)100GBに始まり、新世代が出るたびに容量をほぼ倍増させてきた。TPCsは「LTO-12」までのロードマップを公表しており、LTO-12の容量(非圧縮時)は144TB(圧縮時360TB)となる。2、3年のペースで新規格が出ている事実を前提にすると、LTO-12製品が出るのは2030年手前ごろだと想定でき、容量増加のペースはHDDを上回ることになる。

 幅12.65ミリのプラスチックフィルムに磁性体を塗布し、そこにデータの記録領域であるトラックを並べたものがLTOテープの基本構造となっている。これを前提にして、武富氏はテープの容量を増大させる方法について「磁性体の微粒子化」「トラック数の増加」「テープの薄膜化(テープ長の長尺化)」の3つの掛け合わせだと説明する。

 富士フイルムはIBMと共同で、1巻当たり容量580TB(非圧縮時)を実現する新技術を2020年12月に発表した。富士フイルムのLTO-9のテープカートリッジは磁性体に「バリウムフェライト」(BaFe)を使用している。これに対して新技術は、磁性体としてより磁気特性が高く微粒子化も可能な「ストロンチウムフェライト」(SrFe)を使用することで、大幅な容量増大につなげている。LTOのどの世代でこの新技術を使用するかは決まっていないものの、既に量産化のめどは立っているという。

 同様に、ソニーグループ(LTOテープの開発、製造、販売はソニーストレージメディアソリューションズ)も2017年8月に約330TBの容量(非圧縮時)を実現する技術を発表した。同社によれば、この新技術の実用化に向けた取り組みを継続中だ。

LTOテープの「データ転送速度」は高速

 容量以外にもテープの注目すべき進化はある。LTO-9のデータ読み書きそのものに影響する「データ転送速度」は400MB/秒(非圧縮時)となっている。Seagate Technologiesが2021年に出荷を開始した容量20TBのHDD製品のデータ転送速度は最大285MB/秒なので、これと比べればデータ転送速度はLTOテープの方が速い。

 ただしテープは“遅い”技術だと一般的に考えられている。これはテープドライブとテープカートリッジが分離した仕組みであることから、データへのアクセス速度(データ読み書きの準備が整うまでの時間)がSSDやHDDよりも遅くなるためだ。テープはあくまでも、コールドデータをより安価に保管することに適したストレージ。SSDやHDDから古くなったデータを切り出してテープにアーカイブすることが有効な使い方だと言える。

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