リスクを最小化して成果を出すに当たり、CIO(最高情報責任者)とCISO(最高情報セキュリティ責任者)の協力体制は重要だ。だが両者はしばしば対立する。それは人間性に起因する問題ではなく、構造的なものだ。
事情を知らない人が見れば、いずれも技術職であるCIO(最高情報責任者)とCISO(最高情報セキュリティ責任者)は相互に助け合うのが自然なことだと思うだろう。しかし現実はそうでもないことを、CIOはよく知っている。
両者の関係改善は、ビジネスリスクを最小化し、目標の達成を目指すに当たって重要なことだ。そのためにはソフトスキル、つまり他の経営幹部や従業員とのコミュニケーション、そして相互理解が必要となる。
本稿はCIOとCISOの関係における特徴や典型的な報告体制、関係を改善するための取り組みを紹介する。
CIOとCISOは、しばしば互いに反感を抱き、その気持ちを敵対心へと発展させてしまう。このことが企業の不利益につながる可能性がある。これはCIOやCISOの役割を担う人の人間性が原因なのではなく、むしろ2つの役割の間にある根本的対立によるものだ。
ITを使ってビジネスの成果を生むことがCIOの仕事だ。一方でCISOは、ITによって起こり得るリスクを低減させることを仕事とする。言い換えれば、CIOの仕事は「イエス」と言うことであり、CISOの仕事は「ノー」と言うことだ。
CIOは、自社へのシステム導入でコストをかけすぎたり、約束通りに本番環境に展開できなかったり、といった失敗をしたら解雇される可能性がある。CISOは、自分の失敗か否かを問わず、会社が深刻なセキュリティ侵害を受けたら解雇される可能性がある。つまり、CIOの活動がCISOの失職の原因を作る可能性がある。
CISOの立場から状況を見ることで、CIOは両者の関わり方をより良いものに変えられるだろう。
CIOとCISOの間にある緊張状態を緩和する方法の一つは「報告体制」の構築だ。企業にとって最もうまく機能する報告体制を取り入れるといいだろう。
一般的にCISOはCIOの直属組織にいて、有事はCIOに報告する。だがCISOがCIOに報告をする体制は理想的ではない。上司であるCIOが何かをしようとしているのに、直属の部下であるCISOがそれを望まない場合、どちらの考えが優先されるかは考えるまでもない。
では誰に報告すればいいか。妥当な報告先はCEO(最高経営責任者)だろう。それ以外にはCRO(最高リスク責任者)、CLO(最高法務責任者)、CFO(最高財務責任者)など、技術的なリスク判断ができ、全社のリスクアセスメント(リスクの特定、分析、評価という一連のプロセス)を職務とする者が候補になる。
「良い(good)」「より良い(better)」「最も良い(best)」という観点から言えば、小さな企業であったとしてもCISOが在籍しているのは良いこと(good)だ。そのCISOが属する組織は、指揮命令系統においてCIOの数段下ではなく、CIO直下の方がより良い(better)。最も良い(best)のは、CISOの直属の上司がCIOではなく、会社の経営幹部であることだ。
中編は、CIOとCISOが良好な関係を構築する5つの方法のうち、「CISOを『直属の部下』ではなく『同僚』として接する」「『リスク』を議論の軸にする」を紹介する。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
企業にとっては、いかに優秀な人材を確保するかが大きな課題となっている。そこで、AIとスキルインテリジェンスを活用することで従業員満足度を高め、定着率の向上、ビジネスの成長へとつなげていくための3つのステップを紹介する。
従業員にさまざまなサービスを提供するHR業務に、生成AIを導入する動きが加速している。生成AIは、HR業務が抱えている課題をどのように解決し、従業員エクスペリエンス(EX)の品質向上と組織全体の生産性向上に貢献するのだろうか。
紙やExcelを用いた人事評価業務では、進捗管理やデータ集計に多大な労力がかかってしまう。そこで本資料では、評価ツールを導入することで、評価に関わるさまざまな作業を効率化することに成功した事例を紹介する。
2019年4月から時間外労働の上限規制が労働基準法に規定され、特別条項付きの36協定を締結した場合でも厳守しなければならない、時間外労働の限度が定められた。本資料では、36協定における基礎知識から締結時の注意点まで詳しく解説する。
人手不足が深刻化する近年、新規採用や従業員教育にコストをかける企業が増えているが、その分離職時のダメージも大きく、事業継続に影響が出るリスクもある。そこで、主な離職要因となる6つの問題について、その原因や解決策を解説する。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。