高級ファッションのHermesやスポーツ用品のNikeなどが、非代替性トークン(NFT:Non Fungible Token)による権利侵害を争点に訴訟を起こした。両者の主張とは。
中編「『NFT』が引き起こす知財問題 企業に立ちはだかる「法的な曖昧さ」の影響は」に続き、後編となる本稿も「NFT」(NFT:Non Fungible Token:非代替性トークン)をめぐる知財管理の問題を取り上げる。NFTは、デジタル資産の所有権を証明する手段として、ブロックチェーンに保存する特殊なデータだ。
高級ファッションメーカーのHermes Internationalやスポーツ用品メーカーのNikeは、自社の知的財産権がNFTアート(NFTにひも付いたデジタルアート)の制作者に侵害されたと主張して訴訟を起こした。
Hermesは2022年1月、アーティストのメイソン・ロスチャイルド氏を米国ニューヨークの連邦裁判所に提訴した。同社はこの訴訟で、ロスチャイルド氏のNFTアート「MetaBirkins」が同社のハンドバッグブランド「Birkin」のバッグに類似しており、同社の商標を希釈化していると主張している。
自分の作品は食品メーカーCampbell Soupのスープ缶を題材にしたアンディ・ウォーホル氏の代表的な作品『Campbell's Soup Cans』(キャンベルのスープ缶)と何ら変わらない――。ロスチャイルド氏はこう主張している。同氏の弁護士であるレベッカ・タシュネット氏は「アーティストには、自分を取り巻く世界を表現し、解釈を加える自由がある」と述べる。
Nikeは2022年2月、オンラインマーケットプレースのStockXを相手取る訴訟を起こした。コレクター向け商品の売買サービスを提供するStockXは、「Vault NFT」というプロジェクトを実施している。これは実物のNike製スニーカーにひも付いたNFTアートを購入できるデジタルコレクションで、StockXが販売する9種のNFTアートのうち8種がNike製品に基づくものだという。
StockXがNFTアートにNikeの商標を目立つ形で使用することは、NikeがStockXのプログラムに賛同しているという誤った印象を顧客に与えかねない。そのような誤認は、将来Nikeがメタバースで実施するデジタル製品の販売活動に害を及ぼす可能性がある。
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