IT企業が求めていた「Linux/Windowsではない」意外なITスキルとは?オランダのカリキュラム改革で判明

オランダの中等教育プロバイダーが、新カリキュラム開発の一環としてITスキルの需要を調査した。するとIT企業が求めているのはLinuxやWindowsのスキルではなかった。生徒に何を教えるべきなのか?

2022年05月10日 08時00分 公開
[Kim LoohuisComputer Weekly]

 オランダのROC Mondriaanは、ハーグ地域最大の中等職業教育プロバイダーだ。ハーグ、デルフト、ライデン、ナールトウェイクに26校のスクールを擁し、240種類の中等教育(訳注)コースを提供している。ROC MondriaanのSchool for ITはデルフトとハーグの2カ所にある。

訳注:オランダの中等教育は日本の中学+高校にほぼ相当する。

 「授業は全て『Linux』と『Windows』を基盤としている。現在の教材では指導できない世界が他にもある」と話すのは、School for ITのセバスチャン・ブリーメルト氏(ディレクター)だ。

 そこでSchool for ITは新しいカリキュラムの開発に着手した。まず、生徒が学ぶスキルが市場ニーズに合致しているかどうかを確認するため、卒業生の活動分野や足りない能力をオランダ全土のIT企業に質問した。

 IT企業が求めていたスキルはLinuxやWindowsではなかった。

IT企業が求めていたスキル

iStock.com/Ridofranz

 「『macOS』と『iOS』の管理やプログラミング言語『Swift』によるプログラミング能力が求められていることが分かった」

 Apple製品の管理と開発のスキルをカリキュラムに組み込むため、ブリーメルト氏はSchool for ITにApple Labを設置した。「当校は、“コンピュータルーム”ではなく意図的に“ラボ”と呼んでいる。その方が魅惑的に聞こえる」

 ソフトウェア開発コースの生徒は、さまざまなApple製品で自分が作ったアプリケーションをテストできる。ITシステムおよび機器コースの生徒にも管理スキルを得る機会が提供される。

 さらに、教育イノベーションのためにオランダのApple製品サプライヤーのAmac Proに支援を求めた。

 「最初から最後まで書籍を使って指導することはできる。だがそれでは退屈してしまう。やりがいのある画期的な教育を提供したい。この中等教育コースの教材はまだない。教材をどのように編成するかはこれからだ」

エネルギーの基になるイノベーション

 ブリーメルト氏は、この教育イノベーションには2つの大きなメリットがあると考えている。

 「授業では新たな洞察が提供され、異なる経験が得られる。教師たちが、教育を異なる視点で見始めていることもメリットの一つだ。教師たちは常に復習やトレーニングを提供している。だが日常業務に忙殺され、“やりたいこと”ではなく“いつもやってきたこと”に頼ってしまうこともある。教育イノベーションとは時間を生み出すことだ」

 「価値ある教育を生徒に提供することがモチベーションになる。ITに携わる人々は、もはや会社に埋もれる存在ではない。医療、物流、エネルギー変換など無数の分野で活躍する能力を持っている」

 異業種と協業する場合に備えて、ブリーメルト氏は他の研究分野の生徒を関与させている。「ITが潤滑油となって社会的課題に取り組むことを好んでいる」

 例えば、介護と福祉の研究プログラムとSchool for ITのコラボレーションには医療機関が関与している。「当校は介護とITを結び付け、それがもたらす付加価値を早い段階で生徒に示すことで、介護現場でのITを当たり前の経験として受け入れる新しい世代を育てている」

 ROC MondriaanとAmac Proの共同プロジェクトにはAppleも関心を寄せ、2つの上級クラスで貢献している。

 「この選択コースでは、家庭では手に入らない技術が生徒に紹介される。それらに触れる機会を与え、Apple製品の管理方法やiOSアプリの開発方法を教えて市場のニーズを満たしていく。これはAppleにも利点をもたらす。だが当校の視線は生徒に向いている。専門知識があれば生徒の雇用機会が増える」

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