エストニア政府は、行政サービスの仮想アシスタントの運用を開始した。AI技術や音声認識技術を活用した先進的なプロジェクトはどのように開始し、どこまで進んでいるのか。
エストニア政府は行政サービスの仮想アシスタント「Bürokratt」の運用を2022年に開始した。この仮想アシスタントは行政サービスを利用する国民に対し、パーソナライズ化したサポートサービスを提供する。
BürokrattはAppleの仮想アシスタント「Siri」に似ており、申請書の提出や支払処理などのサポートができる。サービスは全て音声を用いて利用可能だ。他にも、運転免許証の更新や出生届の提出、確定申告などのタスクをリマインドするサービスも提供するという。
エストニア政府はBürokrattを活用することで、数百万ユーロの管理コスト削減の他、行政サービスの利便性向上などを見込んでいる。エストニアはITを行政サービスに取り入れる「電子政府」の構築を他国に先駆けて進めてきた。参考になる先例がほとんどない中、どう取り組んできたのか。
エストニアの経済通信省で最高データ責任者を務めるオット・ベルスバーグ氏は2018年に入省し、政府や教育機関、民間部門へのAI(人工知能)技術の導入を推進する改革案策定に携わった。ベルスバーグ氏は情報学の博士号を持っており、以前は大学の非常勤講師を務めながら民間部門でIoT(モノのインターネット)とデータ分析に注力していた。
2019年、ベルスバーグ氏が率いる開発チームは後にBürokrattの開発へとつながるAI活用戦略を考案し、2020年末にはBürokrattの概念を発想していたという。「私たちが知る限り、Bürokrattと似た取り組みをしている政府の先例はなかった」と同氏は語る。
Bürokrattの開発に着手してから最初の18カ月間は、それが本当に役に立つのか、必要最低限の機能の開発や概念実証(PoC)までたどり着けるのかなどの検証が中心だったという。
開発チームは当初、ベルスバーグ氏を含め経済通信省の既存スタッフで構成していたが、程なくして専門化の集団へと変わった。PoCによってBürokrattに非常に大きな可能性があることが2021年に明確になったため、新チーム結成に着手したという。
13人編成の新しい開発チームは民間部門の人材を採用して結成した。公共部門出身のメンバーはわずか3人だ。政府機関ではデータ分析のスキルを持った人材は豊富ではなく、類似したプロジェクトも存在しなかったため、民間部門で経験を積んだ人材を探したという。開発チームは、アーキテクト、開発者、データサイエンティスト、言語技術(LT)専門家、ビジネスアナリストの混合グループだという。
「政府からの支援を確保するため、開発チームはBürokratt導入によるメリットをすぐに示す必要があった」とベルスバーグ氏は話す。メリットとは、業務の効率性向上や国民に提供するサービスの改善、行政サービスの利用しやすさなどだ。
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