専門家は「中堅・中小企業ほど、早くデジタル化について学ぶべきだ」と話す。その理由は何か。ITを味方に付けることでコロナ禍でも顧客とのつながりを維持した、英国の理容店Wicks Barbershopの取り組みから探る。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の間も、英国の理容店Wicks Barbershopは顧客とのつながりを維持できた。同店は2019年、決済会社Block(旧Square)が提供するモバイル決済サービス「Square」を導入した。以降、Squareとその関連ツールを活用して顧客サービスのデジタル化を進めている。
1000人ほどの顧客を抱えるWicks Barbershopにとって、パンデミックの間に顧客とのつながりを維持することは重要な取り組みだった。「常連客を増やそうと、われわれはいつも努力している」とウィックス氏は話す。同店は、Squareのマーケティング支援ツール「Square Marketing」と顧客満足度向上ツール「Square Loyalty」を利用して、最新情報や利用特典を顧客に配信し、自店のことをいつも気に留めてもらえるよう取り組んでいる。「特に気に入っているのはマーケティング支援ツールのメールキャンペーン機能だ。重要なタイミングで顧客とコミュニケーションを取るのに役立っている」と同氏は説明する。
Square Marketingのメールキャンペーン機能は、登録顧客を属性ごとの「ターゲット顧客」として自動でグループ化できる。顧客登録時のウエルカムメールや、顧客の誕生日を祝う誕生日メールなど、定型的なメールのフォーマットを事前に設定しておけば、メールキャンペーンを自動化できる。メールキャンペーン機能は、顧客がオプトアウト(拒否設定)しない限り、継続してメールを配信する。
これらのツールは全てクラウドサービスだ。そのためユーザー企業は新たに機器を用意する必要がない。「ユーザー企業は、技術的なノウハウがなくても、これらのツールを利用できる」とウィックス氏は話す。以前であれば、ユーザー企業は顧客向けメール配信システムと予約システムを別々に用意し、それらを連動させようとしていた可能性がある。「そうした大変な作業をやりたいとは思わない」(同氏)
決済サービスのSquareは取引ごとに所定の手数料を支払う仕組みだ。Square MarketingとSquare Loyaltyはサブスクリプション形式で利用料金を支払う。
Wicks Barbershopをはじめとする中小企業は、デジタルツールを使う必要性を十分に認識していても、その使い方や使用すべきツールについてはよく分かっていないことがある。世界経済がCOVID-19による混乱への対処方法を学びつつある中で、ビジネスに成長をもたらす手段である「デジタル化」に取り組まなければ、業績回復のチャンスを逃してしまう可能性がある。
「規模の小さい企業は、できるだけ早くデジタル化の方法を学ぶ必要がある」とコンサルティング会社Caribou Digitalの創設者、クリス・ロック氏は話す。同社は、中小企業500万社のデジタル化を支援するプログラムを大手クレジットカードブランド会社Mastercard Internationalと共同で実施している。
ビジネスの運営に役立つ会計ソフトウェアや、新しい顧客の獲得に役立つ新しいマーケットプレースなど、さまざまなITが「自社のビジネスにどう役立つのかを、中小企業は知る必要がある」とロック氏は言う。中小企業は豊富なデジタルツールの中から自社に適したものを選定し、ビジネスにどう活用できるかを理解しなければならないと同氏は主張する。
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