メインフレームがさまざまな強みを持っているからこそ、クラウドサービスは必死になってそれに追い付こうとしている。クラウドサービスの強みとは何か。そして強みは維持できるのか。
クラウドサービスの登場と進化によって、長年にわたり企業でシステムを支えてきたメインフレームは役割を終えた――。そう考える企業もあるだろう。メインフレームは決して「終わった」のではなく、セキュリティをはじめとする、さまざまな強みを持っている。
逆の視点で、メインフレームに対するクラウドサービスの強みもある。主な強みを見てみよう。
クラウドサービスはどの部分でメインフレームの先を行っているのか。まず挙げられるのは、クラウドサービスの“箱”となるデータセンターが地理的に分散している点だ。主要クラウドサービスのデータセンターは世界中にある。そのためクラウドサービスは、地域のニーズをくみ取りやすいことに加え、震災などの災害時に1つのデータセンターに依存せず、サービス提供を継続できるメリットもある。これは、メインフレームには難しいことだ。
ただしメインフレームにも類似した動きがある。IBMは同社の世界各国のデータセンターを利用し、メインフレームをサービス型で提供する取り組みを進めている。そう考えれば、地理的な分散はクラウドサービスの強みではなくなる可能性がある。
他には、クラウドサービスは「DevOps」(運用を組み合わせた開発手法)によるソフトウェア開発に最適だと認識されていることがある。しかしよく考えてみると、DevOpsを長年にわたり支えてきたのはメインフレームだ。「DevOps=クラウドサービス」というわけではない。IBMやBroadcom、BMC Softwareなどメインフレーム向けソフトウェアベンダーが、メインフレームをDevOpsでより使いやすくするための製品開発に注力する動きもある。
つまりメインフレームは、若手開発者にとっても、必ずしも「終わった技術」というわけではない。今後、サービス型で利用できるメインフレームの提供が開始すれば、複雑な構築作業がなくなるだけではなく、開発者は場所を問わずに開発作業を進めることも可能になる。サービス型の利用形態がメインフレーム活用の追い風になるのは間違いないだろう。メインフレームの最も大きな課題は「自己PR」だ。メインフレームはそのメリットを訴求し、使いやすいツールとして開発者に認識してもらう必要がある。
IBMが2022年4月に発表した「IBM z16」をはじめ、メインフレーム新製品の動きも考えれば、「メインフレームが時代遅れだ」という主張は根本的な認識不足から来ていることが分かる。実際のところ、2022年現在もさまざまな企業が大規模なシステムを安定的に運用するために、メインフレームを使用している。IT業界の「大ベテラン」として、メインフレームが今後も力を発揮するのは間違いない。
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